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B級映画って言うなw 再見して語る映画館
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原題:Day Breakersc934d280.jpeg
監督:
ピーター&マイケル・スピエリッグ




アンデッド」で、鮮烈なデビューを果たしたスピエリッグ兄弟のハリウッドデビュー第一作。
古典的なモンスターとSFの融合という基本路線は、今作でも活かされており、新たなヴァンパイア像をSFテイストで描ききっている。
前作はカテゴリーとして「ゾンビ映画」に分類したが、本作は「モンスター」「SF」のどちらにしようか迷い抜いたが、天秤に掛けるとSFにやや比重が傾くので「SF」カテゴリーとした。
2010年11月27日から日本でも待望の全国公開!

物語は・・・
夜明けと共に陽光に燃え上がる少女、日記には「私は変わらない」「決して成長しない」「もう、耐えられない・・・」の文字・・・。
2009年のアウトブレイクで人類のほとんどがヴァンパイアと化した10年後。世界はヴァンパイアのものとなり、昼夜が逆転した日常の中で、一定の秩序を保ちながら社会を形成していた。血液製造部門の主任を務めるエドワード博士(イーサン・ホーク)は、血液不足に陥ったヴァンパイアが外見も知能も獣と化し堕落者と呼ばれる怪物に変貌すること、人類が最早全人口の5%以下しか生存しておらず深刻な血液不足に陥っている事に悩んでいた。博士が開発した”ヘムシピリン”は、一定の効果を発揮したものの、ヴァンパイアの拒絶反応を引き起こし爆死させてしまう。人類を救うには血液代替品かヴァンパイアを人間に戻すしかない。血液の備蓄が残り一ヶ月を切り、民衆は暴徒と化す恐れもあり、エドの焦りは増すばかりだった。
そんな、ある晩、自宅への帰宅途中で人間たちの車と事故を起こしたエドは、彼らを庇い逃亡させる。
そんなエドを尋ねてきた弟のフランキーは人間狩りを生業とし、兄のエドは人血を摂ることを拒否している。対立する兄弟の前に人血を絶たれた堕落者が侵入し、怪物と化した姿で二人を襲う。何とか撃退した兄弟だったが、それが2週間前までは知り合いだった庭師と知り、更に刑事はヴァンパイアがヴァンパイアの血を飲むと堕落者への進行が早まると告げる。苦悩するエドだったが、前に庇った人間オードリーの突然の訪問を受け、彼女は血液代替品ではなく、根本的な解決策があり、それに血液学者であるエドの協力が必要だ、と告げる・・・

いやぁ、さすがというか、アンデッドで魅せた色彩の対比を、今度は夜の世界に置き換え、効果的な映像を構築することに成功しています。古典SFでいえば滅亡型の物語なのですが、そこに苦悩するエド(イーサン・ホーク)の好演を加えることで、格調すら漂う独自の世界観を表現しています。ヴァンパイアの設定も思い切りがよく、飢えなければ何ら人間と変わらない不死の存在でありながら、人間の絶滅が自らの社会をも滅ぼし、獣の世界になる危機感を常に抱いているというジレンマが面白い。
また、夜の社会になっても貨幣制度や株式相場は健在で、富めるものと飢えるものが存在するなど、ヴァンパイアになっても元人間がやることは同じなのだな、と苦笑してしまいます。
深く考えれば、我々人間の社会も、食糧危機で同じような現実に直面する日が来るわけで、そういう社会構造の脆さを「人間とヴァンパイア」に置き換えて現しているのかもしれません。
ホームレスや低所得者が飢えを凌ぐために理性を捨てて犯罪に走る、という図式と何ら変わらないですね。
ヴァンパイアの側にも、人間の側にも、それぞれの言い分があり、またエドのような解決策を求める者もいれば、それを否定しお互いに憎みあう道を選ぶ者もいます。
ストーリーテラーとしても一級品の力を発揮する兄弟ですので、そこは実際に観て楽しんでください。
人もヴァンパイアも望むものは未来・・・考えさせられる映画です。

で、SF映画としての堅苦しい感想はこれぐらいにして、モンスター映画の面としてですが・・・まず、怪物化したヴァンパイアの造形が良い。個性的ではありませんが、正に想像していたヴァンパイアのもう一つの顔である獣の姿です。パワー、スピード、鋭い爪と牙を持ち、蝙蝠の羽を広げた感じは、どこか懐かしくもあり、生々しい肉色の全身が気持ち悪さを増してくれます。首を斬るか、日光に当てれば死にますが、宗教的な意味合いを持つ古典的な他の方法ではダメージはありません。便宜上ヴァンパイアと呼称していますが、ウィルスで変異したヴァンパイアに似た特質を持つ感染者と捉えるのが正しいと思います。また、血の乾きには耐えられないという精神的な脆さがあり、堕落者になるか、知性を維持し続けるかは、紙一重の差といえます。

今作はアクションにも更に工夫が凝らされており、カーチェイスや治安維持部隊の暴徒鎮圧、ラストシーンに至るまで、増えた予算を無駄なく使いきって、観客が退屈しないように見せ場を散りばめてあります。登場人物も皆個性的で、それぞれの立場から無理の無い言動をさせ、役者もそれに応えるように好演しています。
やはり、この兄弟監督はハリウッドの舞台でも充分に才能を発揮できる逸材だったか、と感慨深いものがあります。
私は一足先に観てしてしまいましたが、これは劇場で観る価値充分だと断言します。
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