テキサス・チェーンソー・ビギニング

原題：The Texas Chainsaw Massacre The Beginning
監督：ジョナサン・リーベスマン

ジョナサン・リーベスマン監督の長編２作目は、あの『悪魔のいけにえ：The Texas Chainsaw Massacre』のリメイク。
直近の作品として、マイケル・ベイ制作のリメイク作「テキサス・チェーンソー：The Texas Chainsaw」があり、本来はこの作品の続編として製作された。
だが、13金リメイクでもコアなファンをげんなりさせたマイケル・ベイの監督選びのセンスも、今回初めて成功し、前作と違って本家の味を含んだ濃い作品になっている。

物語は・・・
1939年8月・・・食肉処理場で、アルコール依存症の女が、死にながら産み落とした赤ん坊。
始末に困った主任は、その奇形児を食肉用の包み紙に入れ、ゴミ箱に捨てた。
赤ん坊は、ゴミ漁りのついでに持ち帰られ、ヒューイット家でトーマスと名づけられ成長した。
自身の醜い顔に強烈なコンプレックスを感じたトーマスは、虐殺した動物の皮を貼り付けたり、顔を切り刻む事で怒りを吐き出していた・・・。

1969年7月・・・働いていた食肉処理場が閉鎖。
主幹産業を失った住民は移住したが、ヒューイット家だけは、この土地に残ることにした。
それを主任に馬鹿にされたトーマスは、ハンマーで主任の両足を砕き、命乞いをする頭に振り下ろした・・・。
事務所からチェーンソーを持ち出し、立ち去るトーマス。

一方、兵士のエリック、弟のディーン、彼女のクリッシーとベイリーの4人は、車でドライブ旅行をしていた。
エリックは弟が兵士として一緒にベトナムに行くと思い込んでいたが、ディーンは彼女とメキシコに逃げるつもりでいた。
思惑は違っていたが、4人は一緒のドライブ旅行を楽しみ、ヘルズ・エンジェルズを気取ったバイカー集団の嫌がらせも話の種の一つだった。

その頃、チャーリーの家に保安官が訪れ、甥のトーマスが主任を殺したので、逮捕を手伝って欲しいと要請をする。
パトカーでトーマスを発見した保安官は、銃を構えて威嚇するが、その背後からチャーリーがショットガンで頭を吹き飛ばす。
最後の保安官が死に、装備一式を奪ったチャーリーは、家族にも自分をホイト保安官と呼ぶように言う。
本物のホイト保安官は、家族の豊かな夕食になっていた・・・。

途中で、カリフォルニア風の雑貨店に寄り、クリッシーはディーンのメキシコ行きに賛同してくれた。
だが、件のバイカー達も店に居たことから、女2人はせっつく様に車を出させる。
車中で、ディーンは徴兵証に火を点け、兵士になってベトナムには行かない、とエリックに告げる。

当然、激しい言い争いになったが、背後からバイカーの女がショットガンを構えて接近してきた。
咄嗟にダッシュボードから銃を取り出したエリックは後ろを向くが、車の正面には牛が・・・。
牛を撥ねたせいで横転した車は大破し、クリッシーは車外に放り出されてしまう。

バイカー女は、すぐにパトカーが来たので3人を銃で黙らせ、保安官を言いくるめようと話しかける。
だが、間髪入れずに保安官のショットガンが火を噴き、女は腹に風穴を空けられて吹き飛んだ。
「助けに来た」というセリフも、警告無しに射殺した保安官では、意味が無い。
エリックは、落ち着け、と保安官に殴られ、ベイリーは泣きじゃくる。
明らかに異常な態度の保安官に、エリックは茂みに隠れたクリッシーに出てくるな、と合図を送る。
保安官はベイリーに刺さった破片を抜き取ると口に含み、徴兵証の燃えカスを見つけ激怒する。
危険なものを感じたエリックは、身代わりに自分がディーンだと名乗る。
パトカーに死体と共に3人を乗せたホイト保安官は、モンティに事故車の回収を無線で頼み走り去る。

残されたクリッシーは、事故車が動かないのが分ると、銃を探し始めるが、そこにモンティが到着してしまう。
後部座席に隠れたものの、銃はモンティに見つかり、事故車ごとレッカーで連れて行かれてしまう・・・。

パトカーで移動中の車内で、ホイトはディーンに軍の事を訊ねる。

ヒューイット家に到着すると、死体をトーマスに運ばせ、兄弟を吊り下げた。
モンティも自宅に到着し、クリッシーは隠れて行動を開始する。
納屋で水洗いされていた兄弟を見つけるが、すぐにモンティが来たので出て行けない。
ディーンは助けを乞うが、モンティは「アイツのやることに手は出さん、断る」と言われる。
キッチンには、テーブルの脚に拘束され、トーマスに怯えるベイリーが居た。

何とか脱出法を考えよう、と弟を励ました途端、ホイトが現れエリックの顔にビニールラップを巻き付ける。
戦士に鍛えてやる、と薄笑いを浮かべるホイトに、遂にディーンが白状する。
ホイトは、それを聞くとハサミをエリックの口に刺し穴を空ける。
「お前を殺してやる・・・」
エリックの呪詛の言葉も、全くホイトには通用しない。
ディーンを相手に、自分の戦争時代を語るホイト。
捕虜になった兵士は、飢え死にするか、生きるしかない、だから週に一度は気の毒な奴が選ばれた・・・喰われることは、祖国への究極のご奉公だ！

とんだ鬼畜軍曹ハーツマンだが、腕立て伏せ20回を命じられたディーンは、途中で加えられる殴打に耐えながら意地を見せる。
キッチンでは、ルダ・メイがベイリーの顔を拭きながら、気色悪い歌を口ずさむ。
約束通り20回は迎えたが、殴打され腰を踏みつけられたディーンは動けない・・・。

一方、走りぬいて道路まで来たクリッシーは、例のバイカーの一台を呼び止める。
最初は無視だったが、仲間の女が保安官に撃たれたと聞いて目つきが変わり、クリッシーに案内を命じる。

一方、滑車を破壊したエリックは、ディーンを助け、キッチンに石を投げ込んで奇襲を掛ける。
ルダ・メイは素早く逃げたが、ベイリーの縄を切り、客の百貫デブ女を利用してドアを塞ぐことに成功。
車のキーもゲットするが、ホイトの叫びを聞いて、地下からトーマスが駆け上がってきた。

レッカー車で逃げたベイリーは、何か瞬間移動してきたトーマスに鉤爪で引き摺り落とされる。
仕事を終えると、悠々と立ち去る姿には貫禄がある。

エリックに逃がしてもらったディーンは、トラバサミの罠に掛かり転倒。

大活躍だったエリックも、皆の逃走が失敗した叫びを聞いて、振り返った所をホイトに銃で殴られる・・・。
こうして脱出は完全に失敗し、エリックはトーマスのオモチャにされるために運ばれて行った・・・。

夜が更けた頃、バイカーを伴ったクリッシーが、ヒューイット家に到着した。
自分の恋人を助けるだけだ、と家に向かうバイカー。
仲間の助けにはならない、と判断したクリッシーは、外から家の様子を窺う途中で、罠に掛かって放置されていたディーンを見つける。

板に拘束したエリックの顔を撫で回し、自分の顔を触るトーマス・・・。

とりあえずバイカーもディーンも役に立たないので、単身ヒューイット家に潜入するクリッシー。
息詰まる探索の中、突然銃声が響いた。バイカーがモンティの脚を撃ち抜いて、女の居場所を聞き出していたのだ。
モンティを囮に、現れたホイト保安官を銃で脅して案内させるバイカー。
トーマスは、エリックの皮剥ぎに夢中だったが、大声で呼ばれたのでチェーンソーを片手に向かう。

丁度、トーマスが出てきた扉の側に居たクリッシーは、地下室で両腕の皮を剥がされたエリックを発見する。
すでに激しい暴行とショック症状が出掛けているエリックは、クリッシーに将来の家庭の夢をうわ言で語る・・・。

その頃、ホイトに案内させた先にはアビーが居た。
この女じゃない、とキレかけたバイカーに、アビーが撃ってと叫ぶ。
瞬間、ドアから現れたトーマスは、バイカーの腕をチェーンソーで叩き折ると、殴り倒した。
チェーンソーの上に倒れたバイカーをホイトが抑え付け、トーマスに回せ！と叫ぶ。
チェーンソーが唸りをあげ、バイカーは真っ二つになり、その切り裂く感触がトーマスに愉悦を与えたのか、興奮して立ちつくしていた・・・。

地下室では、エリックの拘束を外そうとクリッシーが頑張っていたが、女の力ではどうにもならない。
トーマスが戻ってきた気配を感じたエリックは「逃げろ」と告げ、クリッシーは板の寝台の下に潜り込む。
先ほどのチェーンソーの感触が忘れられないのか、トーマスはエンジンを唸らせると闇雲にエリックの胴体を切り裂いていく。
寝台下では、チェーンソーの唸りにかき消されて、クリッシーの悲鳴が出ていた。
エリックを貫いたチェーンソーは、下にも飛び出し、それと血の雨は最愛の男の完全な死を意味していた・・・。
トーマスの次の愉悦は、自分の醜い顔を覆い隠すモノ・・・エリックの顔の皮を切り裂き、髪の毛ごと捲り取っていく・・・。
更に縫い合わされたそれは、人皮のマスク・・・、そうレザーフェイスの誕生であった。

その一部始終を見たクリッシーは、レザーフェイスが立ち去った後で、恋人の破壊され尽くした姿をも見ることになった。
もつれる足で逃げ出そうとしたクリッシーだったが、その背中にアビーの助けを求める叫びを聞き、半泣きで再び屋内へと向きを変える。

足を撃たれたモンティは苦しげな声を上げていたが、ホイトの意味不明な励ましで落ち着きかけていた。
そして、連れて来たレザーフェイスに、ホイトは手術を命じる。
唸りをあげるチェーンソーは、銃創を負った右足を通り越して、左足にも喰い込んでしまった。
レザーフェイスの斬り方にダメだしをしたホイトは、感染症になるからもう一本もきちんと斬るように命じ、モンティ伯父さんの両足は床に転がる事になり、ホイト曰くバランス良く手術は完了。
気狂いがいると、家族でも酷い目に遭うという例でした。

余計に感染症になりそうな手当をレザーフェイスがしている向うで、拘束されて泣き叫ぶアビーを発見したクリッシー。
四つん這いで頑張ったのに、ロープを解いているとアビーが「・・・気づかれてる」とボソリ。
と、いうわけでホイトに見つかったクリッシーは、台所に転がされ、ディーンが運ばれてくる所や基準が分らない気狂いクッキングを朦朧とした意識で見るはめに・・・。

意識がハッキリしたら、ルダ・メイ婆さんはアビーの髪の毛を切ってるし、モンティ伯父さんとディーンはぐったりしてるし、鍋運んできたホイトは恵の祈りを始めるしで、もう勘弁して下さい状態。
悪魔のいけにえを髣髴とさせる姿でイスに拘束されていたクリッシーは、おもむろに家族に向かって血統に関する質問だけど、家族でＦＵ〇Ｋする相手は決まってるの？と爆弾発言。
反抗的な態度をとってみたが、アビーは舌を抜かれて、入ってきたレザーフェイスにハサミで喉笛を斬られてしまった。
ホイトは、レザーフェイスにクリッシーを下に連れて行くように命じる。
錯乱してディーンに助けを求めるが、ルダ・メイ婆さんは「馬鹿だね、この子はもう死んでるよ」と言い、朦朧としているモンティにスープを食べさせる。

荷物のように運搬される途中で、暴れていて手にしたナイフで、レザーフェイスの背中を刺し、ホイトを交わして窓から飛び出すクリッシー。
夜の闇の中へ駆けていくクリッシーを追って、チェーンソー全開のレザーフェイスが追いかけてゆく。

「少年が男になる時が来た・・・」などと、分けの分らないセリフを言っていると、実は生きていたディーンが覚醒して襲い掛かる。
うつ伏せにしたホイト保安官の頭を床に打ち据えながら、自分が20回腕立て伏せで言われたセリフを繰り返すディーン。

チェーンソー振り回しながら猛追撃してくるレザーフェイスを引き離し、閉鎖された食肉処理場に入り込んだクリッシー。
そこには、主任の腐乱死体が転がり、追いつかれたので肉切りナイフを手に、工場の汚物処理プールに潜む。
近づいてくるレザーフェイス、ナイフを握る手に力を込めるクリッシー、そこにディーンの声が響く。
一瞬、気を取られたレザーフェイスの顔にナイフを振り下ろすが、すぐに跳ね飛ばされる。
後ろからディーンが牛刀で攻撃するが、それも物ともせずにレザーフェイスは、チェーンソーを突きこみ、そのまま持ち上げてしまう。
チェーンソーはディーンの体重で根元まで喰いこみ、レザーフェイスは絶命した体を放り捨てると、再び追跡を始める。
金網の向うに車を見つけたクリッシーは、苦労しながら何とか車に乗り込み、エンジンを掛けることに成功する。
ひたすら道を走っていると、遠くにパトカーのランプと取締りを受けている車が見えてきた。
泣き笑いで喜ぶクリッシー・・・。









だが、レザーフェイスの追跡は終っていなかった。
後部座席から現れると、後ろからイスごとチェーンソーで貫き通す。
皮膚が裂け、死亡が、内臓が、血が飛び散りながら、チェーンソーの振動で揺れるクリッシーを乗せたまま、警官と違反者を撥ね殺す車・・・。
最後にクリッシーの顔を指で撫で回し、立ち去っていくレザーフェイス。
・・・家族の元に帰るために・・・

1969年から73年までに、ヒューイット一家は33人を殺害。今尚、彼らが及んだこの恐るべき殺戮は、米国史上最も残虐な犯罪として、世界中でこう呼ばれている・・・
「The Texas Chainsaw Massacre」

to be continued・・・


お見事。
脚本、音楽、俳優、カメラワーク、全て良し。

ただでさえ制約が多いリメイクで、最終的に第一作に繋がるようにバランスを取りつつ、きちんとレザーフェイスの異常性と成長を描くことに成功している。
物語の狂言回しはホイト保安官（チャーリー）だが、要所要所にトーマス→レザーフェイスへのステップを織り込み、ただ死体を増やすのではなく、死に役こそが作品に大きく貢献している。
絵作りにおいても、色調やカメラワークで第一作を髣髴とさせるなど、旧作を尊重しているけれど新しいヒューイット一家像を観せてやる、という意気込みが伝わってくる。

痛そうなゴアがメインで、バッタバッタと殺すような安っぽい（好きだけどね）真似はせずに、終盤のチェーンソーの振動が伝わってくるようなディーンとクリッシーの死に様が最高。
それぞれの死に様の演出や特殊技術も、本当によく出来てると思う。
くたばれＣＧ。
やっぱ造形美と拘りだよ、ゴアは、うん（ＣＧもあったけど）。

マイケル・ベイも、カルト名作ベスト５を制覇しそうな勢いで制作させてるけど、監督にあてる人選は本当に気を配って欲しい。
失敗したら、他の人が作れないからね。

＊マイケル・ベイ制作・・・往年の名作ホラーのリメイク権を買い漁っては、監督選びに失敗するパターン。13金、エルム街の悪夢、悪魔のいけにえ、悪魔の棲む家、ヒッチャー・・・。これで「ハロウィン」のリメイクも持っていかれてたら、本当に死天王が勢ぞろいするとこだった。まぁ、再生怪人並に出来が悪いけど。
一本ぐらい自分で監督してくださいよ、才能あるんだから。