ドゥームズデイ

原題：DOOMSDAY
監督：ニール・マーシャル

ネタバレするよ！

”冬の健康予防、風邪に注意しよう”シリーズ４作目。

真面目で優良なウィルス系映画を、連続で観て疲れたので、同じ系列でもおバカパワー全開のこれ、を。
定食屋に３００万渡して、料理を作ってみろ！と言って出てきた料理みたいな映画です。
定食屋の主人は、「ディセント」「ドッグソルジャー」のニール・マーシャル・・・、何処のバカが出資したんでしょうね。


物語は・・・
どうでもいい能書きの後で、英国とスコットランドの国境。2008年・・・治療法無し、ワクチン無しの死のウイルスが蔓延したスコットランドは戒厳令が敷かれ、高さ9ｍの分厚い鋼鉄の壁で隔離され、完全に外界と遮断された。最後のヘリで、兵士が自分と引き換えに乗せた片目を負傷した少女・・・、彼女が物語りの主人公である。

当然ながら、見捨てられた内部では、飢えと破壊が巻き起こり人心は荒廃した。こんな手段を取ったイギリスは、世界から無視同然の扱いを受け、経済的に破綻寸前であった。
2035年・・・リモートコントロール出来る義眼を操る女、シンクレア。冷徹な意思と卓越した戦闘センスを併せ持つ美貌の特殊部隊員。別れ際に母から託されたメモ、顔も忘れた母の名と帰ることの出来ない自宅の住所。唯一の彼女の理解者、ネルソン長官は、そんな彼女の研ぎ澄まされた刃のような心が折れるのを心配していた。

麻薬摘発の現場から、多数の感染者が発見される。完全に隔離したはずの死のウイルスの再発である。ただでさえ不安定な社会情勢の中、この事実が知られれば暴動は避けられない。極秘に隔離地帯を盗撮していた政府は、３年前から人間が存在する事を知っており、４８時間以内に治療薬を入手するようネルソンに隊長の選別を命令する。
ネルソンはシンクレアにその任を託し、特別編成されたチームは、最新型の特殊装甲車で隔離地帯に突入する計画だ。実質的な政府の黒幕カナリスは、ハッチャー首相を操り、この任務の成功で一気に救世のヒーローを作る気だった。カナリスからＧＰＳビーコンを渡され、治療薬を持ち帰る任務を受けたシンクレア。
戦闘用ボディスーツと最高の武装を用意された部隊は、スターリングとタルボットの両博士を同行させ、27年ぶりに開かれたゲートから、無法の荒野へ突入作戦を開始した。

部隊は、ケイン博士という伝説の研究者が残した通信記録から、病院を砦にして立て篭もっていたことを知る。まず、病院へ到着した部隊は、バイオアーマーで完全武装し、院内の探索を始める。中の惨状は凄まじく、博士の研究データを見つけるのは難しかった。
その時、車外カメラが女の姿を捕らえ、チャンドラーは命令を無視して救助のために装甲車から出る。
院内では、モヒカン頭の男たちが奇声を上げながら斧や槍で攻撃してくる。女を治療ポッドに収容した装甲車２台は、突入部隊の救出のために移動を開始するが、火炎瓶による攻撃で装甲車は炎上してしまう。しかも、１号車は、擬態で潜入していた女にチャンドラーが殺され大破してしまう。シンクレアの大胆な指示で２号車に戻ったチームだったが、運転手が弓矢で死亡し、装甲車は横転し動けなくなってしまう。
大挙して襲い掛かってくるモヒカン軍団、隊員は次々に傷つき、原始的な武器で殺されていく。シンクレアとタルボットは捕獲され、数名が逃げのびた。

モヒカン＆パンクな集団に拉致されたシンクレアは、モヒカンの拷問に合う。「壁の外から来た」とだけシンクレアが答えると、モヒカンは「やっぱりケインは嘘を吐いていやがった」と叫ぶ。ケインは生きており、壁の外には何も無いと次世代に伝えていたのだった。ＧＰＳビーコンは破壊され、義眼のコントロール装置付腕時計は奪われた。『ソル』と呼ばれたモヒカンは、この集団のリーダーだったのだ。
人肉食が当然の行為となっている集団では、パンク・コンサートのようなノリで隊員をバーベキューにし、解体された肉に齧り付く。
食事で人肉を出されたシンクレアは、看守の油断を突いて脱走し、見張りも殺して腕時計を取り返した。逃げようとしていると、別の監獄から女が声を掛け、連れて行ってくれたら父親のケインに会わせるから、と叫ぶ。
そこにソルの女が現れ、シンクレアを襲うが、逆に手首と首を斬り落として返り討ちにする。女を殺されたソルの怒りは凄まじく、全員に女を探せと激昂する。

脱出したシンクレアは隊員と通信を取り、連れて来た女の仲間ジョシュアと合流する。
モヒカン軍団の追撃を振り切ったシンクレア達は、蒸気機関車で移動し、元軍事施設をトンネル変わりに山の向う側を目指す。
森の中に出た一行は、ケインの死刑執行人という騎士部隊に襲われる。シンクレアと副官のノートンは、中世の騎士と対峙するが、わざと武器を捨てケインの元に連行されることにする。
連れて行かれたのは中世の城砦跡だった。そこの人間は皆が中世時代の装束に身を包み、ケインの厳格な掟の元で暮らしていた。
ケインは、いずれ政府の監視で発見され、誰かが来ることを予測し、辺鄙な場所に町を築いていたのだ。あの隔離の後で免疫を持つ者だけが生き残り、ケインは自分達を見捨てた外界を拒否し、壁のお陰で穢れを知らない世界を作り栄えることを目的にしていた。治療薬は無く、自然淘汰で生き残った者だけの新世界だ、というケインに、シンクレアは再発のことを告げる。だが、すでにケインは研究を捨てており、外の世界など死んで終るがいい、と言う。

その言葉通り、壁の外では死のウイルスが蔓延し、一部の権力者や資産家だけがシェルターに避難していた。だが、発病した一人が、警備の手首と首を斬り、掌紋認証と網膜スキャンをパスし、地下へ侵入。警備を殺して、緊急ハッチへ逃れた首相らを狙うが、ネルソンが射殺。感染者は死んだが、飛び散った血は、ハッチの隙間から首相に掛かり、感染を恐れて執務室に閉じ込められる。首相は、発病を恐れ拳銃自殺する。
暴動は国内全域に広がり、街は混乱と破壊に蹂躙されていた。

ケインはシンクレアと話し、医者の使命感と失った物の大きさを語り、お前が何を失ったというのだ、と吐き捨てる。
処刑が決まったシンクレアは、闘技場で死刑執行人と素手で一騎打ちをさせられる。身のこなしと格闘術で戦うシンクレアだったが、武器を持ち鎧に身を包んだ大男に苦戦する。その頃、ノートンは見張りを倒し、カリーとスターリング博士を連れて脱走していた。
闘技場では、シンクレアが壁を登り兵士を引きずり落とすと、奪った武器で執行人を倒していた。
「わたしが失ったもの・・・それは、人の心よ」と言い捨て、執行人の頭をピッケルで刺し殺す。「捕虜どもを処刑しろ、今すぐだ！」と叫ぶケイン。ノートン副長は、城砦を爆破し、混乱の中で戦いを続けていた。シンクレアを矢から救い、カリーとスターリングらと馬で元軍事基地へと逃げ込む。
元軍事基地はノートンのパンチで電源が回復し、目録のコンテナから車と携帯電話を発見。ゲートを開いて脱出するが、ノートン副長が犠牲になってしまう。

壁を目指して進む車、シンクレアは電話でネルソンに任務の完了を告げ、首相の死とカナリスが指揮を執っていることを聞く。カナリスに、手柄が欲しければ、信号を辿って、と言うシンクレア。

安心したのも束の間、モヒカン軍団が車とバイクで追撃してきた。どうにか第一波は撃破したものの、前にはソル（と、助手席の生首）率いるモヒカン機動部隊が待ち構える。
そろそろ何の映画を観ていたのか分らなくなってきたが、野蛮人の割に運転は確かな連中と、壮絶なカーチェイス。ソル自らもシンクレアの車に飛び移り、車内のバトルとカーチェイスは最高潮に！
とにかく、しつこいソル様は、殴られても、蹴られても、噛まれても、振り落とされても、車から離れない。
その前方にモヒカン軍団がバスでバリケードを築き、開いた下部から歯車手裏剣を飛ばしてくるわ、後ろからは火を噴くわの大騒ぎ。屋根の上のソル様も大騒ぎ。慌てず騒がないシンクレアは、真っ直ぐにバスを突き抜けて、ついでにやっとソル様も生首になって死亡。

ヘリでご到着のカナリスは、治療薬は何処だ？と尋ねる。隔離地域の生存者カリーの血からワクチンが作れるとスターリング博士に聞いて納得。ウィルスで貧民窟が全滅してから市民に救いの手を伸べる、と言うカナリスを信用できない、と吼えるスターリングだったが、シンクレアは任務が全て、と引き渡すように促す。シンクレアの意思が変わらないと悟ったスターリングはカリーを連れてヘリに乗る。ねぇ、タバコもってない？と聞くシンクレアに、帰ったら好きなだけ吸わせてやる、とカナリス。だが、シンクレアはヘリに背を向けると車へと歩いていく。「こんのか？残念だ、君のような部下が欲しかったのにな」と言うとカナリスもヘリに乗り飛び去っていく・・・。

シンクレアは、隔離地域の自宅へ２７年ぶりに帰っていた。写真には、幼い自分とママの姿が・・・。そこへネルソンが訪れると、優しく髪に触れる。メモを差し出すネルソンに「それは、もういらない」と、写真を胸に収める。
カナリスは望みを叶えたのか？と問うネルソンに、叶えた、と答えるシンクレア。
しかし、義眼から記録したデータディスクをネルソンに渡し、この会話で失脚に追い込めるわ、と。

外の車の惨状を見て、「くれぐれも、運転に気をつけろ」と、呆れたように言うネルソン。
シンクレアは、ネルソンからタバコを取ると一服・・・。

外の世界では、カナリスの発言がマスコミによってＴＶで流れていた。

シンクレアは、ソル亡きモヒカン軍団の前に現れると、ソルの生首を投げる。

「みんな、腹減ってる？友達、喰ってみな」と言い放つ。

Yeahhhhhhhhhhhhhhh！と大歓声に包まれ、不敵な笑みを浮かべるシンクレア・・・・・・　　　　　　　　　ＥＮＤ


ウィルス系とは言ったものの、ありがちなドラマや悲壮感は微塵も無く、鉄の女シンクレア様が大暴れする痛快ウィルス活劇とでもいうような、新ジャンルですね。
初見の時は、いきなりモヒカンが襲ってきて、マッドマックスか北斗の拳のような展開に驚きましたが・・・。その後で、今度は中世物語、またマッドマックス、と異様なテンションと展開で一気に観せるパワーは最高です。

最先端の装備がすぐに使い物にならなくなる点や、隔離されたエリアへの侵入、肉弾戦になってしまう展開、権力者に小道具で一泡吹かせたり、力を見せた者が英雄になるラスト、など「ニューヨーク1997」と似たシーンが多く、女版スネークといった風格もあります。（どちらも片目ですし）
Ｂ級作品の中でも、かなり異色な作品を送り出してきた監督の本領発揮といったところですか。
今までの監督作品も別に面白くは無いんですが、最後まで観てしまう味は持ってましたから、もう何本か仕事をすればイギリスのカーペンターになれるかも・・・ね。

どうか、これに懲りてＡ級の予算に惑わされずに、突っ込み甲斐のあるＢ級作品を作って欲しいものです。