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B級映画って言うなw 再見して語る映画館
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原題:CARRIERS7aa04e5d.jpeg
監督:アレックス・パストール

近作につき、ネタバレ注意

冬の健康予防シリーズ、風邪に注意しよう”(今、思いついた)の3作目です。

タイトルの「フェーズ6」は、WHO(世界保健機関)の定めた警戒レベルで、6は世界的大流行(パンデミック)を指す。主にインフルエンザウィルスによる感染拡大に用いられ、去年の豚インフルエンザの南半球での大流行の際に41年ぶりにフェーズ6が宣言された。その41年前は「香港風邪」で推定50万人が死亡、罹患者はその200~300倍程度と言われる・・・。*


物語は・・・
浜辺で砂遊びをし、波と戯れる兄弟と両親のビデオ、何処にでもあるような平和な風景・・・・・・

一転して、サーフボードを積み、RoaD Warriorとペイントした車で、ドライブする4人の男女。兄のブライアンとボビーは活発で、弟のダニーとケイトは大人しい。対照的なカップルは、盗んだ車で酒を飲みながら走っている、という。

前方に道を横切るように止まった車を見つけると、それまで陽気だったブライアンが、真面目な声で窓を閉めろと指示する。普通の中年男は、ガソリンが切れたので、少し分けて欲しい、と近づいてくる。幼い娘は、窓越しにこちらを見ていた。近づくんじゃない、と叫ぶブライアン。ボビーは少しなら分けてあげても、と言うが、女の子が血の着いたマスクをしているのが分ると、ケイトが「感染してる!」と叫ぶ。急いで発進しようとするブライアン、中年男はスパナで窓を叩き追いすがるが、路肩を迂回して逃走する。「・・・死んじゃうわね」とボビーが呟く。

「1.感染者には絶対近づかないこと 2.感染者が24時間以内に触った物は消毒すること 3.感染=死と看做す事」
これが、ブライアン達の定めたルールだった。ルールを破れば死ぬ、守れば生き延びる・・・多分。

無理な運転をしたため、車は故障してしまう。ダニーは、さっきの親子の車にガソリンを、と言い掛けるが、ケイトは絶対にダメ、と。このままでは移動できずに干上がるが、感染者に接触するのは危険、4人は口論を続ける。リーダーのブライアンは、結局ガソリンと水、それと消毒液を手に、さっきの車まで徒歩で戻る事を選択した。全員はマスクを装着し、親娘の車に近づいていく。
「フランク・ハロウェイだ」と名乗った男は、握手を求めるが、「その車がいる」とブライアンは叫び銃を向ける。ハロウェイは、撃てば感染しているかもしれない自分の内臓が、車を汚染するぞ、と言う。更に、先週ハーミントンの学校に設置された緊急対応センターに新薬がある、という無線を聞いた、と。罹病した娘をそこに連れていく予定と聞き、ダニーは後部座席をビニールで密閉し、徹底的に消毒して同乗するという案を出す。

ビニール越しの交流ではあったが、まだ8歳のジョディと遊んであげるケイト。終末論を弁じるラジオに呆れながら、元墓掘りのブライアンは感染しなかった、と言うが、ハロウェイが娘におやすみのキスができるか?と言われると返す言葉が無い。些細な事から車は蛇行し、ビニールが外れ掛けるのを見て、ケイトは外に出てしまう。感染の恐怖と、生き延びるためにやる事の区別が、常に危険と隣り合わせの世界。

夜になって、ダニーは父親との海辺の思い出をジョディにしてやり、自分達はそこの空き家のホテルで待つつもりだ、と。ウィルスが死滅するか、人間が死滅するか・・・その時まで。

混乱した世界では、野盗紛いの殺人集団も出没し、「CHINKS BROUGHT IT(差別用語:中国から(ウイルスを)持ってきた奴)」と記された死体が晒し物になっていた。*私の意訳であり、国内版での翻訳は無い。

車は、汚染地域のハーミントンの町に入り、ボビーとジョディを残して、学校を探索する。やがて、無人と思われた校内の一角で、ビニールカーテンで仕切られた治療室と医師を発見する。治療薬への期待を込めて話し掛けるハロウェイだったが、最後の医師も感染しており、中に残った最後の子供達と運命を共にする。

車中では、急に発作を起こしたジョディを救うため、ビニールを外して吸入器を当てようとしたボビーが、血咳を浴びてしまう。感染の可能性を知られないよう、急いでビニールを戻し、地の付いた衣服を隠すボビー。皆が車に戻ると、ジョディが便意を訴え、ハロウェイは二人で行けば置き去りにされる、と判断し一人でトイレに行かせる。だが、歩く事さえ満足に出来ないジョディを抱きかかえ、「ダニー、君はいい奴だ」と言い残し、トイレに向かう。ダニーは選択を迫られるが、ブライアンに従い、2人を置き去りにして車は出発した。
ハロウェイは娘に歌を願い、歌声と共に歩いて、置き去りの運命を受け入れた・・・。

車の消毒を終え、ジョディの人形を投げ捨て決別するダニー。ボビーは衣服を捨て、ブライアンは沈みがちな皆のために、陽気に振る舞いゴルフでもしようぜ、と誘う。ブライアンも良心の呵責が無いわけじゃない、無理に陽気に振舞いながらも、ボビーの愛に癒されたいと思っていた。だが、一人で感染に怯えるボビーは、ブライアンとの接触を避けるようになった。高級ゴルフハウスで、破滅的にはしゃいで遊ぶ3人、を忘れるために・・・。

ケイトは、また電話を端から試していた。そこにボビーが来て「繋がる電話なんか、無いわ」と冷たく言う。「貴方の両親も、私の両親も、みんな死んだ・・・私たちも死ぬの」と叫ぶボビー。
その夜、ダニー達はガスマスクを着けた集団に囲まれる。一人を捕獲したブライアンだったが、すぐに状況は逆転し皆は囚われの身になる。ガスマスクと防護服で身を固めた集団は、2~3日食料を集めに行っており、見張りに残したラリーがプールで死んでいるのを見て動揺する。一旦は4人を解放することになったが、女に執着した仲間と争いが起こり、リーダーのトムは銃を向けて反対する。だが、中間達はトムの指示に嫌気がさしており、銃口はトムに向けられる。感染を調べるため服を脱がされたボビーとケイト。しかし、ケイトの腹部に感染の兆候を見つけたグループは、慌てて4人を追放する。

ガソリンは奪われたが、再び車で移動する4人。だが、以前のような雰囲気は無く、マスクを着けた3人は、ケイトを避けるようになる。給油に寄ったスタンドで、ケイトはボビーの追放をダニーに勧め、ブライアンを説得するよう頼む。苛立ちを隠せないブライアンは、ダニーの顔色を観ただけで用件を察し、車に戻れと怒鳴りつける。
結局、給油は出来ないまま出発した4人。ブライアンは、町まで2kmという標識を見て車を止めると、黙考した後でケイトに「降りろ」と命じる。ケイトとダニーも沈黙し、一緒に居させてと頼むケイトを、ブライアンは車から引きずり下ろした。必死で懇願するケイトに、淡々と近くに町があるから、と水と食料を分け与え、置き去りにする。ルール・・・その非情な重さに耐えながら、ブライアンは愛する女を切り捨てる。

ビールをくれ・・・温いな・・・まるで、小便の味だ

給油が出来なかった車は、エンストが近づき、対向車を強引に停止させる。車に乗った年配の婦人たちをダニーが説得しようとするが、二人は悪いと言いながらも離れようとする。すると、ブライアンが運転していた婦人を射殺。制止するダニーを振り切って、尚も銃口を向けるが、助手席の女に反撃され、相撃ちになってしまう。相手は死亡、ブライアンは足に銃創を負う。
兄の殺人に激しく動揺するダニーだったが、ケイトは「素直に渡さないからよ」と吐き捨て、ブライアンも「偽善者野郎が、汚い仕事はバカな兄貴にやらせて、いい気なもんだ」と怒鳴りつける。

実は、二人が家を出たときには両親はまだ生きており、罹病した二人が死んだとブライアンに言われていたのだった。

ダニーは家を見つけると、ブライアンの傷のために、薬が無いか調べに行く。丁寧に説明しながら、家内を探索するダニー。中では、死んだ飼い主を犬が食べていて、薬はその部屋の机にあった。薬は得たものの、凶暴化した犬に襲われ、射殺するダニー。ブライアンの傷は思ったより深く、治療のためにズボンを下げたダニーは、そこに感染の兆候を見てしまい、ケイトもそれを知る。その夜、焚き火を囲んで、苦しげな息の中でボビーの話や墓掘り人の頃の話をして、何でこうなった・・・と涙を流すブライアン。ダニーは、そんな兄から静かにキーと銃を盗み、ケイトと共に車に乗り込む。だが、キーはダミーで、本物は起き上がったブライアンが持ったままだった。ダニーに下から銃を渡すケイト。ダニーは、説得し、懇願したが、ついに兄を3発撃つ。
愛する者を眠らせるために、確実に早く逝かせてやるために・・・。

車を走らせ、全てを洗い流してくれる嵐が来るのを待った・・・

2人はビーチに着いたが、ケイトとの会話は無くなっていた。
ビーチもホテルも、何一つ変わっていなかったが、昔の面影は・・・もうない。
次に何が起きるのか、いつ死ぬかも分らない・・・

分っているのは、孤独だという事だけ・・・」   END


人間の世界が終わりを迎える日が来ても、やはり人間は人間としてしか生きられない、という感じの映画。
とにかく生き延びるという事に焦点をあて、数々の別れと苦しみを越えながら、最後に主人公ダニーが得たものは孤独と思い出だけという物語。ウィルスの説明も、これからの未来も描かれないまま、淡々と終るラストが妙に心に残る。
人として越えてはいけないラインなど、生き残るためには必要ないのかもしれないが、そうして生き残っても何も得られないという事を描きたかったのだろうか。

本当は、こういう映画がリアルなのかもしれないが、暗鬱な気分になる映画である。

みんなも、手洗い・うがい・マスク着用・バールのようなもの・拳銃で、ウィルスと感染者から身を守りましょう!

*1968年のパンデミック、香港風邪での日本での死者は推定2000人。1918年、人類最初のパンデミックであるスペイン風邪では、世界中で感染者6億人、推定死者5000万人。日本では、総人口の5500万人に対して実に48万人が死亡した。
*作中で「CHINKS BROUGHT IT」という表現があるが、CHINKとは中国人の蔑称であり、このパンデミックが中国、或いはアジア圏から発したものという暗示がされている。多くの場合、パンデミックやインフルエンザの発生源はアジアであり、今作でも明確な提示は避けながら、この中国系男性のリンチシーンで表している。

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