B級映画って言うなw
再見して語る映画館
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双子監督オキサイド&ダニーの意欲作。
『鬼』は霊的なもの、さしずめ『霊界』+『異世界』と言った感じか。
多分に映像実験的なシーンが試みられている辺り、ハリウッド行きを控えて、腕試しの意味もあったのかも。
物語は・・・
純愛小説3部作で、一躍人気作家になったチョイ・チュン(ディンイン)は、次回作『鬼域』の構想に悩んでいた。出版社の経営戦略も絡み、売れる時期に書かせようとする方針は、更にディンインを精神的に追い込んでいた。映画化に伴って、担当のエイビーが次回作の公表をしてしまったが、『霊』をテーマにした作品、ということだけで、他は何一つ手付かずの状態だった。
そんな時、昔の恋人が現れた頃から、ディンインの精神は揺れ始める。
部屋の中の人の気配、台所の長い髪の毛、受話器から聞こえる奇妙な声、勝手に流れるシャワー、ガラス越しの黒い影・・・・・・。
ディンインの捨てられた構想メモをなぞるように、怪奇現象がディンインの周囲に起こり始める。
再会した不倫相手は8年前に妻が身篭っていたため、ディンインより家庭を選んでいた。今は、離婚をしていたが、そんな彼はディンインにとっては、もう重荷にしかならなかった。
そして、不思議な裂け目が物を吸い込むのを目撃する。帰宅して「EVが7階で止まる―」と記したディンインは、その通りに進み、通路の先に広がる廃墟に足を踏み入れるのだった・・・。
そこは、死人の街・・・無数の霊に追われ、無の境界を目撃したディンインは、逃げ込んだ扉の先で不思議な男に出会う。「君は、ここに来るべきではなかった・・・」と男は言い、ディンインに丸められたメモ屑を示し、「ここは、君が作り出した世界だ、いいかね、君だけでなく他の者もいるのだ」と告げる。創られ捨てられたモノたちが循環する世界、腐食の闇が来る前に出口を探さねばならない・・・。
暗い森で、再び奇怪な人型に襲われたディンインは、巨大な木馬に乗る少女に救われ、広大な粗大ゴミ置き場のような世界へ逃げ込む。
「捨てられたもの、忘れられたものの墓場」
その場所をそう呼ぶ少女は、自らの名前も持たず、ディンインが元の世界に戻るには”中継点”に行けば何とかなるかもしれない、と言う。
巨大な腐食の渦に吸い込まれそうになりながら、2人は”中継点”を知るという人物に会うために暗闇を進む。
「無数の書物が降り積もった部屋」に来た2人は、ディンインが最初に会った男と再会する。この世界から脱出するには、ヒントを頼りに”中継点”を探すしかない。少女が同行することになり、2人はヒントを頼りに霊が彷徨う橋を渡る。
「野の花を摘め」
「あの世の金で道を開け」
「欠けた月、赤い大地、色あせたる天地、根無し草があらば”中継点”は近い」
「”中継点”に至れば、それが別れの時・・・」
死者の群れを抜けるため、息を止めて橋を渡り、井戸へ飛び込む。
井戸の底には子宮のような空間が広がり、無数の胎児が泣き叫ぶ。
少女の声の導くままに、産道のような赤い道を眼を閉じて走りぬける・・・。
「水子の育つ場所」を越えた2人は、小川で短い休息を取る。
枯れた野原で、存在の力を失い掛けたディンインを、少女の手が取り戻してくれる。”中継点”の『陽の気』は、少女の存在に影響を与えるが、「必ずここから逃がしてあげる」と約束する。
2人は一面の花畑へと到着し、「野の花、欠けた月、赤い大地、色あせる天地、根無し草・・・・・・」と繰り返す。
「・・・以前、あなたと会った気がする」
「そんなはずないわ」
ディンインは、少女に「ディンユー」と名前を付け、少女はそのキレイな名前に喜ぶ。
赤い大地、欠けた月、だがその前には、「葬られたまま忘れられた霊」の群れが横たわる・・・。
2人の周りで動き始める霊たちに、ディンインは摘み取った野の花を渡していく。
しかし、余りの多さに花は尽き、亡者と化した霊が2人を囲む。
ディンインは、男に貰った「あの世の金」を撒き、霊たちがそれを拾うために蹲ると、その間をディンユーと抜ける。
赤い大地に入ったディンユーの体は熱を失い、一緒に脱出しようと言うディンインに「陽の世界で、さまよう霊」になるのは、みじめだわ、と答える。
”中継点”が近づくにつれて弱まるディンユーを支えながら、ディンインは赤い大地を抜けていく・・・。
赤い大地を抜けたディンインが見たのは、空に浮かぶ山と色あせた天地・・・風に舞う根無し草を手に入れたディンインだったが、ディンユーには、もう起き上がる力も残っていなかった。
「・・・着いたわ、ここが”中継点”・・・早く脱出して・・・」弱々しい声で教えるディンユー。
だが、その後ろから、ディンインに創って捨てられた亡者の群れが現れる。
「お前も一生ここに留まるのだ」
襲い掛かる群れにディンインが堪らず頭を抱える・・・しかし、それ以上何も起こらない・・・。恐る恐る目を開けたディンインの目前では、亡者達が幾重にもCT映像のようにカットされ、完全に停止していた。
理解できずにディンユーに問い掛けるディンイン。
「これが彼女の書いた結末よ」
尚も問い掛けるディンインに、か細い声が「ママ」と呟いた。
8年前、ディンインも不倫男の子供を身篭っていたのだ。
堕胎した水子だったディンユーは、赤い子宮で育ち、男の「誰でも忘れたいことがある」という言葉で恨むのを止めたのだ。
涙を流し懺悔の言葉を掛けながら、ディンユーを抱きしめるディンイン・・・。
その時、眩い光の中に男が現れ、ディンインはそれが祖父だということを想い出した。祖父は言う「その子が、お前にここへ来て欲しいと願ったんだ」
一緒に居たい、だけどディンユーを諦めて捨てたのも自分、ディンインが自らの過ちに気づいたとき、光の波は天地を走り、亡者を、森を、赤い部屋を、通ってきた世界を包んでいく・・・祖父とディンユーが並んで見守る中、光に飲み込まれるディンインが最後に見たのは、『サヨナラ』と手を振る祖父と産んであげられなかった我が娘・・・彼らは去る、この世界の住人が棲む世界へ、そして、ディンインは・・・・・・。
自分の部屋で目覚めたディンインは、荒い息の中で先程の余韻を落ち着かせる。ふと、目を向けた視線の先に座る影・・・。影が叩くキーボードの文字は
「・・・そして、光の中へ END」。
影は女の声で電話を掛ける。
「もしもし、エイビー?『鬼域』だけど、大幅に書き直してみたの。前の女流作家の話は私に似すぎてるから止めたの、今度は輪廻をテーマに書いてみたの」 創られ、捨てられた世界・・・その結末は書き直され、主人公もテーマも変更されていた。
輪廻の環は、捨てられたディンインをリサイクルし、2人は無言で立ち尽くす・・・。
そこへ電話が鳴り、赤子の声が聞こえてきた・・・・・・ END
オチが全ての作品。
途中でディンインが辿る道のりは、仏教色が強いものの、亡者がゾンビのようだったり、街の風景が前衛絵画のようだったり、と意欲的なシーンで彩る。
『見鬼』に引き続きヒロインを務めたアンジェリカ・リーだが、美貌にやや陰りが出てきたものの、相変わらず演技力は充分で、不倫を経た女流作家を好演している。
オチとしては、ディンインも創造された存在であり、余りに作家が感情移入しすぎたせいで、現実との”中継点”を超えてしまった。亡者の群れが襲い掛かる寸前で止まるのは、書き直す前の作品の結末がコレであり、あたかも本のページのように輪切りになっている。輪廻をテーマに再構築(書き直し)されたので、祖父と産まなかった娘との会話が続き、ラストの修正でディンインは光の中を通り、原稿には無い現世に現れることとなる。
正直、ホラーとしての怖さは無く、どちらかというと『不思議の国のアリス』的な展開である。そのため、構築された幾つかの通過点も唐突に切り替わり、仏教的な世界観ではあるが、おとぎ話めいた色合いが強い。
現実の因果応報というか、記憶の中から生み出された世界は、悪夢のように存在し、忘れられ捨てられて消えていく。
感想としては、脚本が少し物足りないが、特殊映像技術とアンジェリカ・リーのお陰で、どうにか最後まで観れる作品に仕上がっている。宣伝文句では、様々な賞を得たように謳われているが、誤解を招く表現であり、又それほどの作品ではない。
とはいえ、私も苦手なテーマでは無いので、画面構成の奇抜な美しさと母娘愛を堪能させてもらった。
そういう意味では、逆にこのオチは必要が無い、という結論になってしまうのだけど・・・。
*ハリウッドへ・・・この作品の後で、もう一本仕事を済ませて、双子監督は『ゴーストハウス』(制作:サム・ライミ)で、ハリウッドデビューを飾ることになる。まだ、少し不安定な部分は残るが、平均より上の作品を作っていけると感じるので、そろそろ次回作を発表して欲しい。
『鬼』は霊的なもの、さしずめ『霊界』+『異世界』と言った感じか。
多分に映像実験的なシーンが試みられている辺り、ハリウッド行きを控えて、腕試しの意味もあったのかも。
物語は・・・
純愛小説3部作で、一躍人気作家になったチョイ・チュン(ディンイン)は、次回作『鬼域』の構想に悩んでいた。出版社の経営戦略も絡み、売れる時期に書かせようとする方針は、更にディンインを精神的に追い込んでいた。映画化に伴って、担当のエイビーが次回作の公表をしてしまったが、『霊』をテーマにした作品、ということだけで、他は何一つ手付かずの状態だった。
そんな時、昔の恋人が現れた頃から、ディンインの精神は揺れ始める。
部屋の中の人の気配、台所の長い髪の毛、受話器から聞こえる奇妙な声、勝手に流れるシャワー、ガラス越しの黒い影・・・・・・。
ディンインの捨てられた構想メモをなぞるように、怪奇現象がディンインの周囲に起こり始める。
再会した不倫相手は8年前に妻が身篭っていたため、ディンインより家庭を選んでいた。今は、離婚をしていたが、そんな彼はディンインにとっては、もう重荷にしかならなかった。
そして、不思議な裂け目が物を吸い込むのを目撃する。帰宅して「EVが7階で止まる―」と記したディンインは、その通りに進み、通路の先に広がる廃墟に足を踏み入れるのだった・・・。
そこは、死人の街・・・無数の霊に追われ、無の境界を目撃したディンインは、逃げ込んだ扉の先で不思議な男に出会う。「君は、ここに来るべきではなかった・・・」と男は言い、ディンインに丸められたメモ屑を示し、「ここは、君が作り出した世界だ、いいかね、君だけでなく他の者もいるのだ」と告げる。創られ捨てられたモノたちが循環する世界、腐食の闇が来る前に出口を探さねばならない・・・。
暗い森で、再び奇怪な人型に襲われたディンインは、巨大な木馬に乗る少女に救われ、広大な粗大ゴミ置き場のような世界へ逃げ込む。
「捨てられたもの、忘れられたものの墓場」
その場所をそう呼ぶ少女は、自らの名前も持たず、ディンインが元の世界に戻るには”中継点”に行けば何とかなるかもしれない、と言う。
巨大な腐食の渦に吸い込まれそうになりながら、2人は”中継点”を知るという人物に会うために暗闇を進む。
「無数の書物が降り積もった部屋」に来た2人は、ディンインが最初に会った男と再会する。この世界から脱出するには、ヒントを頼りに”中継点”を探すしかない。少女が同行することになり、2人はヒントを頼りに霊が彷徨う橋を渡る。
「野の花を摘め」
「あの世の金で道を開け」
「欠けた月、赤い大地、色あせたる天地、根無し草があらば”中継点”は近い」
「”中継点”に至れば、それが別れの時・・・」
死者の群れを抜けるため、息を止めて橋を渡り、井戸へ飛び込む。
井戸の底には子宮のような空間が広がり、無数の胎児が泣き叫ぶ。
少女の声の導くままに、産道のような赤い道を眼を閉じて走りぬける・・・。
「水子の育つ場所」を越えた2人は、小川で短い休息を取る。
枯れた野原で、存在の力を失い掛けたディンインを、少女の手が取り戻してくれる。”中継点”の『陽の気』は、少女の存在に影響を与えるが、「必ずここから逃がしてあげる」と約束する。
2人は一面の花畑へと到着し、「野の花、欠けた月、赤い大地、色あせる天地、根無し草・・・・・・」と繰り返す。
「・・・以前、あなたと会った気がする」
「そんなはずないわ」
ディンインは、少女に「ディンユー」と名前を付け、少女はそのキレイな名前に喜ぶ。
赤い大地、欠けた月、だがその前には、「葬られたまま忘れられた霊」の群れが横たわる・・・。
2人の周りで動き始める霊たちに、ディンインは摘み取った野の花を渡していく。
しかし、余りの多さに花は尽き、亡者と化した霊が2人を囲む。
ディンインは、男に貰った「あの世の金」を撒き、霊たちがそれを拾うために蹲ると、その間をディンユーと抜ける。
赤い大地に入ったディンユーの体は熱を失い、一緒に脱出しようと言うディンインに「陽の世界で、さまよう霊」になるのは、みじめだわ、と答える。
”中継点”が近づくにつれて弱まるディンユーを支えながら、ディンインは赤い大地を抜けていく・・・。
赤い大地を抜けたディンインが見たのは、空に浮かぶ山と色あせた天地・・・風に舞う根無し草を手に入れたディンインだったが、ディンユーには、もう起き上がる力も残っていなかった。
「・・・着いたわ、ここが”中継点”・・・早く脱出して・・・」弱々しい声で教えるディンユー。
だが、その後ろから、ディンインに創って捨てられた亡者の群れが現れる。
「お前も一生ここに留まるのだ」
襲い掛かる群れにディンインが堪らず頭を抱える・・・しかし、それ以上何も起こらない・・・。恐る恐る目を開けたディンインの目前では、亡者達が幾重にもCT映像のようにカットされ、完全に停止していた。
理解できずにディンユーに問い掛けるディンイン。
「これが彼女の書いた結末よ」
尚も問い掛けるディンインに、か細い声が「ママ」と呟いた。
8年前、ディンインも不倫男の子供を身篭っていたのだ。
堕胎した水子だったディンユーは、赤い子宮で育ち、男の「誰でも忘れたいことがある」という言葉で恨むのを止めたのだ。
涙を流し懺悔の言葉を掛けながら、ディンユーを抱きしめるディンイン・・・。
その時、眩い光の中に男が現れ、ディンインはそれが祖父だということを想い出した。祖父は言う「その子が、お前にここへ来て欲しいと願ったんだ」
一緒に居たい、だけどディンユーを諦めて捨てたのも自分、ディンインが自らの過ちに気づいたとき、光の波は天地を走り、亡者を、森を、赤い部屋を、通ってきた世界を包んでいく・・・祖父とディンユーが並んで見守る中、光に飲み込まれるディンインが最後に見たのは、『サヨナラ』と手を振る祖父と産んであげられなかった我が娘・・・彼らは去る、この世界の住人が棲む世界へ、そして、ディンインは・・・・・・。
自分の部屋で目覚めたディンインは、荒い息の中で先程の余韻を落ち着かせる。ふと、目を向けた視線の先に座る影・・・。影が叩くキーボードの文字は
「・・・そして、光の中へ END」。
影は女の声で電話を掛ける。
「もしもし、エイビー?『鬼域』だけど、大幅に書き直してみたの。前の女流作家の話は私に似すぎてるから止めたの、今度は輪廻をテーマに書いてみたの」 創られ、捨てられた世界・・・その結末は書き直され、主人公もテーマも変更されていた。
輪廻の環は、捨てられたディンインをリサイクルし、2人は無言で立ち尽くす・・・。
そこへ電話が鳴り、赤子の声が聞こえてきた・・・・・・ END
オチが全ての作品。
途中でディンインが辿る道のりは、仏教色が強いものの、亡者がゾンビのようだったり、街の風景が前衛絵画のようだったり、と意欲的なシーンで彩る。
『見鬼』に引き続きヒロインを務めたアンジェリカ・リーだが、美貌にやや陰りが出てきたものの、相変わらず演技力は充分で、不倫を経た女流作家を好演している。
オチとしては、ディンインも創造された存在であり、余りに作家が感情移入しすぎたせいで、現実との”中継点”を超えてしまった。亡者の群れが襲い掛かる寸前で止まるのは、書き直す前の作品の結末がコレであり、あたかも本のページのように輪切りになっている。輪廻をテーマに再構築(書き直し)されたので、祖父と産まなかった娘との会話が続き、ラストの修正でディンインは光の中を通り、原稿には無い現世に現れることとなる。
正直、ホラーとしての怖さは無く、どちらかというと『不思議の国のアリス』的な展開である。そのため、構築された幾つかの通過点も唐突に切り替わり、仏教的な世界観ではあるが、おとぎ話めいた色合いが強い。
現実の因果応報というか、記憶の中から生み出された世界は、悪夢のように存在し、忘れられ捨てられて消えていく。
感想としては、脚本が少し物足りないが、特殊映像技術とアンジェリカ・リーのお陰で、どうにか最後まで観れる作品に仕上がっている。宣伝文句では、様々な賞を得たように謳われているが、誤解を招く表現であり、又それほどの作品ではない。
とはいえ、私も苦手なテーマでは無いので、画面構成の奇抜な美しさと母娘愛を堪能させてもらった。
そういう意味では、逆にこのオチは必要が無い、という結論になってしまうのだけど・・・。
*ハリウッドへ・・・この作品の後で、もう一本仕事を済ませて、双子監督は『ゴーストハウス』(制作:サム・ライミ)で、ハリウッドデビューを飾ることになる。まだ、少し不安定な部分は残るが、平均より上の作品を作っていけると感じるので、そろそろ次回作を発表して欲しい。
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