B級映画って言うなw
再見して語る映画館
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ジョナサン・リーベスマン監督の長編3作目。
初見なので、内容は一切知らない。
タイトルから察するに、『ウェイヴ』や『エス』のような箱庭実験ものなのだろうか?
肩の力を抜いて、さぁセット。
物語は・・・
無機質な白い部屋の映像から、タイトルバック。
マニュアルを手にプロジェクトに向かう女性。
国家安全保障局(NSA)のエミリー・ライリーは、軍事心理学の優秀な研究者で、表情の変化による統計学に精通し、どんな嘘も瞬時に見抜く才能を持っていた。
最重要機密となるプロジェクトのリーダーは、Dr.フィリップス。
「ところで、私の名前はフィリップスじゃない、本当か嘘かね?」
博士の学説を指示しているエミリーは、プログラム参加の是非を問われるが、迷わずこれにサインする。
表向きは存在しないテープを観て、エミリーの判断力をテストすると言う博士・・・。
最初に入室してきたのは、ケリー・イザラノ、女性、1972年生まれ、犯罪歴無し、既婚。
次は、粗野な感じの男。床に固定されたイスを見て、前に誰かが暴れたんだな、と言う。
三人目は、クロフォード・ヘインズ、1965年生まれ、犯罪歴あり、コード1202。
四人目は、ポール・ブロディ、犯罪歴なし、黒人、一人だけ離れた場所に座る。
全員が、アンケート用紙の束を渡され、それぞれに解答欄を埋めていく。
「You're all on a sinking ship. Who do you save first?:貴方は沈みつつある船にいます。誰を救いますか?」
この質問に、クロフォードは「自分」と解答する。
被験者のバイトは慣れているようで、クロフォードは他の参加者の質問にアドバイスをする。
ここで、博士はエミリーに所見を求める。
「主従関係の発生です。男女のペアが同じ部屋で過ごすと、一方が優位に立とうと侮蔑的態度をとる。こういう関係は、すぐに破綻します。」と、優等生に答える。
「・・・この実験は、それより遥かに複雑だ」と、博士。
グループ17と呼ばれた参加者は、携帯で電話する者、雑談する者と様々だ。
クロフォードは、被験者のバイト経験者ということで、他の者に質問され、先輩気分で応える。
ポール・ブロディは、所在無げに室内を歩き回り、ケリーの挨拶にも手振りで応じるだけ。
10:15 phase.1開始
マザー(博士)が入室し、全員がアメリカ人で、全員が正気かと聞き、誰かに強制されてここに来たかを確認する。
全て問題なしと判断した博士は、実験の主旨を「人間の精神の限界を見極め、その本質に徹底的に迫ることにある」と発表する。
治験は4段階phase1~phase4、報酬は250$、拘束時間は8時間、同意書にサインと連絡先を記入させ、私物を没収する。
冗談を交えて説明は円満に運び、phaseが進むごとに一人ずつ減るが、途中リタイアも可能で、その場合も報酬は払う、と博士は言う。
博士は、改めて名前を尋ねると「ケリーよ」と微笑んだ顔に、銃弾を撃ち込んだ・・・。
『扉を閉鎖しました・・・出血は少量、E-1死亡を確認しろ・・・了解、確認します』
突然の異常事態に驚く3人。
クロフォードはケリーに駆け寄り、ポールは床に蹲る。
2人目の男は、これを動画サイトの企画だと叫び、笑いながら退出しようとする。
「芝居じゃない!」とクロフォードにケリーの死体を見せられ、錯乱した2人は壁やドアを壊そうとするがビクともしない。
「コレが、目的だ・・・わざと俺たちの前で彼女を撃って反応を見てるんだ・・・」
『全チーム、スタンバイせよ実験続行だ・・・了解、医療チーム、スタンバイOK・・・KR-13は異常なし』
「隠蔽できるんですか?」と問うエミリーに、博士は「家族が失踪届けを出す、よくあることだ」と平然と言う。
さすがにショックを受けたエミリーに、「MKプログラムだ、政府の管轄で独自のプログラムだ」
「君の上官たちも同じ反応を示したよ・・・国家安全保障局のジマー長官も、君が尊敬するロガンティ副長官もな」
先を見れば答えがわかる、と博士は無表情な顔をしている。
実験室では、当然のようにパニックになっていた。
「極秘実験なんか、この国であるわけが無い・・・新聞で大々的に募集してたんだぞ」、という言葉に、「ここが何処かわかるか?車に乗せられて道なんか覚えてない」
全員が、自分達の居場所を知ってる人間がいない、と気づき、嵌められたと喚く。
そこに、合図のような電子音が響き、ドアの小窓から銃が投げ込まれた。
手にしたのは、ポール・ブロディ。
2番目の男を実験のグルだと呼び、phaseごとに一人死ぬ、最後に助かるのは一人だと銃を向ける。
クロフォードは、銃に弾は何発入ってる?と聞き、調べたポールは一発だけだと応える。
3人に一発の弾丸、殺しあうより助かる方に使うべきか、室内は全て防弾のはずだから、とりあえず様子を見ようと提案する。
すると、ドアにデジタル表記が現れ、
『残り2時間です、質問に答えてください』
と、無機質な音声と共にメッセージが投げ込まれた。
『1~33で、アメリカ人が一番良く選ぶ数字は?
解答から一番離れた数字を選んだ者が次の犠牲者になり、解答を拒めば全員の命が奪われることになる Best luck』
「普通はGood luckだろ」と激昂するが、助けが来るわけもない。
『11:37 グループ17に変化あり、刺激1-Aを実行中』
「この実験の目的を知りたく無いか?」と聞く博士に「不採用になります」と答えるエミリー。
所見を求められ、「わざと固い言葉を使っています。書き手が外国人だと思わせるような文章です」
その解答に「なかなか、いい」と博士は応え、エミリーにMKプログラムは歴代大統領に禁止されたはずなのに、何故実行しているのかと理由を問われる。
「9.11以降、選択の余地は無くなった・・・だから、我々の活動も黙認されているんだ」
「Killing Roomですね」
「20年前、私が上官に言われたことを、そのまま君に伝えよう・・・敵国には、我々と全く同じような人間がいることを決して忘れるな、彼らは我々と全く同じことをやっている」
『今から音声を再生する、刺激1-Bの音声だ・・・スタート』
出口を求めて暴れる男を制して、クロフォードが床に耳をあてる。
全く理解できないムスリルのような言語が聞こえ、これはアルカイダの会話だ、と判断する2人。
そのとき、ポールが壁に彫られた「助けて」の文字を見つける。
『予定より大分早いな、開始から2時間10分後に候補者Dが1-Cを発見した・・・上位5%に入る記録です・・・凄いな、この男の動向に注目せよ』
壁には、それ以外にも文字が彫られている痕跡があるが、ペンキが塗ってあり読めない。
ケリーの血を塗りつけることで、文字の輪郭をハッキリさせ、12月25日等の文字を読み取り、クリスマスの日に処刑するなんてムスリム(アルカイダ)の仕業に間違いない、と決め付ける・・・。
「この実験は、絶えず進化している。全て綿密に計画されていて、他のMKプログラムと同じく、その実践方法は科学的だ。より効果を上げるため、改良に改良を加えた。以前は、この段階に到達するまでに6時間は掛かった。だが、壁の文字のお陰で、展開が劇的に早まったんだ」
「KR-13・・・どうする」
残り059:19、一時間を切った。
ポールは銃を持って立ち尽くし、2人は1~33の数字当てを議論する。
だが、精神的に追い詰められていたポールは、壁やドアを殴り、銃を監視窓に向ける。
何とか発砲前に抑え付け、クロフォードは銃を2番目の男に与える。
そのとき、ドアの小窓が開き、クロフォードは撃てと叫ぶが、距離がありすぎて無理。
開いたままの小窓から様子を見て、手を伸ばして鍵を探すが、これも無理。
『2-2、音声を上げろ』
2人は、机の下に潜り込み、俺たちで生き残ろう、と密談をする。
『今から、刺激1-Dを開始する』
小窓からムスリムの話し声が聞こえ、男は小窓から手を伸ばそうとするが、突然スライドが作動する。
何とか力を合わせて引き抜いたが、男はかなり酷い傷を負ってしまった・・・。
「選抜は、厳密に行う・・・完璧な候補者を見つけ出すのだ」
「ここまですると言うことは、余程の人材をお探しなんですね」
「何か、不満があるのか?」
「ありません・・・」
そう答えたものの、エミリーは一人トイレの中で泣き崩れていた・・・。
『テープ2開始、時刻は13:29、KR-13にグループ17、本日参加する4つのグループの2番目だ・・・グループのステータスは1-D、残った候補者は3名・・・まもなく1-D終了、現在選抜無し、制御室にいるマザーが選抜を行う、有力な候補者がいるとの事だ・・・Eチーム1から6と医療チーム2はスタンバイせよ』
残り30分・・・時間が迫る中、クロフォードは全員が同じ数字を言うことを提案する。
一緒に考えよう、仲間だろ・・・と、2番目の男は、初めて自分の名をトニーと名乗った。
残り3分、トニー、ポール、クロフォードの順で数字の7を言う事に決まる。
ポールは、自分の父親の名前と住所を語り、ここで死んだと教えてやってくれ、と頼む。
トニーは、恋人がビリングスにいる。彼女に伝えて欲しい・・・愛しているって、それとオフクロを頼むって。
クロフォードは、俺には誰もいやしない、と3人で聖母マリアに祈りを捧げる。
「慈悲深き聖母マリアよ、主は貴方と共に・・・アーメン」
ギリギリで、クロフォードがメイって名前の娘がいるんだ、会ったことは無いが・・・と言いかけた所でタイムアップ。
『答えてください』
「7だ」と、トニー。
『認証しました・・・答えてください』
「17だ」とポールが苦しげに言う。
思わず「おいっ」と声を上げ、『認証しました・・・答えてください』の問い掛けに、
「7だっ」と叫ぶクロフォード・・・。
『認証しました・・・次の犠牲者が決まりました』
機械の作動音が響き、天井の空調からガスが送り込まれ、3人は意識を失っていく・・・。
『全員気絶している、医療チーム2に運べ・・・了解、候補者を医療チーム2に引き渡します』
*直近作品のため、ここからネタバレ注意。ラストを知りたくない人は退避願います!
「普通ならば入れない部屋だが、特別に許可しよう」
エミリーが見下ろす中、実験室には候補者が医療チームによって運び込まれていた。
『まもなく実験を再開する、スタンバイせよ・・・Eチームは転送とアップロードを開始しろ・・・』
「君は、この瞬間を迎えるために、努力して上り詰めた、違うか?。多くの批判も受けただろう、冷たいとか、利己的だとか、ある上官が君につけたあだ名は冷血だ・・・だからこそ、君を選んだのだよ」
博士には、科学者としての理念など関係なく、ただ実験を遂行することに徹した冷酷さが滲んでいた。
『実験を再開せよ』
博士は、エミリーに白衣とガスマスクを着せると、実験室に同行させた。
白い牢獄は、そこに居る者に、言い知れぬ恐怖感を与えるように設計されている。
元の場所に並べられた3人は、博士の選抜に寄って、一人が排除される・・・。
再び実験室は電子ロックされ、博士とエミリーは監視室に戻った。
今までのようなテープでは無い、本当の実験がこれから始まる。
その合図を博士は、エミリーに出すように命じる。
「開始」と、ハッキリした声でエミリーは命じる。
『聴覚に刺激を与えるんだ・・・モーツアルトの弦楽四重奏曲第17番です』
音楽で覚醒したのは、ポールとクロフォード。
トニーは、頭部を銃で撃ち抜かれて、再び目覚める事は無かった・・・。
怒りに身を振るわせたクロフォードは、「血を採られた」と騒ぐポールに掴みかかる。
「なんで、7って言わなかったぁ」と、ポールを殴り続ける。
『刺激1-Eを開始』
再び、小窓から銃が放り込まれた。
銃を手にしたクロフォードは、雄叫びを上げてポールの顔に押し付ける。
「撃てよ、あんたもヤツラの仲間なんだろ、早く僕を殺せ」
そのとき、天井からの異音に気づいたクロフォードは、音のする箇所を目で追う。
『候補者が避難路18を発見した、予想通りの反応だ・・・刺激1-Fを開始せよ』
また電子音が響き、放り込まれる紙片・・・。
質問の内容を訊ねるポールに、『世界の国別平均知能指数ランキングでアメリカは何位でしょうか?』と読み上げるクロフォードだったが、下部の「Hint:~」の部分は千切り取ってポケットに隠した。
そして、正解から最も離れた数字を言った者が次の犠牲者に、無回答や話し合ったりして同じ答えを言った場合は2人共殺される、Best luck。
それを見た博士は、「人は生き残るためだったら何でもする、そうだろ?」と言い残し部屋を出て行く。
ポールは、数字を変えたことを詫びるが、クロフォードは「誰だって命は惜しいさ、当然だ」と寛容な態度をとる。
その裏には、さっきのHint:の部分『Answer is outside the top 10:トップ10には入っていない』を隠した引け目があった。
『全チームに告げる、刺激1-Gを開始・・・』
また、天井からムスリムの声が聞こえてきた。
それが会話ではなく祈りの声だと気づいたクロフォードは、天井が薄く通気孔があるとポールに伝える。
だが、生き延びるために大人しく従おう、と弱気なポールにクロフォードは言う。
「奴らは実験のために何年も前から同じ事を繰り返してきた、ここの連中は人間を殺す事なんか何とも思っちゃいないんだ・・・こんなことは許しちゃダメだ、俺たちが全てを世間に知らせるんだ、悪魔みたいな連中がここに居るってことを!」
しかし、ポールの弱気は変えられない・・・。
『・・・マザーが最終候補者を選抜した・・・』
エミリーは表情を曇らせると、何かを決心したように、実験室のカードキーを取り、制御室の窓からクロフォードを見つめる・・・。
そこに、博士が戻り、君は非常に良く似ている、とエミリーに言う。
「私が始めてMKアポトーシスに参加したときと同じだ、私も当初は候補者を助けたいと思った・・・候補者を処刑するときも手際良くやれ、苦しみを与えるな、人の命を奪うのは決して容易では無い」
博士には、エミリーの心の動きなど、全てお見通しだったのだ・・・。
「では、所見を述べたまえ」
「最終候補者を決めたのは、ずっと前ですね・・・質問表の段階で決めていた筈です」
「ある程度は決めていた、今回の候補者は期待を裏切らなかった」と満足げな博士。
実験室では、まだ泣き言を吐きながら、奴らに従うと言い張るポールを、クロフォードが叱咤していた。
『対象が動きました・・・』
諦めないクロフォードは、一人でジャンプを繰り返し、天井の照明灯を壊すことに成功した。
だが、その拍子に転げ落ちた時、銃が転がったことに気が付いていない。
銃を拾ったポールだったが、クロフォードが天井に取り付いたのを見て、銃を仕舞い下から押し上げて逃がそうとする。
そこにドアを開けて白尽くめの人間が入ってきた。
ポールは、それに気づきながらも、必死でクロフォードを押し上げ続ける。
『まだ接触するな、しばらくその場で観察を続けろ』
そして、ついにクロフォードは天井裏に入ることに成功した。
『候補者Cが避難路18へ・・・了解、E-1』
それを見届けたポールは、雄叫びを上げて白尽くめの男たちを止めに走る。
だが、冷静に突進を受け止めた男たちは、スタンガンをポールに押し付ける。
『Aチーム、聞こえるか、出力を245.8まで上げろ』
限界まで出力を上げろ、と冷酷に命令する博士の命令を実行する男たちに、ポールは必死でクロフォードを逃がそうと限界を超えて耐え続ける・・・。
動きを読まれているクロフォードの行く先にも、他のチームが確保に向かう・・・。
2人の男の姿を見ながら、手に持ったカードキーを見つめるエミリー・・・。
『KR-13は、そのままにしろ』
クロフォードは、屋上の金網を掴んで叫びを上げる・・・。
晴天の屋上では、同じような通気孔が無数にあり、他の金網からも絶叫が響き、それを白衣の男たちが見下ろしていた・・・。
やがて、ガスを浴びせられたクロフォードは昏倒し、ポールも限界を超えて崩れ落ちていた。
『制御室、候補者は意識不明・・・了解、今から医療チームが向かう・・・全員、実験再開の準備をせよ、よくやった次へ向かうぞ』
再び、実験室へと戻されるクロフォード、それを見つめるポール・・・。
我慢が出来なくなったエミリーは、実験室のロックを外すと、2人を逃がそうと実験室に飛び込んでいく。
逃走する3人、追っ手が掛かる研究所内・・・、だが、それはエミリーが見た妄想だった。
「鍵を返せ」と博士に言われ我に返るエミリー・・・。
「まぁ、ショックを受けるのは無理ないが、科学者として君は失格だ」と吐き捨てる博士。
その背中に向かって、「待ってください、民間人が持つ潜在能力を見極めればいいんですよね」と言う。
確固たる決意を持たない君には下りてもらう、という博士。
だが、エミリーは言う「アポトーシス・・・それが目的なら、より効果的な提案があります」
脱出は失敗した。
制限時間は、残り30分。
クロフォードは、ポールに「5位だ、アメリカは間違いなくトップ5に入っている」と伝える。
生き残るチャンスは一度きり、30分後に扉が開いたら、生き残った方が全速で走れ、と。
建物の構造を教え、トニーの血を体に塗り掴まりにくくして、一発だけの銃で医者を撃ち逃げる。
血を塗るなんて無理だ、と嫌がるポール。
最後の決断の刻が迫る中、クロフォードは自分が生き延びるために、全ての手を打ち、主に祈りを捧げる・・・。
『・・・マザーが候補者を確定した、全チーム脱落者の処刑の準備をせよ、E6、7はKR-13前で待機』
「アポトーシスについて、何を知っている?」
「多細胞生物の体では、不要な細胞は自ら死を選びます」
「そうだ、全体の利益のために己を犠牲にするのだ」
・・・残り30秒。
「俺たちの、どっちかが・・・、ここの奴らのイカレた実験を止めろ」
『質問に答えてください』
「答えろ、早く・・・」とポールを見るクロフォード。
緊張の瞬間、ポールは銃を取り出した。
「僕には絶対に無理だ、アンタがやれ!」
銃を口に咥えるポール、思わず制止するクロフォードの声。
・・・銃声が響き、血飛沫が舞う。
『処刑、完了』
「銃を下ろせ」と慌てた博士の声が聞こえ、目を開けたポールが見たものは、血の海に横たわるクロフォードの姿・・・。
・・・引き金は弾けなかったのだ。
処刑されたのは、クロフォード・・・、選抜されたのはポールだった。
最後に生き残って使命を果たすことを放棄したはずのポールは、クロフォードが自分を嵌めようとしていたことも知らず、泣き喚きながら連れて行かれる・・・。
『19:00 選抜完了、候補者をKR-27へ移動・・・おめでとう、グループ17は成功、我々の求める候補者が見つかった・・・』
「最後まで残れる者は一握りしかいない・・・このプログラムで、我々は証明した、アメリカの民間人の20人に1人は人間兵器になる素質を持ってる・・・凄いだろ」
「つまり、国のためなら死ぬ事ができる人物」
「国のためなら、迷わず身を捧げる人物だ」
「テロリストを養成してるんですか?」
「星条旗を翳した軍隊だけでは、今や国は守れないんだよ」
「それにも限度があります・・・」
「状況に適用せねば、敵に対抗するためだ、限度など無い」
KR-27へと連れて行かれるポールに、博士が祝福を贈る。
「素晴らしかったぞ、君ならこの国を救える・・・その身を捧げろ」
博士を振り解いて走り出すポール。
施設内を逃走するが、徐々に追い込まれていく。
途中で、エミリーを見つけたポールは、走り寄り助けを求める。
だが、エミリーの選択はドアをロックすること・・・。
「君は、合格だ」と、博士。
「何人いるんですか?」
「人間兵器か?機密事項なんだ」
「最後の所見を述べたまえ」
「phase.1は、選抜でした。選ばれたのは、大人しく従順な人間・・・でも、どんな方法で彼らを人間兵器にするんですか?」
逃げたつもりが、KR(Killing Room)-27に誘導されていたポール。
そこには、2人の先客がいた。
『おめでとうございます、phase.2へようこそ』
あの悪夢の出来事は、単にphase.1に過ぎなかった・・・、これから強化という名のプログラムが始まる・・・・・・
to be continued ?
後味悪いな、おいw
監禁実験モノには違いないけど、どちらかというと『saw』のような感覚。
サスペンスや精神状態の劇的な変化を期待していたので、どうも肩透かし感が残る。
伏線は随所にあるのだが、終ってみれば見たまんまという脚本も物足りない。
途中でエミリーが号泣するシーンで、候補者との関係やこの腐れ実験を粉砕するような何かを持ったキャラなのでは?とドキドキしていたら、ただの根性無しのマッドサイエンティストの卵でしかなかった。
確かに冒頭の意外性や次は誰が処刑されるのか、という面白さはあるのだが、どこまでも狂った実験の産物でしかないので、特に意外性も無く徐々に白けてくる。
陰謀説に入り込める性質かどうかで、面白さの感じ方は、まるで違うと思う。
アメリカ人の対テロ行為に対する反感は、日本人が思っている以上に根深く、だからこそビン・ラディン殺害の報で祭りにもなる。
日本人は、あれを見て眉をひそめたり、引いた人も多いのではないか(私は、引いた)。
本作も、対テロ用に民間人を選抜し、C4(爆薬)スーツ等を装着させ、テロに対抗する戦力に使う、という日本人から見たら馬鹿じゃないのか、と思うようなテーマである。
実際、この有り得ない研究が主で話が進み、終ってみたらphase.1からphase.2の人間兵器への強化が待っていた、というオチに何の驚きも感慨も沸いてこない。
根底の設定が浮いているので、どれだけリアルな描写で固めても、所詮は出来の悪い陰謀論者の妄想みたいな作品になってしまう。
まぁ、これに関しては脚本の2人に問題があるので、監督の責任は少ないとは思う。
映画全体の絵面としては、密閉された無機質な実験室と、それを見下ろす制御室(監視室)がメインなので、かなり安く済んでいる。
特殊技術は、露骨なゴアシーンが無く、血は出るが眉間を撃ち抜かれる程度なので、別に凄くは無い。
俳優も演技力はあるが、それほど凄みは無いので、一般人の役が良く似合っている。
狭い室内でも、それなりにイベントが起こるので(1-A~1-G)、最後まで退屈はしない。
ただ、博士とエミリーの会話で、強引に設定をインテリっぽく付け足しているので、そこは余計と言うか失笑を禁じえない。
好きな監督だが、まだ若いので過度な期待はしないように鑑賞したが、その配慮は無駄じゃなかった。
次は、もう少し良い脚本で映画を作ってください。
*MKプログラム・・・マインド・コントロールの略である。MCでは?と思うなかれ、発祥のドイツ(ナチ時代)にちなんでMIND KONTROLEと呼ぶのが通例。アメリカでは、作品中でも触れられている通り、愛国心を高揚させるためにも使用された。現在は、人の心を科学的に圧迫し、洗脳する行為は非人道的であるという理由から、公的には否定されている。
前に述べたセミナー症候群もこれの一種で、社会性や愛社精神を高めるために研修などで実地されたが、やはり洗脳は洗脳である。行き過ぎた社員研修を行う会社は悪であり、まだ判断力のとぼしい社会に出たての若者を奴隷化するのにも等しい行為である。
新興宗教やカルト教団も頻繁に実地しているので、芯の弱い人は最初から近づくべきでは無い。
理屈では飲み込まれる恐れがあるので、本当に洗脳を免れるには、まず参加しないことが一番なのだから・・・。
初見なので、内容は一切知らない。
タイトルから察するに、『ウェイヴ』や『エス』のような箱庭実験ものなのだろうか?
肩の力を抜いて、さぁセット。
物語は・・・
無機質な白い部屋の映像から、タイトルバック。
マニュアルを手にプロジェクトに向かう女性。
国家安全保障局(NSA)のエミリー・ライリーは、軍事心理学の優秀な研究者で、表情の変化による統計学に精通し、どんな嘘も瞬時に見抜く才能を持っていた。
最重要機密となるプロジェクトのリーダーは、Dr.フィリップス。
「ところで、私の名前はフィリップスじゃない、本当か嘘かね?」
博士の学説を指示しているエミリーは、プログラム参加の是非を問われるが、迷わずこれにサインする。
表向きは存在しないテープを観て、エミリーの判断力をテストすると言う博士・・・。
最初に入室してきたのは、ケリー・イザラノ、女性、1972年生まれ、犯罪歴無し、既婚。
次は、粗野な感じの男。床に固定されたイスを見て、前に誰かが暴れたんだな、と言う。
三人目は、クロフォード・ヘインズ、1965年生まれ、犯罪歴あり、コード1202。
四人目は、ポール・ブロディ、犯罪歴なし、黒人、一人だけ離れた場所に座る。
全員が、アンケート用紙の束を渡され、それぞれに解答欄を埋めていく。
「You're all on a sinking ship. Who do you save first?:貴方は沈みつつある船にいます。誰を救いますか?」
この質問に、クロフォードは「自分」と解答する。
被験者のバイトは慣れているようで、クロフォードは他の参加者の質問にアドバイスをする。
ここで、博士はエミリーに所見を求める。
「主従関係の発生です。男女のペアが同じ部屋で過ごすと、一方が優位に立とうと侮蔑的態度をとる。こういう関係は、すぐに破綻します。」と、優等生に答える。
「・・・この実験は、それより遥かに複雑だ」と、博士。
グループ17と呼ばれた参加者は、携帯で電話する者、雑談する者と様々だ。
クロフォードは、被験者のバイト経験者ということで、他の者に質問され、先輩気分で応える。
ポール・ブロディは、所在無げに室内を歩き回り、ケリーの挨拶にも手振りで応じるだけ。
10:15 phase.1開始
マザー(博士)が入室し、全員がアメリカ人で、全員が正気かと聞き、誰かに強制されてここに来たかを確認する。
全て問題なしと判断した博士は、実験の主旨を「人間の精神の限界を見極め、その本質に徹底的に迫ることにある」と発表する。
治験は4段階phase1~phase4、報酬は250$、拘束時間は8時間、同意書にサインと連絡先を記入させ、私物を没収する。
冗談を交えて説明は円満に運び、phaseが進むごとに一人ずつ減るが、途中リタイアも可能で、その場合も報酬は払う、と博士は言う。
博士は、改めて名前を尋ねると「ケリーよ」と微笑んだ顔に、銃弾を撃ち込んだ・・・。
『扉を閉鎖しました・・・出血は少量、E-1死亡を確認しろ・・・了解、確認します』
突然の異常事態に驚く3人。
クロフォードはケリーに駆け寄り、ポールは床に蹲る。
2人目の男は、これを動画サイトの企画だと叫び、笑いながら退出しようとする。
「芝居じゃない!」とクロフォードにケリーの死体を見せられ、錯乱した2人は壁やドアを壊そうとするがビクともしない。
「コレが、目的だ・・・わざと俺たちの前で彼女を撃って反応を見てるんだ・・・」
『全チーム、スタンバイせよ実験続行だ・・・了解、医療チーム、スタンバイOK・・・KR-13は異常なし』
「隠蔽できるんですか?」と問うエミリーに、博士は「家族が失踪届けを出す、よくあることだ」と平然と言う。
さすがにショックを受けたエミリーに、「MKプログラムだ、政府の管轄で独自のプログラムだ」
「君の上官たちも同じ反応を示したよ・・・国家安全保障局のジマー長官も、君が尊敬するロガンティ副長官もな」
先を見れば答えがわかる、と博士は無表情な顔をしている。
実験室では、当然のようにパニックになっていた。
「極秘実験なんか、この国であるわけが無い・・・新聞で大々的に募集してたんだぞ」、という言葉に、「ここが何処かわかるか?車に乗せられて道なんか覚えてない」
全員が、自分達の居場所を知ってる人間がいない、と気づき、嵌められたと喚く。
そこに、合図のような電子音が響き、ドアの小窓から銃が投げ込まれた。
手にしたのは、ポール・ブロディ。
2番目の男を実験のグルだと呼び、phaseごとに一人死ぬ、最後に助かるのは一人だと銃を向ける。
クロフォードは、銃に弾は何発入ってる?と聞き、調べたポールは一発だけだと応える。
3人に一発の弾丸、殺しあうより助かる方に使うべきか、室内は全て防弾のはずだから、とりあえず様子を見ようと提案する。
すると、ドアにデジタル表記が現れ、
『残り2時間です、質問に答えてください』
と、無機質な音声と共にメッセージが投げ込まれた。
『1~33で、アメリカ人が一番良く選ぶ数字は?
解答から一番離れた数字を選んだ者が次の犠牲者になり、解答を拒めば全員の命が奪われることになる Best luck』
「普通はGood luckだろ」と激昂するが、助けが来るわけもない。
『11:37 グループ17に変化あり、刺激1-Aを実行中』
「この実験の目的を知りたく無いか?」と聞く博士に「不採用になります」と答えるエミリー。
所見を求められ、「わざと固い言葉を使っています。書き手が外国人だと思わせるような文章です」
その解答に「なかなか、いい」と博士は応え、エミリーにMKプログラムは歴代大統領に禁止されたはずなのに、何故実行しているのかと理由を問われる。
「9.11以降、選択の余地は無くなった・・・だから、我々の活動も黙認されているんだ」
「Killing Roomですね」
「20年前、私が上官に言われたことを、そのまま君に伝えよう・・・敵国には、我々と全く同じような人間がいることを決して忘れるな、彼らは我々と全く同じことをやっている」
『今から音声を再生する、刺激1-Bの音声だ・・・スタート』
出口を求めて暴れる男を制して、クロフォードが床に耳をあてる。
全く理解できないムスリルのような言語が聞こえ、これはアルカイダの会話だ、と判断する2人。
そのとき、ポールが壁に彫られた「助けて」の文字を見つける。
『予定より大分早いな、開始から2時間10分後に候補者Dが1-Cを発見した・・・上位5%に入る記録です・・・凄いな、この男の動向に注目せよ』
壁には、それ以外にも文字が彫られている痕跡があるが、ペンキが塗ってあり読めない。
ケリーの血を塗りつけることで、文字の輪郭をハッキリさせ、12月25日等の文字を読み取り、クリスマスの日に処刑するなんてムスリム(アルカイダ)の仕業に間違いない、と決め付ける・・・。
「この実験は、絶えず進化している。全て綿密に計画されていて、他のMKプログラムと同じく、その実践方法は科学的だ。より効果を上げるため、改良に改良を加えた。以前は、この段階に到達するまでに6時間は掛かった。だが、壁の文字のお陰で、展開が劇的に早まったんだ」
「KR-13・・・どうする」
残り059:19、一時間を切った。
ポールは銃を持って立ち尽くし、2人は1~33の数字当てを議論する。
だが、精神的に追い詰められていたポールは、壁やドアを殴り、銃を監視窓に向ける。
何とか発砲前に抑え付け、クロフォードは銃を2番目の男に与える。
そのとき、ドアの小窓が開き、クロフォードは撃てと叫ぶが、距離がありすぎて無理。
開いたままの小窓から様子を見て、手を伸ばして鍵を探すが、これも無理。
『2-2、音声を上げろ』
2人は、机の下に潜り込み、俺たちで生き残ろう、と密談をする。
『今から、刺激1-Dを開始する』
小窓からムスリムの話し声が聞こえ、男は小窓から手を伸ばそうとするが、突然スライドが作動する。
何とか力を合わせて引き抜いたが、男はかなり酷い傷を負ってしまった・・・。
「選抜は、厳密に行う・・・完璧な候補者を見つけ出すのだ」
「ここまですると言うことは、余程の人材をお探しなんですね」
「何か、不満があるのか?」
「ありません・・・」
そう答えたものの、エミリーは一人トイレの中で泣き崩れていた・・・。
『テープ2開始、時刻は13:29、KR-13にグループ17、本日参加する4つのグループの2番目だ・・・グループのステータスは1-D、残った候補者は3名・・・まもなく1-D終了、現在選抜無し、制御室にいるマザーが選抜を行う、有力な候補者がいるとの事だ・・・Eチーム1から6と医療チーム2はスタンバイせよ』
残り30分・・・時間が迫る中、クロフォードは全員が同じ数字を言うことを提案する。
一緒に考えよう、仲間だろ・・・と、2番目の男は、初めて自分の名をトニーと名乗った。
残り3分、トニー、ポール、クロフォードの順で数字の7を言う事に決まる。
ポールは、自分の父親の名前と住所を語り、ここで死んだと教えてやってくれ、と頼む。
トニーは、恋人がビリングスにいる。彼女に伝えて欲しい・・・愛しているって、それとオフクロを頼むって。
クロフォードは、俺には誰もいやしない、と3人で聖母マリアに祈りを捧げる。
「慈悲深き聖母マリアよ、主は貴方と共に・・・アーメン」
ギリギリで、クロフォードがメイって名前の娘がいるんだ、会ったことは無いが・・・と言いかけた所でタイムアップ。
『答えてください』
「7だ」と、トニー。
『認証しました・・・答えてください』
「17だ」とポールが苦しげに言う。
思わず「おいっ」と声を上げ、『認証しました・・・答えてください』の問い掛けに、
「7だっ」と叫ぶクロフォード・・・。
『認証しました・・・次の犠牲者が決まりました』
機械の作動音が響き、天井の空調からガスが送り込まれ、3人は意識を失っていく・・・。
『全員気絶している、医療チーム2に運べ・・・了解、候補者を医療チーム2に引き渡します』
*直近作品のため、ここからネタバレ注意。ラストを知りたくない人は退避願います!
「普通ならば入れない部屋だが、特別に許可しよう」
エミリーが見下ろす中、実験室には候補者が医療チームによって運び込まれていた。
『まもなく実験を再開する、スタンバイせよ・・・Eチームは転送とアップロードを開始しろ・・・』
「君は、この瞬間を迎えるために、努力して上り詰めた、違うか?。多くの批判も受けただろう、冷たいとか、利己的だとか、ある上官が君につけたあだ名は冷血だ・・・だからこそ、君を選んだのだよ」
博士には、科学者としての理念など関係なく、ただ実験を遂行することに徹した冷酷さが滲んでいた。
『実験を再開せよ』
博士は、エミリーに白衣とガスマスクを着せると、実験室に同行させた。
白い牢獄は、そこに居る者に、言い知れぬ恐怖感を与えるように設計されている。
元の場所に並べられた3人は、博士の選抜に寄って、一人が排除される・・・。
再び実験室は電子ロックされ、博士とエミリーは監視室に戻った。
今までのようなテープでは無い、本当の実験がこれから始まる。
その合図を博士は、エミリーに出すように命じる。
「開始」と、ハッキリした声でエミリーは命じる。
『聴覚に刺激を与えるんだ・・・モーツアルトの弦楽四重奏曲第17番です』
音楽で覚醒したのは、ポールとクロフォード。
トニーは、頭部を銃で撃ち抜かれて、再び目覚める事は無かった・・・。
怒りに身を振るわせたクロフォードは、「血を採られた」と騒ぐポールに掴みかかる。
「なんで、7って言わなかったぁ」と、ポールを殴り続ける。
『刺激1-Eを開始』
再び、小窓から銃が放り込まれた。
銃を手にしたクロフォードは、雄叫びを上げてポールの顔に押し付ける。
「撃てよ、あんたもヤツラの仲間なんだろ、早く僕を殺せ」
そのとき、天井からの異音に気づいたクロフォードは、音のする箇所を目で追う。
『候補者が避難路18を発見した、予想通りの反応だ・・・刺激1-Fを開始せよ』
また電子音が響き、放り込まれる紙片・・・。
質問の内容を訊ねるポールに、『世界の国別平均知能指数ランキングでアメリカは何位でしょうか?』と読み上げるクロフォードだったが、下部の「Hint:~」の部分は千切り取ってポケットに隠した。
そして、正解から最も離れた数字を言った者が次の犠牲者に、無回答や話し合ったりして同じ答えを言った場合は2人共殺される、Best luck。
それを見た博士は、「人は生き残るためだったら何でもする、そうだろ?」と言い残し部屋を出て行く。
ポールは、数字を変えたことを詫びるが、クロフォードは「誰だって命は惜しいさ、当然だ」と寛容な態度をとる。
その裏には、さっきのHint:の部分『Answer is outside the top 10:トップ10には入っていない』を隠した引け目があった。
『全チームに告げる、刺激1-Gを開始・・・』
また、天井からムスリムの声が聞こえてきた。
それが会話ではなく祈りの声だと気づいたクロフォードは、天井が薄く通気孔があるとポールに伝える。
だが、生き延びるために大人しく従おう、と弱気なポールにクロフォードは言う。
「奴らは実験のために何年も前から同じ事を繰り返してきた、ここの連中は人間を殺す事なんか何とも思っちゃいないんだ・・・こんなことは許しちゃダメだ、俺たちが全てを世間に知らせるんだ、悪魔みたいな連中がここに居るってことを!」
しかし、ポールの弱気は変えられない・・・。
『・・・マザーが最終候補者を選抜した・・・』
エミリーは表情を曇らせると、何かを決心したように、実験室のカードキーを取り、制御室の窓からクロフォードを見つめる・・・。
そこに、博士が戻り、君は非常に良く似ている、とエミリーに言う。
「私が始めてMKアポトーシスに参加したときと同じだ、私も当初は候補者を助けたいと思った・・・候補者を処刑するときも手際良くやれ、苦しみを与えるな、人の命を奪うのは決して容易では無い」
博士には、エミリーの心の動きなど、全てお見通しだったのだ・・・。
「では、所見を述べたまえ」
「最終候補者を決めたのは、ずっと前ですね・・・質問表の段階で決めていた筈です」
「ある程度は決めていた、今回の候補者は期待を裏切らなかった」と満足げな博士。
実験室では、まだ泣き言を吐きながら、奴らに従うと言い張るポールを、クロフォードが叱咤していた。
『対象が動きました・・・』
諦めないクロフォードは、一人でジャンプを繰り返し、天井の照明灯を壊すことに成功した。
だが、その拍子に転げ落ちた時、銃が転がったことに気が付いていない。
銃を拾ったポールだったが、クロフォードが天井に取り付いたのを見て、銃を仕舞い下から押し上げて逃がそうとする。
そこにドアを開けて白尽くめの人間が入ってきた。
ポールは、それに気づきながらも、必死でクロフォードを押し上げ続ける。
『まだ接触するな、しばらくその場で観察を続けろ』
そして、ついにクロフォードは天井裏に入ることに成功した。
『候補者Cが避難路18へ・・・了解、E-1』
それを見届けたポールは、雄叫びを上げて白尽くめの男たちを止めに走る。
だが、冷静に突進を受け止めた男たちは、スタンガンをポールに押し付ける。
『Aチーム、聞こえるか、出力を245.8まで上げろ』
限界まで出力を上げろ、と冷酷に命令する博士の命令を実行する男たちに、ポールは必死でクロフォードを逃がそうと限界を超えて耐え続ける・・・。
動きを読まれているクロフォードの行く先にも、他のチームが確保に向かう・・・。
2人の男の姿を見ながら、手に持ったカードキーを見つめるエミリー・・・。
『KR-13は、そのままにしろ』
クロフォードは、屋上の金網を掴んで叫びを上げる・・・。
晴天の屋上では、同じような通気孔が無数にあり、他の金網からも絶叫が響き、それを白衣の男たちが見下ろしていた・・・。
やがて、ガスを浴びせられたクロフォードは昏倒し、ポールも限界を超えて崩れ落ちていた。
『制御室、候補者は意識不明・・・了解、今から医療チームが向かう・・・全員、実験再開の準備をせよ、よくやった次へ向かうぞ』
再び、実験室へと戻されるクロフォード、それを見つめるポール・・・。
我慢が出来なくなったエミリーは、実験室のロックを外すと、2人を逃がそうと実験室に飛び込んでいく。
逃走する3人、追っ手が掛かる研究所内・・・、だが、それはエミリーが見た妄想だった。
「鍵を返せ」と博士に言われ我に返るエミリー・・・。
「まぁ、ショックを受けるのは無理ないが、科学者として君は失格だ」と吐き捨てる博士。
その背中に向かって、「待ってください、民間人が持つ潜在能力を見極めればいいんですよね」と言う。
確固たる決意を持たない君には下りてもらう、という博士。
だが、エミリーは言う「アポトーシス・・・それが目的なら、より効果的な提案があります」
脱出は失敗した。
制限時間は、残り30分。
クロフォードは、ポールに「5位だ、アメリカは間違いなくトップ5に入っている」と伝える。
生き残るチャンスは一度きり、30分後に扉が開いたら、生き残った方が全速で走れ、と。
建物の構造を教え、トニーの血を体に塗り掴まりにくくして、一発だけの銃で医者を撃ち逃げる。
血を塗るなんて無理だ、と嫌がるポール。
最後の決断の刻が迫る中、クロフォードは自分が生き延びるために、全ての手を打ち、主に祈りを捧げる・・・。
『・・・マザーが候補者を確定した、全チーム脱落者の処刑の準備をせよ、E6、7はKR-13前で待機』
「アポトーシスについて、何を知っている?」
「多細胞生物の体では、不要な細胞は自ら死を選びます」
「そうだ、全体の利益のために己を犠牲にするのだ」
・・・残り30秒。
「俺たちの、どっちかが・・・、ここの奴らのイカレた実験を止めろ」
『質問に答えてください』
「答えろ、早く・・・」とポールを見るクロフォード。
緊張の瞬間、ポールは銃を取り出した。
「僕には絶対に無理だ、アンタがやれ!」
銃を口に咥えるポール、思わず制止するクロフォードの声。
・・・銃声が響き、血飛沫が舞う。
『処刑、完了』
「銃を下ろせ」と慌てた博士の声が聞こえ、目を開けたポールが見たものは、血の海に横たわるクロフォードの姿・・・。
・・・引き金は弾けなかったのだ。
処刑されたのは、クロフォード・・・、選抜されたのはポールだった。
最後に生き残って使命を果たすことを放棄したはずのポールは、クロフォードが自分を嵌めようとしていたことも知らず、泣き喚きながら連れて行かれる・・・。
『19:00 選抜完了、候補者をKR-27へ移動・・・おめでとう、グループ17は成功、我々の求める候補者が見つかった・・・』
「最後まで残れる者は一握りしかいない・・・このプログラムで、我々は証明した、アメリカの民間人の20人に1人は人間兵器になる素質を持ってる・・・凄いだろ」
「つまり、国のためなら死ぬ事ができる人物」
「国のためなら、迷わず身を捧げる人物だ」
「テロリストを養成してるんですか?」
「星条旗を翳した軍隊だけでは、今や国は守れないんだよ」
「それにも限度があります・・・」
「状況に適用せねば、敵に対抗するためだ、限度など無い」
KR-27へと連れて行かれるポールに、博士が祝福を贈る。
「素晴らしかったぞ、君ならこの国を救える・・・その身を捧げろ」
博士を振り解いて走り出すポール。
施設内を逃走するが、徐々に追い込まれていく。
途中で、エミリーを見つけたポールは、走り寄り助けを求める。
だが、エミリーの選択はドアをロックすること・・・。
「君は、合格だ」と、博士。
「何人いるんですか?」
「人間兵器か?機密事項なんだ」
「最後の所見を述べたまえ」
「phase.1は、選抜でした。選ばれたのは、大人しく従順な人間・・・でも、どんな方法で彼らを人間兵器にするんですか?」
逃げたつもりが、KR(Killing Room)-27に誘導されていたポール。
そこには、2人の先客がいた。
『おめでとうございます、phase.2へようこそ』
あの悪夢の出来事は、単にphase.1に過ぎなかった・・・、これから強化という名のプログラムが始まる・・・・・・
to be continued ?
後味悪いな、おいw
監禁実験モノには違いないけど、どちらかというと『saw』のような感覚。
サスペンスや精神状態の劇的な変化を期待していたので、どうも肩透かし感が残る。
伏線は随所にあるのだが、終ってみれば見たまんまという脚本も物足りない。
途中でエミリーが号泣するシーンで、候補者との関係やこの腐れ実験を粉砕するような何かを持ったキャラなのでは?とドキドキしていたら、ただの根性無しのマッドサイエンティストの卵でしかなかった。
確かに冒頭の意外性や次は誰が処刑されるのか、という面白さはあるのだが、どこまでも狂った実験の産物でしかないので、特に意外性も無く徐々に白けてくる。
陰謀説に入り込める性質かどうかで、面白さの感じ方は、まるで違うと思う。
アメリカ人の対テロ行為に対する反感は、日本人が思っている以上に根深く、だからこそビン・ラディン殺害の報で祭りにもなる。
日本人は、あれを見て眉をひそめたり、引いた人も多いのではないか(私は、引いた)。
本作も、対テロ用に民間人を選抜し、C4(爆薬)スーツ等を装着させ、テロに対抗する戦力に使う、という日本人から見たら馬鹿じゃないのか、と思うようなテーマである。
実際、この有り得ない研究が主で話が進み、終ってみたらphase.1からphase.2の人間兵器への強化が待っていた、というオチに何の驚きも感慨も沸いてこない。
根底の設定が浮いているので、どれだけリアルな描写で固めても、所詮は出来の悪い陰謀論者の妄想みたいな作品になってしまう。
まぁ、これに関しては脚本の2人に問題があるので、監督の責任は少ないとは思う。
映画全体の絵面としては、密閉された無機質な実験室と、それを見下ろす制御室(監視室)がメインなので、かなり安く済んでいる。
特殊技術は、露骨なゴアシーンが無く、血は出るが眉間を撃ち抜かれる程度なので、別に凄くは無い。
俳優も演技力はあるが、それほど凄みは無いので、一般人の役が良く似合っている。
狭い室内でも、それなりにイベントが起こるので(1-A~1-G)、最後まで退屈はしない。
ただ、博士とエミリーの会話で、強引に設定をインテリっぽく付け足しているので、そこは余計と言うか失笑を禁じえない。
好きな監督だが、まだ若いので過度な期待はしないように鑑賞したが、その配慮は無駄じゃなかった。
次は、もう少し良い脚本で映画を作ってください。
*MKプログラム・・・マインド・コントロールの略である。MCでは?と思うなかれ、発祥のドイツ(ナチ時代)にちなんでMIND KONTROLEと呼ぶのが通例。アメリカでは、作品中でも触れられている通り、愛国心を高揚させるためにも使用された。現在は、人の心を科学的に圧迫し、洗脳する行為は非人道的であるという理由から、公的には否定されている。
前に述べたセミナー症候群もこれの一種で、社会性や愛社精神を高めるために研修などで実地されたが、やはり洗脳は洗脳である。行き過ぎた社員研修を行う会社は悪であり、まだ判断力のとぼしい社会に出たての若者を奴隷化するのにも等しい行為である。
新興宗教やカルト教団も頻繁に実地しているので、芯の弱い人は最初から近づくべきでは無い。
理屈では飲み込まれる恐れがあるので、本当に洗脳を免れるには、まず参加しないことが一番なのだから・・・。
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