B級映画って言うなw
再見して語る映画館
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ドイツ人監督オリヴァー・ヒルシュビーゲルの監禁実験作品。
某サイトの愛好者なら、『ヒトラー~最後の12日間~』の監督として有名・・・かも、しれない。
実際の実験からインスピレーションを得ている点は『ウェイヴ』と同じだが、あちらがリアル志向なら、こちらは映画としてのフィクションを多分に盛り込んだ作品。
そのせいか、有名な割にコアな映画ファンや評論家の評価は低い。
前に観たのだが、余り印象に残っていないので、再見。
物語は・・・
刑務所内で14日間の拘束実験の被験者求む、報酬4000マルク(25万円)の記事を目にしたタクシードライバーのタレク。
面接会場で実験助手のグリムは、被験者は看守と囚人の二組に分かれ、囚人に選ばれた場合、プライバシーや基本的人権は守られない、と注意事項を述べる。
深く考えずに同意した皆は、精神状態と体力のテストを受ける。
どちらも優良と判断されたタレクは、極限状態にも耐えられると判断され、好感触で面接を終える。
タレクは、その足で2年ぶりに古巣の出版社に向かい、実験をネタにして、報酬1万マルク(62万5千円)で編集長ジグラーと契約する。
更に、メガネ型カメラと受信機を入手したタレクは、実験会場に到着する。
だが、リファレンス・ブース(脳波反応実験室)を見たタレクは、重度の閉所恐怖症のため軽いパニックに襲われるが、何とか誤魔化す・・・。
その夜、赤信号を無視して突っ込んできた車と接触事故を起こす。
事故の相手ドラは、父親の葬儀の帰りで、精神的に深く落ち込んでいた。
話を聞いてくれたタレクと一夜を共にしたドラは、連絡先を記したメモを残し、朝には姿を消していた・・・。
実験の初日、責任者のトーン教授は、この実験が圧力を掛ける役と耐える役があり、基本的人権を放棄される者も出る厳しい実験であることを告げ、最後の承諾を求める。
棄権者は出ず、ベルス、ボッシュ、エッカートン、カンプス、レンツェル、ストック、ブレイザー、アマンディの組が看守に選ばれ、それぞれ制服と装備を身につける。
本物の看守として任務を任された組は、残りの囚人組を洗浄し着替えさせる。
1日目
整列させられ、規則を読み上げるが、まだ遊び気分の被験者たちは緩みがちで、真剣さとは程遠い。
規則:1 囚人は互いに番号で呼び合うこと。
規則:2 刑務官に用がある時は「刑務官さん」と呼び掛けてからにすること。
規則:3 消灯時間以降は、話をしてはならない。
規則:4 出された食事を残してはならない。
規則:5 刑務官の指示には、速やかに従うこと。
規則:6 規則を守らない時は罰を与える。
4つの監獄に収容された12人の囚人も、まだ遊び半分が抜けていない。
その中で、タレク(77番)と同室になった高圧専門の電気技師ジョー(69番)、シュタインホフ(38番)だけは自分を番号で呼び落ち着き払っていた。
金、好奇心、新しい経験、と理由はそれぞれだが、あくまで前科も無い普通の男たちによる実験が始まった・・・。
食事の時間に、82番のシュッテ(飲食店経営)が牛乳を飲めず険悪なムードになるが、それをタレクが一気に飲み干し「俺たちの勝ちだ」とおどけてみせる。
それを「馬鹿な奴だ」と言うシュタインホフ(38番)。
看守組も囚人同様、まだ遊び気分だったが、暗い面が出始めた者もいた。
囚人に馬鹿にされたと感じていたエッカートンは、タレク(77番)を呼びつけ腕立て伏せを強要する。
反抗的な態度をとるタレクに、同室の者も連帯責任にして、腕立てを罰としてやらせる。
看守組は、エッカートンの行動に賛辞を贈る。
2日目
朝食の席で、牛乳を拒否した82番のために、全員で腕立て伏せをしよう、と提案するタレク。
それを監視していたトーン教授は苦笑するが、看守組にはタレクを問題視するムードが高まっていた。
ベッドメイキングは囚人の作業だが、嫌がらせを受けたタレクは、毛布を通路に放り投げて反抗する。
その上、看守二人を監獄に閉じ込め、ご機嫌で馬鹿騒ぎを誘発する。
実験である以上、教授たちには頼れない、と判断した看守組。
調子に乗って馬鹿騒ぎを止めない囚人組に、ベルスは収拾が付かなくなった場合は屈辱を与えろ、と本で読んだ知識を提案する。
看守組は電源を切り、消火器で威嚇してベッドを移動させ、全員に服を脱ぐように命令する。
「ただのゲームだ」と反論するタレクを無視し、ベルスは全裸で鉄格子に拘束する・・・。
わずか36時間で進行した事態に助手のグリムは言葉を失う。
トーン教授は暴動を収束させた事は評価しながらも、この手段が適切とは思わないので、次回は別の方法で解決するように指導する。
3日目
ベッドを戻させ、残りは穏やかに過ごそうと言う看守組。
お互いを番号で呼び合い始める囚人組。
82番は牛乳を飲み嘔吐するが、刑務官たちはそれを嘲笑する。
看守組は、中間報告で、囚人組を管理した方が後々やりやすいと言う。
特にベルスは、彼らの行動を抑制して我々の管理下に戻そうとした、結果が楽しみです、と微笑する。
喫煙時間に、タレクは、ベルスを中傷し腋臭だと馬鹿にする。
激昂するベルスだったが、あくまで暴力は禁止、振るえば即退場となる。
怒りを飲み込んで、洗面台で体を洗うベルス・・・。
その頃、洗顔中にシュタインホフ(38番)がメガネに気づき、同時にタレクの意図を読み取り、「記事を書いて幾ら貰う?」と言う。
奪い返そうとしたタレクの腕を見事に極め、「お次は、囚人対囚人か?わざと騒ぎを起こしてるだろ」と、言い当てる。
シュタインホフはトイレの水を流し、声を聞こえにくくしてから、自分が空軍少佐で実験の全てを報告書に書く、と告げる。
夜になり、就寝規則を破れば、毛布無しで長通路で寝てもらうと罰則を告げる。
看守組は帰宅も可能なので酒を持ち込み、早退したいという者には一緒に77番のことを話し合わなければ意味が無いと引き止める。
エッカートンは、ガスガンだと銃まで持ち込んでいた。
管理する側の8人も、いつのまにか囚人に圧力を掛ける心理に陥り始めていた・・・。
一方、ドナは自宅を売るのを止め、タレクの家に向かっていた。
頭の中では、2人で話した言葉がよぎる。
ドナは自分の父親は世界で一番だと思っていたが、タレクは自分の父親をクソ野郎だったと吐き捨てる。
8歳の時に、カメラマンだった父親に暗室に何時間も閉じ込められ死すら感じた、と言う・・・。
突然、ベッドに横になっていたタレクの口をテープで塞ぐベルス。
看守組は毛布に包むと、一気にタレクを運び去り、イスに厳重に拘束する。
酒を廻し飲みながら、罵倒し、痣が残らないようにイジメを加える。
この空間には監視カメラが無く、看守組は騒ぎばかり起こしたタレクの頭をバリカンで丸坊主にする。
「お前みたいな奴には居て欲しくない!釈放の申請書を出したと上には言っておくから、すぐ出て行け77番!」
「分ったのか77番!」
「分ったなら返事しろ!77番!」
イスごと横倒しにしたタレクに、看守達は次々と小便を掛けて笑う。
ただ、ボッシュだけは、そんな看守組に着いて行けず、監獄に戻したタレクにタバコを差し入れる・・・。
4日目
トーン教授とグリム助手の接見に、頭は自分が頼んだ、と話すタレク。
二人は、看守からタレクが実験を降りたがっている、と聞いている、と尋ねるが、タレクはそれを否定する・・・。
リタイアしなかったことで、看守組はこれから77番が問題を起こせば、連帯責任で全員に罰を与えると通達する。
「とことん馬鹿だな」と言うシュタインホフ。
同じ日、タレクのアパートを訪れたドラは、置手紙を入れようとしてポストから鍵を見つける。
そのまま、部屋に入るドラ・・・。
手紙の投函日になり、囚人は全員で手紙を書くことになる。但し、内容は事前に検閲される。
出す相手のいないシュッテ(82番)は、タレクに住所を教えてもらい、そこに出す事にする。
その頃、監視室では、夜中にタレクを連れ出す看守組の姿が録画されていた。
教授は監視をサボっていたラースに怒鳴り、助手のグリムに「たった4日でこんな行動に出るなんて良くないです」と助言を受けるが、予想の範囲内だと実験の中止はしない。
一応、地下室の鍵の交換だけは、ラースに厳しく命じる。
シュタインホフは、タレクの行動はベルスの期待通りで、皆を危険に晒している、と協力を断る。
日に日に厳罰化していく看守組の圧力に耐えられず、ジョー(69番)はリタイアを申請する。
だが、いつでもリタイアできるはずの実験は、トーン教授とグリム助手に直ぐには認められず、明日発表すると言われてしまう。
監獄に戻されたジョーは、看守達に『弱虫』と貼り紙され、全裸で立たされる。
他にも、恐怖症に襲われ、膝を抱え込んで爪を噛む自衛行為に走る囚人も現れた。
53番は、パニック症状で突然暴れ出し、看守を殴ったため、背後からベルスに警棒で思い切り殴られる。
この異常な事態にグリムは教授に、ベルスを外さないとどんどんエスカレートしていく、と強く進言するが、実験の中断を拒む教授はベルスも77番も必要だ、と全く譲らない。
事態は深刻だと感じたグリムは、帰宅するベルスを捕まえて、「今度、暴力を振るったら外します」と忠告するが、ベルスは「あれは署内に秩序を取り戻すために必要でした、貴方からとやかく言われたくないな」と顔色一つ変えない。
「問題があるのなら、トーン教授から直接お聞かせ願おう、失礼・・・」
その夜、タレクもパニック発作に襲われるが、シュタインホフの適切な行動と指示で事なきを得る。
タレクは自分に起こった症状に戸惑い、シュタインホフは「これはゲームじゃない、あんな態度を取っていたら壊されてしまうぞ」と忠告する。
秘密を持つ者という以上に、何か引き合うものを感じた2人は笑いあう。
だが、タレクへの協力は、頑なに断る。
中間接見で、囚人は怯えた者が多く、看守も管理する疲労が現れていた。
その中で、ベルスだけは「気は抜けないです、いつ侮辱されたり傷つけられたりするか分りませんから、今後囚人と接する時は、今までより気をつけた方がいいかも・・・」と語る。
厳罰化が進むに連れて、仕返しを恐れる気持ちも増し、それがまた厳罰へと悪循環していた。
5日目
ついにジョー(69番)が極限のストレスで身体異常を起こし、殴り倒された53番も加えて、2名の脱落者が出た。
いつのまにか看守組のリーダー格を気取り始めたベルスは、次の罰として光音遮断箱を使う、と告げる。
ベルスは、82番に知人が居ない事をネチネチと詰るが、それも77番を激発させる作戦だった。
辛うじて耐えたものの、未遂として全裸で便所掃除を命じられ、連帯責任で終るまで全員の面会が遅れることになった。
囚人の精神状態も悪化しているので、恨みの視線で見られるタレク・・・。
監視モニターで箱を見つけたグリムは、教授に詰め寄る。
だが、あれは心理作戦で実際には使わない、と言う。
グリムは、入院者2名、鬱状態、無気力、現実逃避、自己喪失、と囚人が危険な状態だと告げるが、教授は権威への服従、暴力への欲求、没個人化にたった5日で達したと語り、今後起こることは世界に類の無い貴重なデータになる、後9日もある・・・ここで中止すれば一世一代のチャンスを棒に振ることになる、と言う。
「実験そのものが間違いよ、私達の認識が甘かったってこと・・・もう、手に負えないのかもしれない」
便所掃除をさせられた服で、列に並ぶタレク。
面会の前にベルスは、面会人に余計な事を言うな、と念を押し、タレクは臭いので面会禁止だ、と告げる。
一人、監獄で涙ぐむタレク・・・、そこにボッシュが現れ、新しい服を渡し、面会に連れて行く。
タレクは、ボッシュに後で面会人に渡してくれ、と手紙を託す。
他の看守組に知られるのは怖いが、気弱なボッシュは、その場で断りきれずに手紙を受け取る。
タレクの面会人は、意外にもドラだった。
彼女は部屋で契約書を見つけ、ジグラーを説得して代わりに来たのだった。
実習の内容を知らないドラは、自分がカナダに帰るので、すぐ出てきて、と言う。
それに首を振ったタレクは、小声で上のカフェテリアで看守から受け取って欲しい、と告げる。
囚人たちはタレクを避けるようになり、82番にだけ明日になれば全員でここを出られる、報酬も貰える、と元気付ける。
一方、手紙を託されたボッシュは、他の刑務官の目を盗んでエレベーターに乗ろうとするが、背後からベルスに声を掛けられ飛び上がる。
小心者の悲しさで、隠し事が見え見えのボッシュ・・・。
・・・カフェテリアに現れたのはベルスだった。
「気が変わった」と嘘の伝言をし、ドラを追い返してしまう。
一方、ノリノリで出勤したエッカートは、教授が留守の間はグリムが責任者を勤め、何かあったら実験は中止する、と聞く。
シュタインホフは、看守が定時点呼に現れないことに、不気味な気配を感じていた。
看守組では、ベルスがボッシュと77番の裏切りを伝え、女博士は実験の中止をほのめかした、と状況を説明する。
「これは、全部テストだ!外部からの妨害にどう対応するかの!77番は妨害要因として送り込まれたんだ」と、皆を扇動する。
ベルスは、教授が戻るまで外の世界と隔絶しよう、と教授の存在を盾に他を丸め込むと、すぐに行動を開始した。
ボッシュはリンチに遭い、留守番のラースは異常を伝えようと電話を手に取るが、看守組に襲われる。
ベルスは、長通路で、77番と看守が実験を妨害しようとした、看守は停職になり囚人となった!と血まみれのボッシュを監獄に入れる。
更に、タレクにはドラをネタにして嫌味を言い、殴りかかってくる所を他の看守にリンチをさせる。
シュタインホフ(38番)は、監視カメラに向かい「これらの行為は違法であり、人権侵害です。実験を即時中止して下さい。これは拷問です」と述べるが、監視室には誰もいない。
シュッテ(82番)も堪りかねて、「卑怯だぞ、それでも人間かっ!」と叫ぶが、ベルスによって頭部を警棒で強打されてしまう・・・。
今日のベルスの態度とタレクの言葉に違和感を感じたドラは、契約書を見て実験会場に電話をするが、誰も出ない。
タレクは、光音遮断箱に入れられ、襲い来るパニックに耐えながら、ドラの幻影を見ていた。
囚人組は全員ガムテープをされ、イスに拘束されたシュッテと光音遮断箱を見つめていた。
ずっと電話を鳴らしていたドラだったが、ようやくグリム博士が戻ったタイミングで切ってしまう。
ラースの不在を不審に感じながら監視モニターを見たグリム博士は、そこに縛られたシュッテとガムテープをされた囚人を見て驚く。
すると背後からベルスが現れ、教授に電話してくれませんか?と言う。
教授は委員会で捕まらないと言うと、
「ウソです、これもテストでしょ、誤魔化しても無駄ですよ、テストでしょ」
「いいえ、違うわ・・・実験はもう終了よ、今すぐに中止します」
その言葉を聞いたベルスは、エッカートに命じてグリム博士を下に連行させる。
エッカートは、グリム博士を囚人として扱い、服を脱ぐように命じ、下卑た言葉を吐く。
それを注意したベルスは、博士に囚人服を着せると、監獄に入れる。
一方、自慢気に研究を話していたトーン教授は、留守電でルースから異常を伝えるメッセージを聞き、急いで実習会場に向かう・・・。
完全にテストだと信じているベルスは、これを非常事態だと判断し、囚人にテープを剥がせば82番の隣だ、と脅しを掛ける。
だが、この状況を普通に異常だと感じる看守もいたが、トーン教授が戻るまでの忍耐力が試されていると言われ、結局戻ってくる。
ベルスが自販機を使っていると、窓をノックしてドラが立っていた。
タレクに会わせないと警察に行く、と言われ仕方なく中に入れるベルス。
その頃、脂デブのエッカートは、音楽の音量を上げ、グリム博士の監房に侵入していた。
レイプ目的であったが、そのときコツコツと箱を壊していたタレクが遂に蓋を破って脱出。
あたふたとズボンを上げて出てきたところに、倒れ掛かるようにパンチを喰らわせる。
反撃しようとしたが、檻の間から軍人シュタインホフが見事な手際で、警棒で首を締め上げる。
監獄の鍵を開け、シュッテの戒めを解き、ついでに手錠を嵌められたエッカートにグリム博士が腸が飛び出すような怒りのストンピングを喰らわせる。
ようやく自由にしてやれたが、タレクの応急処置の甲斐無く、すでにシュッテは息絶えていた・・・。
エレベーターの鍵は無いので、グリム博士とルースの提案で、裏の地下室から配管室を通って脱出することに・・・、タレクは箱を破るのに使った金具で壁のネジを外していく。
ドラを一室に案内して監禁し、急いで監視室に戻ったベルスは、逃げる囚人たちを見て刑務官室に走り込む。
シュッテをベッドで眠らせたタレクとシュタインホフも、監獄の通路の鍵を壊し、逃走に加わる。
だが、配管通路で鉄格子に阻まれた囚人たちは、トイレに隠れたボッシュ、別ルートに行ったタレクとシュタインホフを除いて縛られる。
そこにトーン教授が戻り、監獄の有様に戸惑いながら歩むと、銃を構えたエッカートと遭遇する。
銃声が響き、部屋を脱出したドラとボッシュも驚くが、撃ったエッカートもわざとではなく混乱していた。
さ迷い出たボッシュは、エッカートと遭遇し、必死で逃走する。
エッカートは混乱しながら、ひたすらボッシュに助けてもらおうとするが、追い詰められたボッシュはエッカートに殴りかかり、恐怖から消火器を使い、エッカートを撲殺する・・・。
その光景に出くわしたドラは、頭部を砕かれて死んでいる男と放心状態の男を見て、とりあえず床に転がっていた銃を拾う。
調理施設で、ベルスらの待ち伏せに遭ったタレクとシュタインホフ。
卑怯にも後ろから殴るベルスだったが、タレクの怒りもMAXオーバーなので、すぐさま反撃を開始。
シュタインホフも3人を相手にマーシャルアーツで立ち回る。
2人は叩き伏せたが、1人が命乞いをしている隙に足を狙われ、シュタインホフはテーブルの脚に手錠を掛けられる。
大激怒中のタレクは、這い回って逃げるベルスを殴る、蹴る、最後はシンクの角に叩きつける。
その時、銃声が連続で響き、「みんな、止めなさい」とドラが叫ぶ。
エッカートがガスガンだと言っていたので、カンプスが「寄こせ、どうせオモチャだろ」と近づいてくる腹と胸に2発撃ち込む。
この騒ぎの最中に、ベルスが包丁を差し込むが、タレクはそれを素手で止めていた。
ゆっくりとナイフを抜き取り、床に落とすタレク。
「全部、お前のせいだ・・・」と呟くベルスに、手錠を外されたシュタインホフが、馬乗りになって首を絞める。
「てめぇのせいでシュッテは死んだんだぞ」と叫ぶシュタインホフの肩に手を置き、「止めてくれ・・・終ったんだ、やっと終った」と、タレク。
死者2名、重傷3名、その中には責任者であるクラウス・トーン教授も含まれています。実験については、わずか2日目で異常が認められていたようです。
警察は2件の殺人容疑と複数の虐待容疑、更に異常事態を知っていながら放置した容疑で取締りを行っています・・・。
実験に参加していた女性科学者は、この実験を早期に中止していれば、このような惨劇は避けられたと証言しています・・・。
カナダに向かって走る車・・・。
穏やかな海辺に置かれた2人分のシャンペングラス。
タレクとドラは、どちらからともなく笑顔を浮かべると、ただ黙って海を見ながら、寄り添って座っていた・・・・・・
END
すでにジャンルとして区分してもいい監禁実験モノである。
セットもキャストも少なくて済むので、スラッシャー、ゾンビに並ぶB級予算映画の一角になりそう。
『実話を基にした物語』という前ふりも、スラッシャーと同じ感覚で使えますね。
さて、映像に拘る本格派の監督らしく、複数のカメラ視点を置くことで、チャチな感じは無し。
限られた空間で展開しているのに、不思議と息苦しさは感じなくて、照明やナイトビジョン撮影で色のメリハリを出す事にも成功してます。
脚本も捻りはありませんが、演出で頑張ったお陰で、最後まで観て損はしない。
展開的に気になる部分はありますが、伏線として外部の女を置いたのが良かったかどうか。
ラストは、実にハリウッド的で、罪の重そうなクソ野郎は酷い目に遭い、看守組や教授も警察でこってり絞られるので、後味は悪くない。
看守組のベルスが、余りにも異常な上に唐突なので、少し着いていけない気はする。
この役、基本的には真面目で小心者、プライドは高いが人間関係は希薄な人だろうな、と。
『ウェイヴ』のティムが成長して、こういう実験に参加したら、このまんまになるでしょう。
普通に考えればベルスが異常なのは分っていたはずなので、これは教授が全面的に悪い。
後、ベルスさん、背後から狙いすぎ。
主人公は、最初は記事ネタのために騒ぎを起こして面白くしよう、とトラブルメーカーぶりを発揮しますが、事態が変化していく過程で、取り返しのつかない間違いを犯していたことに気づいたはず。
極論すれば、ベルスの異常もシュッテの死も、元を正せば主人公のせいとも言える。
ラストで女と酒飲んでる場合じゃないと思いました、しばらく海辺で猛省が必要でしょう。
ところで、せっかく登場した自慢の盗撮メガネは完全にスルーでしたね。
謎の男として存在感ばっちりだったのが、シュタインホフ少佐。
空軍が何の目的があって、こんな民間の実験に潜り込ませたのかは謎のままでしたが、結果を見る限りでは得る物もありそうでしたね。
ただ、どうせなら陸軍の方が利用価値はありそうですけど。
強そうに見えて、あっさり民間人に足元を救われるとか、パイロットにも体術訓練は、もう少し必要かもね。
まぁ、いきなりスタローンのランボーみたいなのが紛れ込んでたら、ラストで看守組は全滅だし。
最後に、実験の過程で精神状態が劇的に変化する、というのは面白いんですが、少し早急すぎた感じ。
主人公が掻き回したにしても、看守組の変化の速さは異常でしょう。
前科は無い民間人ということですが、こういう手合いは精神的に脆いので、いつか犯罪者になりますよ。
それと、大事なことですが、これ普通に14日間が終ってたら、看守組は囚人組に復讐されるのは間違いない。
それこそ、殺人事件に発展することでしょう。
後のお礼参りも計算に入れて管理する人間が、ただの一人もいないという奇妙な話でした。
実質5日間で強制終了した駆け足実験、参加者の選抜はもう少し慎重にしましょうね、教授w
*基になった実験・・・スタンフォード監獄実験(wiki)。簡単に抜粋すると、看守11人、囚人12人で一週間行われた特殊な肩書きを持たされた場合の心理実験。実験責任者は心理学者フィリップ・ジンバルドー。
概ね、今作のような展開があり、実験に立ち会った牧師により、参加者の家族に連絡が入り、弁護士を雇って2週間の日程を短縮して実験は強制終了された。明らかな異常が見られたにも関わらず、実験のリアリティーに飲まれ中止しなかった教授に対して批判が集中、このような実験は行うべきでは無いとの世論が高まった。
ちなみに、看守組の方々は、実験の続行を強く希望したそうである。逆にして続けてやれば良かったのに。
*おまけ・・・ミルグラム実験。ユダヤ人虐殺の責任者アドルフ・アイヒマンと部下たちは、上からの命令に従っただけなのか、という心理実験。S・ミルグラム博士によって行われた実験では、事前のアンケートでは1.2%が命令に従うという予測だったが、結果は62.5%が実行した。もちろん殺人では無いが、電気ショックを最大限度まで与えるか、という内容で、軽い気持ちで流せる電流では無かったため、信憑性は高い。
別名『アイヒマン実験』。これで、アイヒマンらの罪が軽くなるわけでは無いが、やはり人の心は洗脳に弱い。
某サイトの愛好者なら、『ヒトラー~最後の12日間~』の監督として有名・・・かも、しれない。
実際の実験からインスピレーションを得ている点は『ウェイヴ』と同じだが、あちらがリアル志向なら、こちらは映画としてのフィクションを多分に盛り込んだ作品。
そのせいか、有名な割にコアな映画ファンや評論家の評価は低い。
前に観たのだが、余り印象に残っていないので、再見。
物語は・・・
刑務所内で14日間の拘束実験の被験者求む、報酬4000マルク(25万円)の記事を目にしたタクシードライバーのタレク。
面接会場で実験助手のグリムは、被験者は看守と囚人の二組に分かれ、囚人に選ばれた場合、プライバシーや基本的人権は守られない、と注意事項を述べる。
深く考えずに同意した皆は、精神状態と体力のテストを受ける。
どちらも優良と判断されたタレクは、極限状態にも耐えられると判断され、好感触で面接を終える。
タレクは、その足で2年ぶりに古巣の出版社に向かい、実験をネタにして、報酬1万マルク(62万5千円)で編集長ジグラーと契約する。
更に、メガネ型カメラと受信機を入手したタレクは、実験会場に到着する。
だが、リファレンス・ブース(脳波反応実験室)を見たタレクは、重度の閉所恐怖症のため軽いパニックに襲われるが、何とか誤魔化す・・・。
その夜、赤信号を無視して突っ込んできた車と接触事故を起こす。
事故の相手ドラは、父親の葬儀の帰りで、精神的に深く落ち込んでいた。
話を聞いてくれたタレクと一夜を共にしたドラは、連絡先を記したメモを残し、朝には姿を消していた・・・。
実験の初日、責任者のトーン教授は、この実験が圧力を掛ける役と耐える役があり、基本的人権を放棄される者も出る厳しい実験であることを告げ、最後の承諾を求める。
棄権者は出ず、ベルス、ボッシュ、エッカートン、カンプス、レンツェル、ストック、ブレイザー、アマンディの組が看守に選ばれ、それぞれ制服と装備を身につける。
本物の看守として任務を任された組は、残りの囚人組を洗浄し着替えさせる。
1日目
整列させられ、規則を読み上げるが、まだ遊び気分の被験者たちは緩みがちで、真剣さとは程遠い。
規則:1 囚人は互いに番号で呼び合うこと。
規則:2 刑務官に用がある時は「刑務官さん」と呼び掛けてからにすること。
規則:3 消灯時間以降は、話をしてはならない。
規則:4 出された食事を残してはならない。
規則:5 刑務官の指示には、速やかに従うこと。
規則:6 規則を守らない時は罰を与える。
4つの監獄に収容された12人の囚人も、まだ遊び半分が抜けていない。
その中で、タレク(77番)と同室になった高圧専門の電気技師ジョー(69番)、シュタインホフ(38番)だけは自分を番号で呼び落ち着き払っていた。
金、好奇心、新しい経験、と理由はそれぞれだが、あくまで前科も無い普通の男たちによる実験が始まった・・・。
食事の時間に、82番のシュッテ(飲食店経営)が牛乳を飲めず険悪なムードになるが、それをタレクが一気に飲み干し「俺たちの勝ちだ」とおどけてみせる。
それを「馬鹿な奴だ」と言うシュタインホフ(38番)。
看守組も囚人同様、まだ遊び気分だったが、暗い面が出始めた者もいた。
囚人に馬鹿にされたと感じていたエッカートンは、タレク(77番)を呼びつけ腕立て伏せを強要する。
反抗的な態度をとるタレクに、同室の者も連帯責任にして、腕立てを罰としてやらせる。
看守組は、エッカートンの行動に賛辞を贈る。
2日目
朝食の席で、牛乳を拒否した82番のために、全員で腕立て伏せをしよう、と提案するタレク。
それを監視していたトーン教授は苦笑するが、看守組にはタレクを問題視するムードが高まっていた。
ベッドメイキングは囚人の作業だが、嫌がらせを受けたタレクは、毛布を通路に放り投げて反抗する。
その上、看守二人を監獄に閉じ込め、ご機嫌で馬鹿騒ぎを誘発する。
実験である以上、教授たちには頼れない、と判断した看守組。
調子に乗って馬鹿騒ぎを止めない囚人組に、ベルスは収拾が付かなくなった場合は屈辱を与えろ、と本で読んだ知識を提案する。
看守組は電源を切り、消火器で威嚇してベッドを移動させ、全員に服を脱ぐように命令する。
「ただのゲームだ」と反論するタレクを無視し、ベルスは全裸で鉄格子に拘束する・・・。
わずか36時間で進行した事態に助手のグリムは言葉を失う。
トーン教授は暴動を収束させた事は評価しながらも、この手段が適切とは思わないので、次回は別の方法で解決するように指導する。
3日目
ベッドを戻させ、残りは穏やかに過ごそうと言う看守組。
お互いを番号で呼び合い始める囚人組。
82番は牛乳を飲み嘔吐するが、刑務官たちはそれを嘲笑する。
看守組は、中間報告で、囚人組を管理した方が後々やりやすいと言う。
特にベルスは、彼らの行動を抑制して我々の管理下に戻そうとした、結果が楽しみです、と微笑する。
喫煙時間に、タレクは、ベルスを中傷し腋臭だと馬鹿にする。
激昂するベルスだったが、あくまで暴力は禁止、振るえば即退場となる。
怒りを飲み込んで、洗面台で体を洗うベルス・・・。
その頃、洗顔中にシュタインホフ(38番)がメガネに気づき、同時にタレクの意図を読み取り、「記事を書いて幾ら貰う?」と言う。
奪い返そうとしたタレクの腕を見事に極め、「お次は、囚人対囚人か?わざと騒ぎを起こしてるだろ」と、言い当てる。
シュタインホフはトイレの水を流し、声を聞こえにくくしてから、自分が空軍少佐で実験の全てを報告書に書く、と告げる。
夜になり、就寝規則を破れば、毛布無しで長通路で寝てもらうと罰則を告げる。
看守組は帰宅も可能なので酒を持ち込み、早退したいという者には一緒に77番のことを話し合わなければ意味が無いと引き止める。
エッカートンは、ガスガンだと銃まで持ち込んでいた。
管理する側の8人も、いつのまにか囚人に圧力を掛ける心理に陥り始めていた・・・。
一方、ドナは自宅を売るのを止め、タレクの家に向かっていた。
頭の中では、2人で話した言葉がよぎる。
ドナは自分の父親は世界で一番だと思っていたが、タレクは自分の父親をクソ野郎だったと吐き捨てる。
8歳の時に、カメラマンだった父親に暗室に何時間も閉じ込められ死すら感じた、と言う・・・。
突然、ベッドに横になっていたタレクの口をテープで塞ぐベルス。
看守組は毛布に包むと、一気にタレクを運び去り、イスに厳重に拘束する。
酒を廻し飲みながら、罵倒し、痣が残らないようにイジメを加える。
この空間には監視カメラが無く、看守組は騒ぎばかり起こしたタレクの頭をバリカンで丸坊主にする。
「お前みたいな奴には居て欲しくない!釈放の申請書を出したと上には言っておくから、すぐ出て行け77番!」
「分ったのか77番!」
「分ったなら返事しろ!77番!」
イスごと横倒しにしたタレクに、看守達は次々と小便を掛けて笑う。
ただ、ボッシュだけは、そんな看守組に着いて行けず、監獄に戻したタレクにタバコを差し入れる・・・。
4日目
トーン教授とグリム助手の接見に、頭は自分が頼んだ、と話すタレク。
二人は、看守からタレクが実験を降りたがっている、と聞いている、と尋ねるが、タレクはそれを否定する・・・。
リタイアしなかったことで、看守組はこれから77番が問題を起こせば、連帯責任で全員に罰を与えると通達する。
「とことん馬鹿だな」と言うシュタインホフ。
同じ日、タレクのアパートを訪れたドラは、置手紙を入れようとしてポストから鍵を見つける。
そのまま、部屋に入るドラ・・・。
手紙の投函日になり、囚人は全員で手紙を書くことになる。但し、内容は事前に検閲される。
出す相手のいないシュッテ(82番)は、タレクに住所を教えてもらい、そこに出す事にする。
その頃、監視室では、夜中にタレクを連れ出す看守組の姿が録画されていた。
教授は監視をサボっていたラースに怒鳴り、助手のグリムに「たった4日でこんな行動に出るなんて良くないです」と助言を受けるが、予想の範囲内だと実験の中止はしない。
一応、地下室の鍵の交換だけは、ラースに厳しく命じる。
シュタインホフは、タレクの行動はベルスの期待通りで、皆を危険に晒している、と協力を断る。
日に日に厳罰化していく看守組の圧力に耐えられず、ジョー(69番)はリタイアを申請する。
だが、いつでもリタイアできるはずの実験は、トーン教授とグリム助手に直ぐには認められず、明日発表すると言われてしまう。
監獄に戻されたジョーは、看守達に『弱虫』と貼り紙され、全裸で立たされる。
他にも、恐怖症に襲われ、膝を抱え込んで爪を噛む自衛行為に走る囚人も現れた。
53番は、パニック症状で突然暴れ出し、看守を殴ったため、背後からベルスに警棒で思い切り殴られる。
この異常な事態にグリムは教授に、ベルスを外さないとどんどんエスカレートしていく、と強く進言するが、実験の中断を拒む教授はベルスも77番も必要だ、と全く譲らない。
事態は深刻だと感じたグリムは、帰宅するベルスを捕まえて、「今度、暴力を振るったら外します」と忠告するが、ベルスは「あれは署内に秩序を取り戻すために必要でした、貴方からとやかく言われたくないな」と顔色一つ変えない。
「問題があるのなら、トーン教授から直接お聞かせ願おう、失礼・・・」
その夜、タレクもパニック発作に襲われるが、シュタインホフの適切な行動と指示で事なきを得る。
タレクは自分に起こった症状に戸惑い、シュタインホフは「これはゲームじゃない、あんな態度を取っていたら壊されてしまうぞ」と忠告する。
秘密を持つ者という以上に、何か引き合うものを感じた2人は笑いあう。
だが、タレクへの協力は、頑なに断る。
中間接見で、囚人は怯えた者が多く、看守も管理する疲労が現れていた。
その中で、ベルスだけは「気は抜けないです、いつ侮辱されたり傷つけられたりするか分りませんから、今後囚人と接する時は、今までより気をつけた方がいいかも・・・」と語る。
厳罰化が進むに連れて、仕返しを恐れる気持ちも増し、それがまた厳罰へと悪循環していた。
5日目
ついにジョー(69番)が極限のストレスで身体異常を起こし、殴り倒された53番も加えて、2名の脱落者が出た。
いつのまにか看守組のリーダー格を気取り始めたベルスは、次の罰として光音遮断箱を使う、と告げる。
ベルスは、82番に知人が居ない事をネチネチと詰るが、それも77番を激発させる作戦だった。
辛うじて耐えたものの、未遂として全裸で便所掃除を命じられ、連帯責任で終るまで全員の面会が遅れることになった。
囚人の精神状態も悪化しているので、恨みの視線で見られるタレク・・・。
監視モニターで箱を見つけたグリムは、教授に詰め寄る。
だが、あれは心理作戦で実際には使わない、と言う。
グリムは、入院者2名、鬱状態、無気力、現実逃避、自己喪失、と囚人が危険な状態だと告げるが、教授は権威への服従、暴力への欲求、没個人化にたった5日で達したと語り、今後起こることは世界に類の無い貴重なデータになる、後9日もある・・・ここで中止すれば一世一代のチャンスを棒に振ることになる、と言う。
「実験そのものが間違いよ、私達の認識が甘かったってこと・・・もう、手に負えないのかもしれない」
便所掃除をさせられた服で、列に並ぶタレク。
面会の前にベルスは、面会人に余計な事を言うな、と念を押し、タレクは臭いので面会禁止だ、と告げる。
一人、監獄で涙ぐむタレク・・・、そこにボッシュが現れ、新しい服を渡し、面会に連れて行く。
タレクは、ボッシュに後で面会人に渡してくれ、と手紙を託す。
他の看守組に知られるのは怖いが、気弱なボッシュは、その場で断りきれずに手紙を受け取る。
タレクの面会人は、意外にもドラだった。
彼女は部屋で契約書を見つけ、ジグラーを説得して代わりに来たのだった。
実習の内容を知らないドラは、自分がカナダに帰るので、すぐ出てきて、と言う。
それに首を振ったタレクは、小声で上のカフェテリアで看守から受け取って欲しい、と告げる。
囚人たちはタレクを避けるようになり、82番にだけ明日になれば全員でここを出られる、報酬も貰える、と元気付ける。
一方、手紙を託されたボッシュは、他の刑務官の目を盗んでエレベーターに乗ろうとするが、背後からベルスに声を掛けられ飛び上がる。
小心者の悲しさで、隠し事が見え見えのボッシュ・・・。
・・・カフェテリアに現れたのはベルスだった。
「気が変わった」と嘘の伝言をし、ドラを追い返してしまう。
一方、ノリノリで出勤したエッカートは、教授が留守の間はグリムが責任者を勤め、何かあったら実験は中止する、と聞く。
シュタインホフは、看守が定時点呼に現れないことに、不気味な気配を感じていた。
看守組では、ベルスがボッシュと77番の裏切りを伝え、女博士は実験の中止をほのめかした、と状況を説明する。
「これは、全部テストだ!外部からの妨害にどう対応するかの!77番は妨害要因として送り込まれたんだ」と、皆を扇動する。
ベルスは、教授が戻るまで外の世界と隔絶しよう、と教授の存在を盾に他を丸め込むと、すぐに行動を開始した。
ボッシュはリンチに遭い、留守番のラースは異常を伝えようと電話を手に取るが、看守組に襲われる。
ベルスは、長通路で、77番と看守が実験を妨害しようとした、看守は停職になり囚人となった!と血まみれのボッシュを監獄に入れる。
更に、タレクにはドラをネタにして嫌味を言い、殴りかかってくる所を他の看守にリンチをさせる。
シュタインホフ(38番)は、監視カメラに向かい「これらの行為は違法であり、人権侵害です。実験を即時中止して下さい。これは拷問です」と述べるが、監視室には誰もいない。
シュッテ(82番)も堪りかねて、「卑怯だぞ、それでも人間かっ!」と叫ぶが、ベルスによって頭部を警棒で強打されてしまう・・・。
今日のベルスの態度とタレクの言葉に違和感を感じたドラは、契約書を見て実験会場に電話をするが、誰も出ない。
タレクは、光音遮断箱に入れられ、襲い来るパニックに耐えながら、ドラの幻影を見ていた。
囚人組は全員ガムテープをされ、イスに拘束されたシュッテと光音遮断箱を見つめていた。
ずっと電話を鳴らしていたドラだったが、ようやくグリム博士が戻ったタイミングで切ってしまう。
ラースの不在を不審に感じながら監視モニターを見たグリム博士は、そこに縛られたシュッテとガムテープをされた囚人を見て驚く。
すると背後からベルスが現れ、教授に電話してくれませんか?と言う。
教授は委員会で捕まらないと言うと、
「ウソです、これもテストでしょ、誤魔化しても無駄ですよ、テストでしょ」
「いいえ、違うわ・・・実験はもう終了よ、今すぐに中止します」
その言葉を聞いたベルスは、エッカートに命じてグリム博士を下に連行させる。
エッカートは、グリム博士を囚人として扱い、服を脱ぐように命じ、下卑た言葉を吐く。
それを注意したベルスは、博士に囚人服を着せると、監獄に入れる。
一方、自慢気に研究を話していたトーン教授は、留守電でルースから異常を伝えるメッセージを聞き、急いで実習会場に向かう・・・。
完全にテストだと信じているベルスは、これを非常事態だと判断し、囚人にテープを剥がせば82番の隣だ、と脅しを掛ける。
だが、この状況を普通に異常だと感じる看守もいたが、トーン教授が戻るまでの忍耐力が試されていると言われ、結局戻ってくる。
ベルスが自販機を使っていると、窓をノックしてドラが立っていた。
タレクに会わせないと警察に行く、と言われ仕方なく中に入れるベルス。
その頃、脂デブのエッカートは、音楽の音量を上げ、グリム博士の監房に侵入していた。
レイプ目的であったが、そのときコツコツと箱を壊していたタレクが遂に蓋を破って脱出。
あたふたとズボンを上げて出てきたところに、倒れ掛かるようにパンチを喰らわせる。
反撃しようとしたが、檻の間から軍人シュタインホフが見事な手際で、警棒で首を締め上げる。
監獄の鍵を開け、シュッテの戒めを解き、ついでに手錠を嵌められたエッカートにグリム博士が腸が飛び出すような怒りのストンピングを喰らわせる。
ようやく自由にしてやれたが、タレクの応急処置の甲斐無く、すでにシュッテは息絶えていた・・・。
エレベーターの鍵は無いので、グリム博士とルースの提案で、裏の地下室から配管室を通って脱出することに・・・、タレクは箱を破るのに使った金具で壁のネジを外していく。
ドラを一室に案内して監禁し、急いで監視室に戻ったベルスは、逃げる囚人たちを見て刑務官室に走り込む。
シュッテをベッドで眠らせたタレクとシュタインホフも、監獄の通路の鍵を壊し、逃走に加わる。
だが、配管通路で鉄格子に阻まれた囚人たちは、トイレに隠れたボッシュ、別ルートに行ったタレクとシュタインホフを除いて縛られる。
そこにトーン教授が戻り、監獄の有様に戸惑いながら歩むと、銃を構えたエッカートと遭遇する。
銃声が響き、部屋を脱出したドラとボッシュも驚くが、撃ったエッカートもわざとではなく混乱していた。
さ迷い出たボッシュは、エッカートと遭遇し、必死で逃走する。
エッカートは混乱しながら、ひたすらボッシュに助けてもらおうとするが、追い詰められたボッシュはエッカートに殴りかかり、恐怖から消火器を使い、エッカートを撲殺する・・・。
その光景に出くわしたドラは、頭部を砕かれて死んでいる男と放心状態の男を見て、とりあえず床に転がっていた銃を拾う。
調理施設で、ベルスらの待ち伏せに遭ったタレクとシュタインホフ。
卑怯にも後ろから殴るベルスだったが、タレクの怒りもMAXオーバーなので、すぐさま反撃を開始。
シュタインホフも3人を相手にマーシャルアーツで立ち回る。
2人は叩き伏せたが、1人が命乞いをしている隙に足を狙われ、シュタインホフはテーブルの脚に手錠を掛けられる。
大激怒中のタレクは、這い回って逃げるベルスを殴る、蹴る、最後はシンクの角に叩きつける。
その時、銃声が連続で響き、「みんな、止めなさい」とドラが叫ぶ。
エッカートがガスガンだと言っていたので、カンプスが「寄こせ、どうせオモチャだろ」と近づいてくる腹と胸に2発撃ち込む。
この騒ぎの最中に、ベルスが包丁を差し込むが、タレクはそれを素手で止めていた。
ゆっくりとナイフを抜き取り、床に落とすタレク。
「全部、お前のせいだ・・・」と呟くベルスに、手錠を外されたシュタインホフが、馬乗りになって首を絞める。
「てめぇのせいでシュッテは死んだんだぞ」と叫ぶシュタインホフの肩に手を置き、「止めてくれ・・・終ったんだ、やっと終った」と、タレク。
死者2名、重傷3名、その中には責任者であるクラウス・トーン教授も含まれています。実験については、わずか2日目で異常が認められていたようです。
警察は2件の殺人容疑と複数の虐待容疑、更に異常事態を知っていながら放置した容疑で取締りを行っています・・・。
実験に参加していた女性科学者は、この実験を早期に中止していれば、このような惨劇は避けられたと証言しています・・・。
カナダに向かって走る車・・・。
穏やかな海辺に置かれた2人分のシャンペングラス。
タレクとドラは、どちらからともなく笑顔を浮かべると、ただ黙って海を見ながら、寄り添って座っていた・・・・・・
END
すでにジャンルとして区分してもいい監禁実験モノである。
セットもキャストも少なくて済むので、スラッシャー、ゾンビに並ぶB級予算映画の一角になりそう。
『実話を基にした物語』という前ふりも、スラッシャーと同じ感覚で使えますね。
さて、映像に拘る本格派の監督らしく、複数のカメラ視点を置くことで、チャチな感じは無し。
限られた空間で展開しているのに、不思議と息苦しさは感じなくて、照明やナイトビジョン撮影で色のメリハリを出す事にも成功してます。
脚本も捻りはありませんが、演出で頑張ったお陰で、最後まで観て損はしない。
展開的に気になる部分はありますが、伏線として外部の女を置いたのが良かったかどうか。
ラストは、実にハリウッド的で、罪の重そうなクソ野郎は酷い目に遭い、看守組や教授も警察でこってり絞られるので、後味は悪くない。
看守組のベルスが、余りにも異常な上に唐突なので、少し着いていけない気はする。
この役、基本的には真面目で小心者、プライドは高いが人間関係は希薄な人だろうな、と。
『ウェイヴ』のティムが成長して、こういう実験に参加したら、このまんまになるでしょう。
普通に考えればベルスが異常なのは分っていたはずなので、これは教授が全面的に悪い。
後、ベルスさん、背後から狙いすぎ。
主人公は、最初は記事ネタのために騒ぎを起こして面白くしよう、とトラブルメーカーぶりを発揮しますが、事態が変化していく過程で、取り返しのつかない間違いを犯していたことに気づいたはず。
極論すれば、ベルスの異常もシュッテの死も、元を正せば主人公のせいとも言える。
ラストで女と酒飲んでる場合じゃないと思いました、しばらく海辺で猛省が必要でしょう。
ところで、せっかく登場した自慢の盗撮メガネは完全にスルーでしたね。
謎の男として存在感ばっちりだったのが、シュタインホフ少佐。
空軍が何の目的があって、こんな民間の実験に潜り込ませたのかは謎のままでしたが、結果を見る限りでは得る物もありそうでしたね。
ただ、どうせなら陸軍の方が利用価値はありそうですけど。
強そうに見えて、あっさり民間人に足元を救われるとか、パイロットにも体術訓練は、もう少し必要かもね。
まぁ、いきなりスタローンのランボーみたいなのが紛れ込んでたら、ラストで看守組は全滅だし。
最後に、実験の過程で精神状態が劇的に変化する、というのは面白いんですが、少し早急すぎた感じ。
主人公が掻き回したにしても、看守組の変化の速さは異常でしょう。
前科は無い民間人ということですが、こういう手合いは精神的に脆いので、いつか犯罪者になりますよ。
それと、大事なことですが、これ普通に14日間が終ってたら、看守組は囚人組に復讐されるのは間違いない。
それこそ、殺人事件に発展することでしょう。
後のお礼参りも計算に入れて管理する人間が、ただの一人もいないという奇妙な話でした。
実質5日間で強制終了した駆け足実験、参加者の選抜はもう少し慎重にしましょうね、教授w
*基になった実験・・・スタンフォード監獄実験(wiki)。簡単に抜粋すると、看守11人、囚人12人で一週間行われた特殊な肩書きを持たされた場合の心理実験。実験責任者は心理学者フィリップ・ジンバルドー。
概ね、今作のような展開があり、実験に立ち会った牧師により、参加者の家族に連絡が入り、弁護士を雇って2週間の日程を短縮して実験は強制終了された。明らかな異常が見られたにも関わらず、実験のリアリティーに飲まれ中止しなかった教授に対して批判が集中、このような実験は行うべきでは無いとの世論が高まった。
ちなみに、看守組の方々は、実験の続行を強く希望したそうである。逆にして続けてやれば良かったのに。
*おまけ・・・ミルグラム実験。ユダヤ人虐殺の責任者アドルフ・アイヒマンと部下たちは、上からの命令に従っただけなのか、という心理実験。S・ミルグラム博士によって行われた実験では、事前のアンケートでは1.2%が命令に従うという予測だったが、結果は62.5%が実行した。もちろん殺人では無いが、電気ショックを最大限度まで与えるか、という内容で、軽い気持ちで流せる電流では無かったため、信憑性は高い。
別名『アイヒマン実験』。これで、アイヒマンらの罪が軽くなるわけでは無いが、やはり人の心は洗脳に弱い。
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