プラネット・テラー in グラインドハウス

原題：PLANET TERROR
監督：ロバート・ロドリゲス
制作：クエンティン・タランティーノ

ネタバレあり

Ｂ級映画の中でも、特に娯楽性に富んだ作風を好み、奇跡のヒットを飛ばした男。
それが、今作のロドリゲス監督であり、盟友のタランティーノである。
その２人が古き良き時代、低予算映画が毎週のようにドライブインシアターや地方でスプラッシュ上映されていた頃を再現した映画『グラインドハウス：２本立』から独立した一本である。

成功したからこそ出来るお遊びだが、それだけに留まらず高水準の楽しさを与えてくれている。
映画は娯楽、破天荒でメチャクチャでも思い出に残る作品は必ず撮れるし、熱意のある作品をファンは忘れない。
私もＢ級映画が大好きだ、熱意と努力とアイデアとちょっぴりの涙と笑顔が低予算映画にはあるから。


物語は・・・
ゴーゴーダンサー・チェリー（ローズ・マッコーワン）は、刺激的なダンスを見せながらも、フィニッシュで涙を流す。店長に文句を言われながらも、劇的な変化を夢みるチェリーは、承諾に中指を書類代わりにチップを残して、店を後にする。

夜の田舎道を進むチェリーの横を猛スピードの軍用トラック群が掠め、その荒っぽい運転でチェリーは足に怪我をしてしまう・・・。

軍の基地に到着したトラックからは、先に化学者のアビーが降り立つ。アビーの一味だったロニーは、被験者の３人を逃がしてしまった落とし前として、睾丸を摘出され射殺される。
トラックから現れた部隊長マルドゥーン中尉（ブルース・ウィリス）は、腰の計測器を止め、ガスマスクを外す。目の前の謎めいたボンベを指し交渉は有効だ、というアビーに、マルドゥーンはブツの全部を要求する。
それを聞いたアビーは発砲し兵士を倒すが、逆に兵隊たちに制圧されてしまう。窮地に陥ったアビーは、ボンベを撃ち、中から緑色のガスが大量に噴出し始めた。それを見たマルドゥーン中尉は、急速に腫れあがる顔で満足げにウィンクを贈り、兵士達と共にガスの中へ入って行った・・・。

『THE BONE SHACK：バーベキュー・ハウス』に車の給水に立ち寄った女は、足を怪我したチェリーとすれ違う。足の心配をしたのを聞いた店主のＪＴは、女が医療関係の仕事だと察し、ダムで汲んでいた水を分けてやり、急ぐ様子から人命救助かと聞く。

夜勤に向うブロック夫婦だが、妻のダコタはベッド下のスーツケーツを息子のトニーに持たせて、と電話しながらメールで「HURRY BABY,I THINK HE KNOW：急いで、彼は感づいていると思う」と送信する。

チェリーの足の怪我は思ったより深く、金属片が太ももに喰い込んでいた。トイレで応急処置をしたチェリーは、ＪＴの店で昔の恋人の解体屋レイ（フレディ・ロドリゲス）と再会する。別れた２人の会話には、ブルースの音色が良く似合う。
懐かしさと愛情は違うと知っていながら、チェリーはレイに車に乗せて欲しいと頼み、レイはそれを快諾する。

病院の夜間勤務に出勤したブロック夫妻。
夫のウィリアムは、顔馴染みの男の噛み傷の治療にあたるが、体温は40.6度もあり、舌は潰瘍で膨れ上がっていた。触診で膿を浴びたウィリアムは、麻酔医師の妻を呼ぶが、男の噛み傷は壊疽が異常な速度で進行していた。妻のダコタは、黄、青、赤の注射をし、男は意識を失う。

一方、車の女は、またオーバーヒートし、ヒッチハイクを無視されている間に、謎の人影に襲われ路肩へと姿を消す。
ちょうど、そこを通り掛かったレイとチェリーだったが、動物の死体を脇に移動しているだけだと思い、鹿が飛び出してきたら避けずに撥ねるんだ、と言う。そう言った側から、人影を見て急ハンドルを切り、激しく横転してしまう。車内で逆さ吊りになった２人は口論を始めるが、突然助手席の窓を腫れ上がった腕が破り、チェリーを連れ去ってしまう。
すぐに暗視スコープの付いたライフルを持ち、後を追うレイ。チェリーは、すぐ側の茂みの中で、２つの影に襲われていた。
暗視スコープに浮かび上がった姿は、まるで怪物のような姿だった。レイは、正確に銃弾を命中させ怪物を追い払うが、チェリーは片足を奪われ、瀕死の状態だった・・・。

すぐに病院に運び込み、ウィリアム医師の手に渡すが、レイは「足は感染者が持っていった」と、説明する。駆けつけたヘイグ保安官に連れて行かれたレイは、前科を盾に取られ、横暴な尋問を受け、逮捕されてしまう。その間にも、行き交う患者の多くは、顔や手足に疱瘡が出来ていた。
レイが連れて行かれた後も、病院には緊急患者が運び込まれ続け、死体も２体持ち込まれた・・・。

ヘイグ保安官に連行されたレイは、事務所で電話を使い、薬品についての聞き取りをした。そこで顔馴染みのテキサス・レンジャーのアールと会い、妻の容態が悪いと聞かされる。
レイの所持していた銃が特殊な物だったので、出所を追及していたヘイグは、兄のＪＴから電話を受け、店の外を妙な２人組がウロついていると相談を受ける。

一方、病院ではウィリアムの元に、脳の無い遺体が搬送されてきた。遺体の顔を見て驚愕するダコタと、遺体の携帯電話を取り上げるウィリアム。２人は診察室に入ると、ウィリアムが彼女とダコタの関係を疑い、携帯を見せるのを拒否したダコタに麻酔注射を何度も射ち込む。照らし合わせた携帯のメールで、自分への裏切りを確信したウィリアムは、ダコタに赤い注射をしようとするが、そこに知らせがあり、ウィリアムは一旦ダコタをクローゼットに監禁する。
案内された先の安置室からは死体が消え、血の跡が通路の先へと続いていた・・・。

保安官事務所では、トロ副保安官（トム・サヴィーニ）が連行した男に指を喰いちぎられ喚いていた。パトカーに様子を見に行った保安官たちだったが、男はパトカーから姿を消していた・・・。
トロの指輪が見つかり、それを渡そうとした瞬間、副保安官のカルロスが、いつのまにか集まってきていた感染者たちに襲われ、パトカーの上で喰いちぎられ始めた。ヘイグは銃で応戦するが、感染者は異常な腕力でトロを投げ飛ばし、駆けつけた他の保安官たちと銃撃戦になる。
レイも銃で自分の足の鎖ごと感染者を撃ち殺し、銃はヘイグに没収されたが、一緒に病院へチェリーを迎えに行く事になる。

病院は、伝染性の強い奇病に犯された患者で溢れていた。ウィリアムも最初の顔馴染みの男が医師を殺すのを目撃し、自分も男から腫れ物の膿を顔に塗りつけられる・・・。

ヘイグは、アールの家に応援の電話を入れるが、すでに感染していた妻に襲われてしまう。

監禁から逃れたダコタは、窓を割り外へと逃げ出す。車のドアを開けようとするが、麻酔で両手首が麻痺しているので、手を差し込んだ状態で足を使いロックを外そうとする。しかし、ヒールのバランスが崩れ、かなり痛そうな角度で骨折してしまう。すでに混乱が始まっている駐車場から、歯で時計のベルトを緩めることでギアを入れて発進するダコタ・・・。
そこに入れ違いに走りこんできたヘイグたちは、まるで戦場のような状況に驚愕する。銃が無いレイは、バタフライナイフ２本を持ち、病院の中へチェリーを救出に行った。
華麗な格闘術で、血を避けながら感染者を始末して進むレイ・・・。その身のこなしは普通の人間ではなく、特殊な訓練を受けた男の動きだった。
病室でチェリーと再会したレイだったが、厳しい態度で接し、足を無くしたのよと嘆くチェリーに机の脚を差し込む。
チェリーも自分を叱咤し、レイの後に続いて、トラックに乗り込む。
「君は強い、強いままでいてくれ」とレイは言うのだった。

どうにか自宅に辿り付いたダコタは、文句を言うベビーシッターの双子を文字通り蹴り出し、トニーを急かして車に乗り込む。どうにもマイペースで気持ち悪い少年のトニーは、カメ・サソリ・タランチュラをケースに入れて連れてきていた。そこに、さっき蹴り出された双子がキレまくって、スコップで車を殴りつけてきた。構っていられないので振り落として、ダコタとトニーは車で走り出す。
向った先は父親のアールの家。クラクションに反応しないので、不安を感じたダコタは、トニーに銃を渡して「誰か来たら撃って・・・パパだったら真っ先に撃って」と言い残して家に近づいていく。
だが、銃声が響き、頭に大怪我をするトニー。
ウィリアムと無数の感染者も現れ、トニーを抱きかかえたダコタは、必死に玄関の扉を蹴る。開いた扉からは、斧を振りかざした父アールと部屋一面の血。
生きていたアールは、勘当した娘とはいえ、外の状況を見て、中へと引っ張り込む・・・。

ＪＴのバーベキュー・ハウスに集結したヘイグ保安官と住民たち。レイ以外を保安官助手に任命し、ありったけの武器で武装させて「自分を撃つなよ・・・なによりも、俺を撃つなよ」と注意して店の中に入る。
厨房で無事に感染者を退治していたＪＴを見つけ、脱出の手段を思案していると、ＪＴが車庫に案内してくれる。そこにあったのはＨＯＮＤＡの改造バイクとニトロ搭載350馬力のアメ車。
レイの言動から、本当に解体業者なのか？と疑うヘイグ保安官。
「誰でもない、それが一番憶えやすいだろ」と答えるレイ。

二人きりになったレイとチェリーは、口げんかをしながら、ジャケットの内ポケットに指輪が入っている事を話す。レイは、それを贈るつもりだったが、その前にチェリーは彼のジャケットを着て去ってしまっていたのだ。真実の愛は消えていなかったと知った２人は、激しく求め合い、愛を交わす・・・。
＊ここで、フィルムが一部消失したと注意書きが入る（ワロタ）。

その間に起こったであろうこと↓
①アールとダコタ母子が合流。（でも、トニーは死亡した模様）
②ゴーゴーパブの店長とベビーシッターの双子も合流。
③レイの凄い正体が明かされた。
④店が炎上している。
⑤感染者の数が、とんでもなく増えている

と、いうわけで、ヘイグ保安官は、トロに誤射されていた（おいおい）。傷の手当を受けながら、ヘイグ保安官は、「お前が、あのエル・レイだったとは・・・」と言い、知っていたらあんな扱いはしなかった、と謝る。
事態は篭城戦になっていた。
レイに銃を渡し、後を頼むヘイグ保安官。レイは、無駄に銃回しをして、只者じゃないな、と言われる。
乱入してきた感染者にトロが引き裂かれ、一行はレイを先頭に車に向うが、無数の感染者が迫っていた。一旦、店に退却し、ゴーゴーパブの店長が車に走るのを断ったので、片足のチェリーが走り、レイが援護することになる（なんでやねんｗ）。
レイの強烈な援護射撃のお陰で、トラックを店内に運び込んだチェリー。皆はＪＴの車と分乗して、バイクにチェリーとレイが乗る。アールは援護のために車庫に残る。
ここで、レイがダコタの車からポケバイを入手し、チェリーの運転で後ろがダコタにチェンジする。
感染者を撃退しながら進んだ一行だったが、橋の上で大量の感染者に行く手を遮られる。
その時、マルドゥーン中尉が現れ、感染者共を一掃すると、エル・レイと生存者について来いと命じる。

後頭部を殴られて気絶していたレイが意識を取り戻すと、皆は監獄に入れられ、見張りもいる。
ここで、忘れていたアビーが登場、この病気の説明を始める。

生物兵器ＤＣ２又の名をプロジェクト・テラー、貯蔵庫は地下１０階にあり、中和剤は無く、一定量のＤＣ２を吸引し続けることが反応を遅らせる唯一の方法。ごく稀にガスに感染しない人がいて、それが治療の鍵になる。

監獄ではＪＴが撃たれ、その隙に見張りを倒して、レイとアジーはエレベーターで後を追う。
ＤＣ２を移送しようとしたマルドゥーン中尉だったが、電源が落とされ、レイとアビーが部下を倒して現れる。
マルドゥーンは、ビン・ラディンを追い詰め殺したが、功績の替わりにＤＣ２を浴びたせいで、アジーからＤＣ２を買い生きながらえていたのだ。感染を蔓延させ、感染者が増えれば治療法の研究も進むかもしれない。隊員たちを生き延びさせると誓ったマルドゥーンは、こうするしかなかったのだ、と。そして、ＤＣ２の吸引を止めたマルドゥーンは異形の怪物と化し、２人に撃たれる。

兵隊に連れて行かれていたチェリーとダコタだったが、慰み者にされる所で、チェリーが義足（机の脚）で反撃。だが、ＤＣ２が切れてち○ぽが腐りながらも迫ってくる（あぁ、嫌だ）兵士を、ダコタが麻酔銃で倒す。レイとアビーも駆けつけ、二人を救出すると、レイはチェリーに新しい足を差し込む。
「俺は、信じてるぜ・・・君には凄い力がある・・・さぁ、見せてくれ、本当の君を！」

わははははははは・・・！
片腕マシンガールは観たけど、こんな片足無双は観たことないわｗ

そんなこんなでヘリが２機あるので、そこまで行って逃げる事になる（唐突に）。
意外なことに店長が操縦できるそうだ。

ここに残るというＪＴとヘイグの兄弟に爆弾の起爆装置を渡して、レイが運転するバイクの後ろでチェリーの片足無双が炸裂！

一気に突破しようというレイに、「全員死んだらこの感染は止められない、俺たちが解毒剤なんだ！」と言うアビー。
回り込めると思うか？と言うレイに、ここで待ってろ！と決めセリフを言い放ち、先頭で走るアビーと他３名。
壁に隠れて呼吸を整え・・・・・・みんなが見守る前で・・・死にましたｗ
見事に頭を吹っ飛ばされて散ったアビーに、「ねぇ、他に超優秀な科学者いる？」と聞くチェリー（ひどｗ）。

一方、地下では兄弟のレシピ話に花が咲き、ヘイグはメモを取りながらレシピを書き留めます。「秘密のレシピだ、墓まで持ってけよ」「あ・・・あぁ・・・そうするよ」と言い残してヘイグは息を引き取りました。
苦笑いしながら、弟の死を見届けるとＪＴは、起爆装置を押す・・・。

基地の爆発に乗じて、一気に壁を越える作戦に出るレイ。実行するのは、チェリー・・・。

グレネードの爆炎で空を飛び、壁を越えた所で再びグレネードで敵を吹き飛ばし、着地と同時に回転してマシンガン連射で一掃しました。

「どんだけ万能やねん、片足マシンガンｗ」

 

この後も、装甲車を吹き飛ばし、ロケットランチャーをブリッジで交わし、拾ったサングラスを何故か掛けたり・・・している間に後ろに感染軍人が迫り、レイが相撃ちで重症を負いました。

もう、主役はチェリーこと片足マシンダンサーです。

後に続いた一行がヘリを占拠し、ダコタはもう一台のヘリに向いますが、そこにウィリアムがいました。その窮地を救ったのは、何とアール父さん。西部劇のようなクイック＆ドローで、見事に決めて「心底嫌いだった」というウィリアムを蜂の巣です。

色々と片付いてきたので、一行を乗せたヘリが発進し、ノリノリでローターによるヘリコプター無双で残りを惨殺。「ワイパーを！」と余裕の笑顔。

残ったチェリーとレイ・・・。
早く逃げろ、というレイに、「こんな状態で置いていけないわよ・・・ここら辺の連中は轢かれた動物を食べるんだからね」とチェリーに言われて吹き出すレイ。
「やっと、あんたにうけた・・・２人で世界に立ち向かうんでしょ・・・」と励ます。

「・・・そうなる・・・俺は弾を外さない・・・心配するな、君は生き抜いていける・・・」

レイは、最後にそう言い残すと、息絶える。

チェリーは、レイに最後のキスをすると、ヘリから下ろされたロープを掴む。
段々と小さくなっていくレイの姿を見つめながら、涙を流すチェリー・・・。

世界は荒廃し、希望を無くした人々を導いてチェリーは進む。
私たちの地・・・海を背にした地へと・・・

貴方が言った通り・・・二人で世界に立ち向かってる・・・二人で世界に・・・・・・・ＥＮＤ


破天荒なストーリー、ジョーク満載のシーン、ご都合主義な展開、とＢ級の悪ふざけを最高の特殊技術とキャストで撮りきった快作。
当時の映像の雰囲気を出すために、フィルムの傷やメダカノイズ、パンチマークや消失した部分などを、わざわざ苦労して加工してる所なんて、もう涙もんですね。
確信犯的な作品なので、昔の映画環境を体験していないと理解に苦しむ若い子もいそうです。

本当に馬鹿馬鹿しいアクションを、本気で最高の特殊技術でやってる後半は、色んな意味で伝説とさえ言える。机の脚→マシンガン→ガトリングガンとパワーアップするチェリーの足だけでも笑いが止まりませんでした。
今回に限っては、Ｂ級予算映画の醍醐味をＡ級の予算で撮っているので、うちのサイトじゃ反則なんですけど、余りにも愛に溢れているので書かずにいられませんでした。

後、そこはスルーなのかよ、と突っ込まずにはいられないシーン（例えば、ウィリスが変身したのに戦闘シーン無しとか）やアビーの解毒剤を引っ張っておいて頭ボ～ンとか、数えたらキリが無いほどシュールな笑いもありました。何か色々と重要なことがあったような気がするが、そこをＭＩＳＳＩＮＧ REELで飛ばす辺り最高です。実際、昔はフィルムの移送（劇場たらい回し）や管理の悪さで一部が消失したという話もありましたが、本当に映画が好きなんだな、この２人。

＊俳優に絡んだ小ネタも満載なんですが、これ書くのに５時間くらい掛かってしまったので、少し充電してから出典とかの確認を済ませて追記します。
＊２本立てバージョンで、嘘映画予告されていたマチェーテ：ＭＡＣＨＥＴＥも、本当に映画化しちゃいましたね。