B級映画って言うなw
再見して語る映画館
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ドイツの気鋭監督が放った心理サスペンス。
アメリカで実際に起こった事件を基に、集団心理の恐怖を描いている。
近年流行のスタイリッシュさとは真逆の映像が、生々しいリアリティを出している。
物語は・・・
若ハゲの社会科教師ライナー・ベンガーは、校長の指示で授業内容の変更を命じられる。
テーマは「独裁」
進行中だった「無政府主義」の授業を続けたかったライナーは、同じテーマを提出した教師に交渉を申し出るが、素気無く断られてしまう。
バンド、演劇、ライナーが顧問の水球、とそれぞれに青春を送っていた生徒達は、一週間の講習にライナーの「独裁」を選び集まってくる。
月曜日
ボートハウスで妻と暮らすライナーは、一泳ぎしてから実習に向かう。
若くて気さくなライナーの実習には、思った以上に生徒が集まっていた。
「独裁:ある個人や団体が大衆を支配に置いた状態」
当然ながら例としてナチスによる第三帝国が挙げられ、もうドイツでは独裁など有り得ないという意見が場を占める。
ライナーは、手始めとして席替えを行い、指導者の選抜を多数決で決める。
指導者に選ばれたライナーは、自分に敬意を払い様付けで呼ぶこと、発言には許可を求め、立ってから行うというルールを定める。
モナのように愛国心を危険視する生徒や退出するケビンら不良3人組も出るが、内2人は留年を恐れて教室に戻る。
教室では、姿勢を正し、規律を重んじた活発な意見が生まれ、特にティムは異様な熱っぽさを持って「ベンガー様」と心酔する。
実習は生徒それぞれに影響を与え、熱中するティム、気弱なリザ、規律の無い家庭に不満を持つカロと水球部のマルコ、退出したケビンでさえ実習を無視できない気分になっていた。
火曜日
「独裁」についての資料を急ごしらえで纏めたライナーは、入出した教室で生徒全員の挨拶を受ける。
早速、全員の足踏みが揃うまで団結の楽しさを伝える。
席替えには、仲の良い者同士を離し、成績の良い者と悪い者を並べ、助け合いの重要さを感じるという意図があった。
いつものようにモナは反発するが、ライナーの案には逆らえない。
一斉足踏みは、階下の「無政府主義」の教師を怒らせたが、退屈していた生徒達はライナーの実習に移りたいと言い出す者も現れ、校長も黙認する。
今回の提案は、実習生の服装の統一。
貧富の差に関係なく買える白シャツとジーンズに決まり、買いたく無い生徒は他の生徒が貸すというチームワークも生まれた。
だが、実習に陶酔するティムは、白シャツ以外の服を燃やしてしまう・・・。
水曜日
白い服が似合わないという理由で、他の服を着てくるカロ。
モナは実習を去り、代わりに他の生徒が入り、定員はいっぱいになる。
今日はチーム名を決めることになり、カロも発言するが誰の同意も得られない。
『WAVE』にチーム名が決まり、次は『行動力』に進む。
イラストの得意な者がマーク、ティムらがホームページ、モナがロゴ入りのボタン、と活発な意見が交わされ、チーム『WAVE』は、実習生の想像力を刺激する。
友達のいなかったティムは、以前はファングにヤクを流していたが、今は『WAVE』に加わったことで、他の集まりに反発する。
揉め事を見つけた不良2人は、仲間意識からティムを救い、また絡まれたら連絡しろ、と携帯番号を交換する。
いつのまにか生まれた連帯感は、最近のカロの態度に不満を感じるマルコの相談に乗るマヤ、我侭なカロを主役から外しデニスの叱咤で団結する演劇部、スケボーをやらせる代わりにWAVEに入るカロの弟レオンなど、徐々に変化が加速していた。
主役をマヤに変更され、練習を真面目にやっている部員を見て、カロは強い疎外感を感じる。
その不満を口にしたカロは、マヤに傲慢と言われ、マルコがマヤに相談していたことにも激しく憤る。
だが、マヤは強気な態度を崩さず、『WAVE』は貴方の思い通りになんかならないわ、と部屋を出て行く。
その頃、ライナーは生徒達が自主的に行動するのを素直に喜んでいた。
クラスでも怠け者だったカシが、WAVEメンバーを紹介するHPを立ち上げ、生徒が団結していく姿は好ましいことだと思っていた。
だが、妻はライナーが白いシャツを着せていること等が、職員室でも噂になっていると不機嫌な様子を見せる・・・。
同じ頃、ティムは自分でもHPを作成していた。
しかし、そこには『ザ・ウェイヴ-正義の組織-』の名称で、銃と街を飾った過激なトップページが表示されていた。
連絡を受けたティムが集合場所に行くとケビンが現れ、『WAVE』に参加する意思を握手で示す。
男子生徒は、街中を走り回り、至る所にWAVEの印をマーキングし、ケビンが作成した5,000枚のシールを貼り付ける。
彼らは、熱病に浮かされたように動きまわり、他の不良チームのマークを消し、ティムは改装中の寺院によじ登り巨大なマークを描いてみせる。
木曜日
ティムは行動力を認められ一気に株を上げ、WAVEは益々団結を強くしていた。
生徒の発案で新たに『敬礼』を取り入れたライナーは、全員で行う。
『敬礼』の余波は、カロの弟レオンのような子供に伝播し、敬礼をしない生徒を学校に入れないようにしていた。
カロから話を聞いたライナーは、問題が発生していることを認めながらも、残り一日の実習をやり遂げる気でいた。
カロに「この実習は制御不能よ」と言われたことで、方針を変更するべく教室に向かう。
校長は、呼び出したたライナーに親や教師から苦情が来ていることを伝えるが、生徒達がやる気になっていることを認め、実習の成功を応援する。
学生新聞の編集室では、モナとカロがWAVEの暴走を生徒に伝えるべきだと主張し、部長黙認で全生徒のメールアドレスを入手する。
一方、マークを上書きしたことで、街のチームに因縁を付けられたWAVEは、殴り合い寸前になる。
だが、ティムは持ち出した銃で相手を威嚇し、WAVEのピンチを救った気になっていた。
マルコたちは、ネットで銃まで入手していたティムに危険なものを感じ始めていた・・・。
生徒に送る文章を作成していたカロの元に、マルコが現れてパーティーに誘う。
WAVEを嫌うカロは断り、ティムの作成したHPを見せ、白シャツに関する書き込みや弟のことを話す。
だが、マルコはWAVEの団結を信じ、二人は物別れに終る。
その頃、帰宅したライナーの元には、警護をしているというティムが現れる。
無関心な家族の中で育ったティムにとって、WAVEや指導者ベンガーは彼が求めていた理想の組織だった。
妻は、ティムの異様な態度に眉をひそめる。
学生達のパーティーが開かれ、新聞部の部長はカロ達の事を話す。
マルコは、在り来たりな未来像しか無い自分のことをマヤに話し、二人はキスを交わす。
パーティーも佳境になり、水球部のマルコとジラルは明日の試合の応援を頼み、できたら白シャツで来てくれ、という言葉に一同は盛り上がる。
何度やってもメールの送信が失敗するカロは、コピー機でWAVEの告発文を作成し、各教室に配布していた。
途中で電気が消え、不安な気持ちで家路を急ぐ・・・。
金曜日
新聞で、改装中の寺院にマーキングしていた事実を知り、雨の中で軒先に座り込むティムも見つけたライナー。
昨日、食事をさせて追い出した後、ずっとそこに居たことに動揺を隠せない。
更に、車で送る途中で、フロントガラスに赤ペンキをぶち撒かれ、自分の知らない所で起こっていた事実に不安を感じる。
教室では、WAVEが廊下に置かれていた告発文を回収し、カロの仕業だとマルコに詰め寄る。
マルコは、今日の試合の後で彼女に話す、と言い、告発文は破棄された。
教室に入ったライナーは、新聞の記事に激怒し、全員に実習で体験したことをレポートで提出しろ、と命じる。
最後の実習は終り、全員がレポートを提出した後で、ティムが犯人を知っていると申し出る。
それを単独行動だと非難し、WAVEは一致団結だ、と言うライナー。
水球部の試合が始まり、プール前ではWAVEが白シャツを配り、着用しない者は応援席に入れない処置までしていた。
階段で排除されたカロとモナは、裏口を通り応援席に向かい、WAVE反対と叫びながらビラを撒き散らす。
試合では頭に血が昇ったジラルが、相手選手を水中に引き摺り込み、応援席では乱闘が起こったので、試合は中止になってしまう。
帰宅したライナーは、妻から生徒を操って崇拝させている、と罵倒され、カッとなって羨ましいんだろ、と言ってしまい、家を出て行かれてしまう。
マルコは、カロがビラを撒いたせいで乱闘になったと責めるが、こちらも口論の末に手を上げてしまう。
一人になったライナーは、生徒達のレポートを読むが、そこにずぶ濡れのマルコが訪れる。
マルコは、カロを殴ったのは『独裁』のせいだと言い、今すぐ中止するように叫ぶが、俺に指図するな、とライナーも怒鳴ってしまう。
校長からの電話で責任問題を問われたライナーは、最後に生徒達と話をさせて欲しいと頼む。
その夜、WAVEの全員に、明日12:00に集会あり、とのメールが回される。
土曜日
白シャツを着込んだライナーは、講堂へと向かう。
ティムに出入り口のロックを命じ、監視役を申し出たので、これも許す。
壇上に立ったライナーを迎えた白い波WAVEは、100人以上になっていた。
ライナーの『敬礼』に対して、一糸乱れぬ最敬礼を返すWAVE。
徐にライナーは、実習のレポートを読み上げる。
『平等』『一致団結』『組織に貢献する喜び』『WAVEは最高だ、どんな犠牲でも払える』
「俺は、非常に感動した・・・WAVEは、このまま存続させるべきだと思う」
ライナーの言葉に、思わず立ち上がり異議を叫ぶマルコ。
それを厳しい言葉で抑えこみ、着席を強制させる。
そして、ライナーはドイツの現状を批判し、妄想めいたアジテーションを始める。
ライナーの言葉が終るごとに巻き起こる拍手・・・。
マルコは立ち上がり、彼は俺たちを洗脳しようとしている、と糾弾する。
「問題は、WAVE自体だ」
「違う!WAVEこそが、ただ一つの正解なのだ!今こそ我々の名を歴史の1ページに残そうではないか!」
熱狂するWAVEは、マルコを無視し、口々に喝采を唱える。
「WAVEは、ドイツ全土を飲み込むのだ!我々の邪魔をする者は、必ず叩き潰してやる!」
「反逆者をここにつれて来い!」
壇上に運び込まれたマルコに向かって、ライナーは叫ぶ。
「みんなの前で答えろ!我々の味方か!敵なのか!」
「こんなの異常だ、おかしいよ!」
マルコの答えに、ライナーはWAVEに向かって問い掛ける。
「さぁ、この反逆者をどうする?!」
聴衆席からは制裁や罰だという声が聞こえるが、連行してきた一人に尋ねると、彼はこう言った。
「・・・命令してください」
命令すれば殺すのか?
絞首刑や断頭台に掛けるとでも?
それとも従うまで拷問するというのか?
「どうだ、これが、独裁の実態だ!」
最初の授業で、もう独裁はありえないか、とみんなに質問したのを憶えてるか?
この状況が、正に『独裁』だ・・・自分達を特別だと思い込んで、反対する者に対しては徹底的に排除して傷つける、他にも過ちを犯したかも・・・。
「君たちに謝る、やりすぎた・・・俺たちの責任だ、もう終わりにしよう」
「じゃぁ、WAVEはどうなるんだ、でも良い部分だってあったじゃないか・・・そこを正せば」
「ダメだ、正すことはできない・・・全員、家に帰れ・・・反省する部分が山ほど有るだろ・・・」
だが、もう引き返せない者もいた・・・。
ティムは、銃で威嚇すると、全員を席に戻らせる。
「この嘘つき!WAVEは、死んでない!言ってよ・・・まだ、生きてるって」
「どうせ、空砲だ」と言ったデイヴが撃たれ、ティムは泣きながら叫ぶ。
「どうだ、少しは見直したか、僕の事を馬鹿にしてただろ・・・みんなだってそうだ」
孤独で気弱なティムにとって、WAVEこそがやっと見つけた居場所であり、彼の命だった・・・。
説得するライナーに向けた銃口は、「指導者を失う」という言葉に畏怖し、精神崩壊したティムは、自らの口に銃口を突き込んだ・・・。
銃声が響き、ティムは倒れた・・・。
連行されるライナー・・・校長、妻、生徒たち、家族、何もかもが無音で通り過ぎる。
『独裁』の最後には、いつの時代も悲劇しか残らない・・・・・・
END
非常に重い話であり、耐性の無い人には恐ろしい作品である。
だが、そこには映画だからと軽視できない重要なメッセージが散りばめられている。
人は何かを拠り所にしなければ生きていけない。
それが家族だったり、恋人だったり、思想であったり、夢や希望であるかもしれない。
結局は自分自身の問題なのだが、その芯が揺らいでいたり、まだ固まっていない時に、より強力な支配力を持つ個人や集団に影響された場合、マインドコントロールの危険がある。
自分だけは大丈夫だとか、騙される人が弱いのだ、という驕りは捨てるべきで、逃れられないほど巧妙な技術を悪用したMKは、日常の何処にでも潜んでいる。
映画の話に戻るが、全体的に古臭い印象の絵面が、実話を基にした作品にリアリティーを与えている。
主演のユルゲン・フォーゲルは、日本での知名度は低いが、ドイツでは名優として賞賛される本格派のベテランである。
泥臭い体育教師のような風貌で演じる指導者ベンガーと日常のライナー、自分が起こしたWAVEの暴走を終盤まで知らず、ラストの責任の取り方も含めて、かなりの演技力を要求される役柄を見事にこなしている。
展開を一週間で区切ることで、次は何が起こるのかという期待と不安を与え、追い込まれたライナーが暴発したかのように見せるなど、構成も中々に凝っている。
WAVEにも良い面があったという言葉を否定するのは、独裁や専制君主の制度が自由民主主義に勝ってはならない、というアンチテーゼとして深い意味を持っている。
最後に2人の生徒が犠牲になったのは痛ましいことだが、ティムという青年と同じような若者は日本にも多い。
自分の居場所が分らず、他人との共生も苦手なために、刺激的な個人や集団に属して自分を維持しようとする点などは、新興宗教、マルチ商法、セミナー依存、ネットゲームに嵌るのと似ている。
芯を持てない、育てる事ができない、こういった問題は、今の日本が抱える難題の一つだろう。
年間3万人を超える自殺者と数百万と言われる精神病患者を抱える先進国・・・悩ましい時代である。
ともあれ、この作品は観た者に少なからず考える機会を与えてくれるので、できるだけ多くの人に観てもらいたい。
*基になった事件・・・カリフォルニア州パロアルトのエルウッド・パターソン・キャバリー高校で起こった。歴史教師のロン・ジョーンズは、生徒の質問が切欠で一日だけの独裁ゲームを行った。細かい規律を設け、姿勢を正し、受け答えにもルールを課した。今作と同様に、興味を持った生徒達によってゲームは膨張し、次第に排他的な組織へと変貌していく。この暴走を止めたのは、ロン教諭自身で、彼らを集めてナチス第三帝国の記録フィルムを見せ、彼らが崇拝した物の正体を理解させたのだ(小説『ザ・ウェーブ』として、国内版もあり)。
集団心理の暴走は、歴史的背景や時代に影響されるのではなく、いつの場合でも私達の身近な落とし穴として存在するということを感じさせる話である。
アメリカで実際に起こった事件を基に、集団心理の恐怖を描いている。
近年流行のスタイリッシュさとは真逆の映像が、生々しいリアリティを出している。
物語は・・・
若ハゲの社会科教師ライナー・ベンガーは、校長の指示で授業内容の変更を命じられる。
テーマは「独裁」
進行中だった「無政府主義」の授業を続けたかったライナーは、同じテーマを提出した教師に交渉を申し出るが、素気無く断られてしまう。
バンド、演劇、ライナーが顧問の水球、とそれぞれに青春を送っていた生徒達は、一週間の講習にライナーの「独裁」を選び集まってくる。
月曜日
ボートハウスで妻と暮らすライナーは、一泳ぎしてから実習に向かう。
若くて気さくなライナーの実習には、思った以上に生徒が集まっていた。
「独裁:ある個人や団体が大衆を支配に置いた状態」
当然ながら例としてナチスによる第三帝国が挙げられ、もうドイツでは独裁など有り得ないという意見が場を占める。
ライナーは、手始めとして席替えを行い、指導者の選抜を多数決で決める。
指導者に選ばれたライナーは、自分に敬意を払い様付けで呼ぶこと、発言には許可を求め、立ってから行うというルールを定める。
モナのように愛国心を危険視する生徒や退出するケビンら不良3人組も出るが、内2人は留年を恐れて教室に戻る。
教室では、姿勢を正し、規律を重んじた活発な意見が生まれ、特にティムは異様な熱っぽさを持って「ベンガー様」と心酔する。
実習は生徒それぞれに影響を与え、熱中するティム、気弱なリザ、規律の無い家庭に不満を持つカロと水球部のマルコ、退出したケビンでさえ実習を無視できない気分になっていた。
火曜日
「独裁」についての資料を急ごしらえで纏めたライナーは、入出した教室で生徒全員の挨拶を受ける。
早速、全員の足踏みが揃うまで団結の楽しさを伝える。
席替えには、仲の良い者同士を離し、成績の良い者と悪い者を並べ、助け合いの重要さを感じるという意図があった。
いつものようにモナは反発するが、ライナーの案には逆らえない。
一斉足踏みは、階下の「無政府主義」の教師を怒らせたが、退屈していた生徒達はライナーの実習に移りたいと言い出す者も現れ、校長も黙認する。
今回の提案は、実習生の服装の統一。
貧富の差に関係なく買える白シャツとジーンズに決まり、買いたく無い生徒は他の生徒が貸すというチームワークも生まれた。
だが、実習に陶酔するティムは、白シャツ以外の服を燃やしてしまう・・・。
水曜日
白い服が似合わないという理由で、他の服を着てくるカロ。
モナは実習を去り、代わりに他の生徒が入り、定員はいっぱいになる。
今日はチーム名を決めることになり、カロも発言するが誰の同意も得られない。
『WAVE』にチーム名が決まり、次は『行動力』に進む。
イラストの得意な者がマーク、ティムらがホームページ、モナがロゴ入りのボタン、と活発な意見が交わされ、チーム『WAVE』は、実習生の想像力を刺激する。
友達のいなかったティムは、以前はファングにヤクを流していたが、今は『WAVE』に加わったことで、他の集まりに反発する。
揉め事を見つけた不良2人は、仲間意識からティムを救い、また絡まれたら連絡しろ、と携帯番号を交換する。
いつのまにか生まれた連帯感は、最近のカロの態度に不満を感じるマルコの相談に乗るマヤ、我侭なカロを主役から外しデニスの叱咤で団結する演劇部、スケボーをやらせる代わりにWAVEに入るカロの弟レオンなど、徐々に変化が加速していた。
主役をマヤに変更され、練習を真面目にやっている部員を見て、カロは強い疎外感を感じる。
その不満を口にしたカロは、マヤに傲慢と言われ、マルコがマヤに相談していたことにも激しく憤る。
だが、マヤは強気な態度を崩さず、『WAVE』は貴方の思い通りになんかならないわ、と部屋を出て行く。
その頃、ライナーは生徒達が自主的に行動するのを素直に喜んでいた。
クラスでも怠け者だったカシが、WAVEメンバーを紹介するHPを立ち上げ、生徒が団結していく姿は好ましいことだと思っていた。
だが、妻はライナーが白いシャツを着せていること等が、職員室でも噂になっていると不機嫌な様子を見せる・・・。
同じ頃、ティムは自分でもHPを作成していた。
しかし、そこには『ザ・ウェイヴ-正義の組織-』の名称で、銃と街を飾った過激なトップページが表示されていた。
連絡を受けたティムが集合場所に行くとケビンが現れ、『WAVE』に参加する意思を握手で示す。
男子生徒は、街中を走り回り、至る所にWAVEの印をマーキングし、ケビンが作成した5,000枚のシールを貼り付ける。
彼らは、熱病に浮かされたように動きまわり、他の不良チームのマークを消し、ティムは改装中の寺院によじ登り巨大なマークを描いてみせる。
木曜日
ティムは行動力を認められ一気に株を上げ、WAVEは益々団結を強くしていた。
生徒の発案で新たに『敬礼』を取り入れたライナーは、全員で行う。
『敬礼』の余波は、カロの弟レオンのような子供に伝播し、敬礼をしない生徒を学校に入れないようにしていた。
カロから話を聞いたライナーは、問題が発生していることを認めながらも、残り一日の実習をやり遂げる気でいた。
カロに「この実習は制御不能よ」と言われたことで、方針を変更するべく教室に向かう。
校長は、呼び出したたライナーに親や教師から苦情が来ていることを伝えるが、生徒達がやる気になっていることを認め、実習の成功を応援する。
学生新聞の編集室では、モナとカロがWAVEの暴走を生徒に伝えるべきだと主張し、部長黙認で全生徒のメールアドレスを入手する。
一方、マークを上書きしたことで、街のチームに因縁を付けられたWAVEは、殴り合い寸前になる。
だが、ティムは持ち出した銃で相手を威嚇し、WAVEのピンチを救った気になっていた。
マルコたちは、ネットで銃まで入手していたティムに危険なものを感じ始めていた・・・。
生徒に送る文章を作成していたカロの元に、マルコが現れてパーティーに誘う。
WAVEを嫌うカロは断り、ティムの作成したHPを見せ、白シャツに関する書き込みや弟のことを話す。
だが、マルコはWAVEの団結を信じ、二人は物別れに終る。
その頃、帰宅したライナーの元には、警護をしているというティムが現れる。
無関心な家族の中で育ったティムにとって、WAVEや指導者ベンガーは彼が求めていた理想の組織だった。
妻は、ティムの異様な態度に眉をひそめる。
学生達のパーティーが開かれ、新聞部の部長はカロ達の事を話す。
マルコは、在り来たりな未来像しか無い自分のことをマヤに話し、二人はキスを交わす。
パーティーも佳境になり、水球部のマルコとジラルは明日の試合の応援を頼み、できたら白シャツで来てくれ、という言葉に一同は盛り上がる。
何度やってもメールの送信が失敗するカロは、コピー機でWAVEの告発文を作成し、各教室に配布していた。
途中で電気が消え、不安な気持ちで家路を急ぐ・・・。
金曜日
新聞で、改装中の寺院にマーキングしていた事実を知り、雨の中で軒先に座り込むティムも見つけたライナー。
昨日、食事をさせて追い出した後、ずっとそこに居たことに動揺を隠せない。
更に、車で送る途中で、フロントガラスに赤ペンキをぶち撒かれ、自分の知らない所で起こっていた事実に不安を感じる。
教室では、WAVEが廊下に置かれていた告発文を回収し、カロの仕業だとマルコに詰め寄る。
マルコは、今日の試合の後で彼女に話す、と言い、告発文は破棄された。
教室に入ったライナーは、新聞の記事に激怒し、全員に実習で体験したことをレポートで提出しろ、と命じる。
最後の実習は終り、全員がレポートを提出した後で、ティムが犯人を知っていると申し出る。
それを単独行動だと非難し、WAVEは一致団結だ、と言うライナー。
水球部の試合が始まり、プール前ではWAVEが白シャツを配り、着用しない者は応援席に入れない処置までしていた。
階段で排除されたカロとモナは、裏口を通り応援席に向かい、WAVE反対と叫びながらビラを撒き散らす。
試合では頭に血が昇ったジラルが、相手選手を水中に引き摺り込み、応援席では乱闘が起こったので、試合は中止になってしまう。
帰宅したライナーは、妻から生徒を操って崇拝させている、と罵倒され、カッとなって羨ましいんだろ、と言ってしまい、家を出て行かれてしまう。
マルコは、カロがビラを撒いたせいで乱闘になったと責めるが、こちらも口論の末に手を上げてしまう。
一人になったライナーは、生徒達のレポートを読むが、そこにずぶ濡れのマルコが訪れる。
マルコは、カロを殴ったのは『独裁』のせいだと言い、今すぐ中止するように叫ぶが、俺に指図するな、とライナーも怒鳴ってしまう。
校長からの電話で責任問題を問われたライナーは、最後に生徒達と話をさせて欲しいと頼む。
その夜、WAVEの全員に、明日12:00に集会あり、とのメールが回される。
土曜日
白シャツを着込んだライナーは、講堂へと向かう。
ティムに出入り口のロックを命じ、監視役を申し出たので、これも許す。
壇上に立ったライナーを迎えた白い波WAVEは、100人以上になっていた。
ライナーの『敬礼』に対して、一糸乱れぬ最敬礼を返すWAVE。
徐にライナーは、実習のレポートを読み上げる。
『平等』『一致団結』『組織に貢献する喜び』『WAVEは最高だ、どんな犠牲でも払える』
「俺は、非常に感動した・・・WAVEは、このまま存続させるべきだと思う」
ライナーの言葉に、思わず立ち上がり異議を叫ぶマルコ。
それを厳しい言葉で抑えこみ、着席を強制させる。
そして、ライナーはドイツの現状を批判し、妄想めいたアジテーションを始める。
ライナーの言葉が終るごとに巻き起こる拍手・・・。
マルコは立ち上がり、彼は俺たちを洗脳しようとしている、と糾弾する。
「問題は、WAVE自体だ」
「違う!WAVEこそが、ただ一つの正解なのだ!今こそ我々の名を歴史の1ページに残そうではないか!」
熱狂するWAVEは、マルコを無視し、口々に喝采を唱える。
「WAVEは、ドイツ全土を飲み込むのだ!我々の邪魔をする者は、必ず叩き潰してやる!」
「反逆者をここにつれて来い!」
壇上に運び込まれたマルコに向かって、ライナーは叫ぶ。
「みんなの前で答えろ!我々の味方か!敵なのか!」
「こんなの異常だ、おかしいよ!」
マルコの答えに、ライナーはWAVEに向かって問い掛ける。
「さぁ、この反逆者をどうする?!」
聴衆席からは制裁や罰だという声が聞こえるが、連行してきた一人に尋ねると、彼はこう言った。
「・・・命令してください」
命令すれば殺すのか?
絞首刑や断頭台に掛けるとでも?
それとも従うまで拷問するというのか?
「どうだ、これが、独裁の実態だ!」
最初の授業で、もう独裁はありえないか、とみんなに質問したのを憶えてるか?
この状況が、正に『独裁』だ・・・自分達を特別だと思い込んで、反対する者に対しては徹底的に排除して傷つける、他にも過ちを犯したかも・・・。
「君たちに謝る、やりすぎた・・・俺たちの責任だ、もう終わりにしよう」
「じゃぁ、WAVEはどうなるんだ、でも良い部分だってあったじゃないか・・・そこを正せば」
「ダメだ、正すことはできない・・・全員、家に帰れ・・・反省する部分が山ほど有るだろ・・・」
だが、もう引き返せない者もいた・・・。
ティムは、銃で威嚇すると、全員を席に戻らせる。
「この嘘つき!WAVEは、死んでない!言ってよ・・・まだ、生きてるって」
「どうせ、空砲だ」と言ったデイヴが撃たれ、ティムは泣きながら叫ぶ。
「どうだ、少しは見直したか、僕の事を馬鹿にしてただろ・・・みんなだってそうだ」
孤独で気弱なティムにとって、WAVEこそがやっと見つけた居場所であり、彼の命だった・・・。
説得するライナーに向けた銃口は、「指導者を失う」という言葉に畏怖し、精神崩壊したティムは、自らの口に銃口を突き込んだ・・・。
銃声が響き、ティムは倒れた・・・。
連行されるライナー・・・校長、妻、生徒たち、家族、何もかもが無音で通り過ぎる。
『独裁』の最後には、いつの時代も悲劇しか残らない・・・・・・
END
非常に重い話であり、耐性の無い人には恐ろしい作品である。
だが、そこには映画だからと軽視できない重要なメッセージが散りばめられている。
人は何かを拠り所にしなければ生きていけない。
それが家族だったり、恋人だったり、思想であったり、夢や希望であるかもしれない。
結局は自分自身の問題なのだが、その芯が揺らいでいたり、まだ固まっていない時に、より強力な支配力を持つ個人や集団に影響された場合、マインドコントロールの危険がある。
自分だけは大丈夫だとか、騙される人が弱いのだ、という驕りは捨てるべきで、逃れられないほど巧妙な技術を悪用したMKは、日常の何処にでも潜んでいる。
映画の話に戻るが、全体的に古臭い印象の絵面が、実話を基にした作品にリアリティーを与えている。
主演のユルゲン・フォーゲルは、日本での知名度は低いが、ドイツでは名優として賞賛される本格派のベテランである。
泥臭い体育教師のような風貌で演じる指導者ベンガーと日常のライナー、自分が起こしたWAVEの暴走を終盤まで知らず、ラストの責任の取り方も含めて、かなりの演技力を要求される役柄を見事にこなしている。
展開を一週間で区切ることで、次は何が起こるのかという期待と不安を与え、追い込まれたライナーが暴発したかのように見せるなど、構成も中々に凝っている。
WAVEにも良い面があったという言葉を否定するのは、独裁や専制君主の制度が自由民主主義に勝ってはならない、というアンチテーゼとして深い意味を持っている。
最後に2人の生徒が犠牲になったのは痛ましいことだが、ティムという青年と同じような若者は日本にも多い。
自分の居場所が分らず、他人との共生も苦手なために、刺激的な個人や集団に属して自分を維持しようとする点などは、新興宗教、マルチ商法、セミナー依存、ネットゲームに嵌るのと似ている。
芯を持てない、育てる事ができない、こういった問題は、今の日本が抱える難題の一つだろう。
年間3万人を超える自殺者と数百万と言われる精神病患者を抱える先進国・・・悩ましい時代である。
ともあれ、この作品は観た者に少なからず考える機会を与えてくれるので、できるだけ多くの人に観てもらいたい。
*基になった事件・・・カリフォルニア州パロアルトのエルウッド・パターソン・キャバリー高校で起こった。歴史教師のロン・ジョーンズは、生徒の質問が切欠で一日だけの独裁ゲームを行った。細かい規律を設け、姿勢を正し、受け答えにもルールを課した。今作と同様に、興味を持った生徒達によってゲームは膨張し、次第に排他的な組織へと変貌していく。この暴走を止めたのは、ロン教諭自身で、彼らを集めてナチス第三帝国の記録フィルムを見せ、彼らが崇拝した物の正体を理解させたのだ(小説『ザ・ウェーブ』として、国内版もあり)。
集団心理の暴走は、歴史的背景や時代に影響されるのではなく、いつの場合でも私達の身近な落とし穴として存在するということを感じさせる話である。
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