B級映画って言うなw
再見して語る映画館
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『ホスピス』といえば、癌などで余命幾ばくも無い人が、最後の日まで安らかに過ごせるようにケアを受けられる施設。
施設を題材にした映画もあり、生と死を描く感動作品に・・・なるはずなんですが、これは全く逆。
邦題は、例によって配給のアルバトロスが何となくイメージで付けただけで、海外版のジャケットが比較的まともなホラーなのに対して、国内版は『ブレイン・デッド』ばりの血塗れドロドロ映画風に仕上がってます。
まぁ、ジャケ絵詐欺とか、衣商法は、販売会社の常套手段なので、ひとまず気持ちを静めます。
ざっとキャストを見ると、呪怨ハリウッド版2作目『THE GRUDGE2:アリソン役』に出てたアリエル・ケベルの名もあります。→
監督は、『デス・トリップ:SHROOMS』・・・、微妙な線ですね。
それでは、私も初見なので、予備知識なしで観てみます。
物語は・・・
遺体安置所で、女性の遺体を取り出す男。
同時進行で、男の少年時代が入ります。
男の名はケニス。
女性の遺体を携帯で撮影し、メスで自分の腹を傷つけています。
少年時代に、売春婦の母親が客とのトラブルで殺されるのを鍵穴から見てしまったので、複雑な精神構造に育ったようです。
一言で「変態」と切り捨てるには、少し可哀想な生い立ちですね・・・。
フォートヘブン総合病院(Forthaven)
研修生のキャサリン・トーマスは、教授仲間から”神童”と呼ばれるほどの優等生。実習で検体の救命を諦めきれないほど、医師としての情熱と勉強熱心さを持っていた。
そんな彼女に想いを寄せるのは、どもり症で陰気なケニス・・・。
その晩、パーティーでジェイクが医学研究大学への進学のため、あと一ヶ月で病院を離れると聞かされる。
皆で楽しくやっている中で、キャサリンの姿を携帯で追い続けるケニス。
勇気を出してキャサリンを送っていく、と誘いを口にするものの、他の仲間からは「死人」と呼ばれ変態扱いされる。
酷い罵倒を浴びせられたケニスは、皆が持ち出し禁止のドラッグを所持している姿を録画した、と告げると店を出て行く。
慌てた仲間は、唯一好意を持たれているキャサリンに、ケニスを引き止める役を頼み、ドラック入りの酒で酔い潰す作戦に出る。
「FREAK DOG!」の掛け声で一気飲みをさせられ、悪乗りしたショーンがズボンを下ろすと、そこには無数の傷痕が・・・。
震える声で「・・・君たち・・・全員・・・ろくでなしだ」と叫ぶと、ミラーボールの照明でてんかんを起こし、直立姿勢から倒れ頭部を強打する。
呼吸不全も起こしたので、キャサリンらは救命処置を取ろうとするが、ショーンはドラッグがばれるのを恐れ、このまま見殺しにしろ、と皆に強要する。
気道は吐いたお陰で保たれたが、皆は自分の身の保全のために、意識不明のケニスを車に乗せ、携帯の画像を消去して病院前の路上に放り出す・・・。
さすがに心が痛んだキャサリンは、電話でケニスの容態を訊ねる。
翌日、キャサリンからケニスが酸素不足とアルコール・薬物の多量摂取で、植物人間になった事を聞かされた皆は事の深刻さを痛感する。
だが、担当のステグマン先生に告白すると口にしたキャサリンには賛同せず、このまま協力して秘密を守り、何もなかったことにする、と押し切られる・・・。
医師を目指す自分の良心の呵責に揺れ動くキャサリンは、ケニスの病床で謝罪する言葉をDr.ハリスに聞かれてしまう。
昏睡治療に興味があると誤魔化したキャサリンに、身よりも無く保険が切れているケニスは、脳死の判断が下れば生命維持装置を停止されると聞かされる。
ケニスを助けたい、と思うキャサリンは、彼の死を喜ぶような仲間に苛立ちを感じる。
優等生のジェイクまでもが、自分の将来のために、キャサリンを説得してくる・・・。
運動をしても振り払えない思いを、昏睡治療の資料を読み漁ることで燃焼させていたキャサリンは、禁止された新薬の記事から、特効薬に成り得る部分を発見する。
早速、担任のDr.ステグマンに相談するが、脳という複雑な臓器に新薬は危険だと説得される。
それでも諦めきれないキャサリンは、Dr.ハリスのサインを偽造して薬を入手し、宿直のシェルビーがショーンと楽しんでいる間に自分で調合した薬を投与する。
だが、すぐに心配停止状態に陥り、一度は死亡したが、キャサリンの必死な胸骨圧迫とAEDでケニスは再び蘇生した。
キャサリンが病室を去ると、昏睡状態のケニスの眼球が激しく動き、防犯カメラに異常が起こっていた・・・。
病院の前で、追いかけてきたヨシミと合流したキャサリンは、彼女から謝罪を受ける。
二人は和解し、そのまま別れたが、ふいに警備員のウォルトが現れ、ヨシミに襲い掛かってきた。
止めようとしたキャサリンは突き飛ばされて意識を失い、ヨシミは車から引きずり出されて、自動車のドアに何度も挟まれて死んだ・・・。
激しい怒りに突き動かされていたウォルトは、そのまま脱力し呆然と座り込む。
同じ頃、病床のケニスも激しく動いていたが、同じく脱力したように静かになっていた・・・。
カーター刑事に事情聴取されたキャサリンは、ジェイクに見送られて帰宅した。
別れ際に「一緒に暮らして、この事を忘れよう」と言われたが、キャサリンはそれを断ってドアを閉める。
翌朝、ケニスの病室を覗いたキャサリンに、Dr.ハリスはケニスの脳活動が確認されたので、誤作動の可能性も含めて後一日様子を看ることにした、と聞かされる。
その後にショーンとエレベーターで鉢合わせしたキャサリンは、ヨシミの死さえ意に介さない彼の自己中心さに腹を立てる。
その夜も、昨夜と同じ薬を投与するキャサリン。
心肺計は激しい動きを示したが、すぐに落ち着き、脳波形にパターンが現れた。
喜んだキャサリンは、宿直のシェルビーに知らせに行くが、机に血の跡を残して、彼女の姿は消えていた。
その頃、シェルビーはショーンを訪れていた。
鼻血に気づきながらも、また今夜もお楽しみ、と物置に連れ込んだショーンだったが、口にダクトテープを貼られ、後頭部を床にぶつけられ気絶してしまう。
意識を取り戻すと、体を拘束され、口には三角漏斗が差し込まれていた。
事態の異常さに気づいたショーンだったが、酒を流し込まれ、続いて硫酸(acid)を流し込まれて、大量の血を噴出して死んだ。
それを見届けたシェルビーは・・・「FREAK DOG」
エレベーターを降りたシェルビーは、自分の衣服の乱れと鼻血に気づくが、何も憶えていなかった。
立て続けに関係のある人間が2人も死んだことで、仲間には動揺が起こっていた。
誰かが事件を知っていて報復しているのか、ケニスの呪いなのか・・・。
一応は、関連は無いはずだ、と納得せざるを得なかった。
ケニスの脈は上がり、脳の角回が活発になっていた。
この部位は電気刺激で体外離脱体験を起こすという説もあり、何らかの体感情報が伝達されたのは確かだ、とDr.ハリスは分析する。
特に活発になったのは、午前1:05~1:30・・・、この時間にショーンは殺害されたと気づいたキャサリンは、角回による体外離脱説に不安になる。
警察で警備員のウォルトと面会したキャサリンは、彼が事件の記憶を失っていると知り、別れ際に「FREAK DOG」の言葉を聞き愕然とする・・・。
一方、Dr.ハリスは昨夜キャサリンが忘れていった薬のカンフルを踏み、ラベルから薬品を知る。
病室に戻ったキャサリンは、トレイの薬品に気づき、ふいにDr.ハリスから声を掛けられる。
Dr.ハリスはキャサリンの違法行為を自分がしたことにして、この新しい治療が有効であると認めていた。
キャサリンは自分の行為が恐ろしい事態を引き起こしている、と叫ぶが、すでに新薬に目が眩んでいるハリスは、自分が治療を続けると言い放ち、キャサリンを病室から追い出してしまう・・・。
切羽詰ったキャサリンは、ジェイクを尋ね、自分の治療がケニスを体外離脱させ、憑依された人が殺していると告白する。
こんな話をすぐに信じろという方が無理な話で、これ以上は話をしても無駄と感じたキャサリンは「部屋に誰も入れないで」と忠告して部屋を後にする。
階段を下りていたキャサリンは、途中ですれ違った男が鼻血を出しているのを見つけ、急いでハリエットの部屋に向かう。
ドアを叩いてもハリエットの返事は無かったが、ドアの前に血痕を見つけたキャサリンの耳に絶叫が聞こえる。
人を掻き分けてバスルームを覗くと、そこにはバスタブに入れられ、両手から献血用針で血を抜かれたハリエットの死体が・・・。
そして、壁には血文字で「FREAK DOG」
悲鳴を聞いて駆けつけたジェイクも惨状を見て、キャサリンの話を信じた。
キャサリンは、ジェイクにスティーブとキムを呼び遠くに逃げるように言うと、自分はケニスを止めるために病院に向かった。
病室では、脳波計が活発になり、体を振るわせるケニスの姿が・・・。
助けたい、と思っていたのに、こんな事になった責任感から、キャサリンは生命維持装置のハヴに手を伸ばしていく。
だが、いつのまにかキャサリンの鼻からは血が流れ始めていた・・・。
ケニスの叫びから、今までの殺人がヴィジョンになって流れ込み、キャサリンの意識は闇の中に・・・、そして気が付くと死体袋に入っていた。
下着だけの姿で袋から這い出すと、何処とも知れない森の中をさ迷い始める。
やがて、木に掛けられた衣服を見つけ、靴に入れられていた携帯電話が鳴り始めた。
着信した動画メールを観て、堪らずに悲鳴をあげるキャサリン・・・。
一方、魔手はスティーブに向けられていた。
『FREAK DOG』の声に目覚めたスティーブは、子供部屋に赤ん坊がいないのに気づき、階段の前で子供を抱いた妻のバネッサを見つけて声を掛ける。
だが、振り向いた妻の顔には邪悪な笑みが浮かび、手に持っていたナイフはスティーブの喉元深くに刺しこまれていく。
愛する者に刺されて、スティーブは階段を転げ落ちて絶命した・・・。
森を抜け車を走らせながら、キャサリンはバーに居たキムに必死で忠告する。
だが、他人ではなくキムに憑依したケニスは、洗面台の鏡に頭突きをさせ、落ちた破片で、自分と同じように体に無数の斬り傷を付けた。
駆けつけたキャサリンが応急処置をしようとするが、キムの口からは「FREAK DOG」の言葉が繰り返される。
怯えたキャサリンの目の前で、キムは破片を腹に刺し切り開こうとするが、ミラーライトが鏡の破片に反射し、瞬く光の明滅にケニスの意識はてんかんを起こしてしまう・・・。
憑依が解けたキムは、痛みに絶叫し、重症の体を救急隊員に移送される。
だが、バーに駆けつけた警察は、キャサリンを逮捕してしまう。
警察の取調べで、キャサリンはパーティーの夜のことから、自分達がしたこと、ケニスに特効薬を注射して起きたことまで、全てをカーター刑事に語った。
だが、意識不明のケニスが他人に憑依して人を殺していた、と簡単に信じて貰えるわけが無い。
「私に、どうしろっていうんだ?」とカーター刑事は言う。
「病院に行って、あの変態の頭を撃ち抜くの・・・私がやってもいい」
その言葉を聞くと、カーター刑事は、一枚のディスクを再生し始めた。
防犯カメラの映像には、柱を背に立つ男・・・ジェイクの姿が。
そこに歩み寄った女は、鈍器を振り下ろし続け、ジェイクを殺害すると、カメラの方に歩いてきた・・・。
「戯言は終わりだ、お前が殺したんだ!」
ジェイクを殺したのは自分、ケニスに操られたキャサリン・・・、警察が信じる訳が無い。
雄叫びをあげてコーヒーを浴びせたキャサリンは、そのままカーター刑事に飛び掛り、気絶させるとドアと車の鍵を盗んで病院に向かう・・・。
ケニスの病室に入ると、脳波計が動き出すのも構わずに、途中で持ってきたフラッシュライトを浴びせ、生命維持装置のコードを引き抜いた。
てんかんが起こり、激しく乱れる脳波計。
キャサリンは口の吸入器も毟り取り、ケニスの首に両手を掛けると、一気に締め上げ始める。
明滅する光の中で、吐血するケニスの目が見開かれ、計器はピーという単調な音でケニスの死を告げた・・・。
複雑な気分だが、これで終ったと歩き始めたキャサリンを、勢いよく開かれたドアが弾き飛ばした。
現れたDr.ハリスの目が、白く変わっていく・・・。
ケニスは、死の間際にハリスの体に飛んでいたのだ。
首を絞められ、上に持ち上げられていくキャサリン・・・。
だが、キャサリンの手にはAEDパットが握られ、充電を完了した電流がケニス=ハリスの頭を貫いた・・・。
糸が切れたようにハリスの体はゆっくりと倒れ、力尽きたキャサリンの周りに警官が集まってきた・・・。
隔離された病室で、キムが優しく話しかける。
キャサリンの乾いた唇からは、「バイタルは?」と言葉が漏れる。
「正常だ」と、ステグマン先生が言い、キャサリンは「もう一度・・・」と呟き涙を零す。
「今日は、ゆっくり休んで・・・」と、二人が病室を後にすると、キャサリンの鼻から一筋の血が流れ・・・・・・・
END
あれ?アルバトロスなのに面白かったぞ。
陰気な植物人間の角回を刺激したら、自由に憑依する存在になって、復讐されまくり、という。
どことなく雰囲気が『THE GRUDGE(呪怨)』と『パルス(回路)』っぽいのは、こういうのが流行ってるからだと思うけど、意外と良い絵を作れる監督だったんだな。
脚本も設定はともかく軸にブレが無くて、最後まで憑依ネタを貫いたのは好印象。
ヒロインのアリエル・ケベルは今ひとつ迫力に掛けるけど、ある意味難しい役を無難にこなしてる。
最後まで生き残ったキム役のサラ・カーターは、嫌な女で、かなり痛い目に遭うが、ラストを観たら何か許せてしまう魅力の持ち主。
最初は少し同情したけど、観ていく内に「この、変態、ド変態」と呼びたくなる悪役ケニス。
アンドリュー・リー・ポッツは嫌いじゃないけど、大半はベッドでブルブルしてるだけ、という。
その分、序盤の気持ち悪さが際立つ・・・、かな。
全編を通して、順調に人が死んでいくので、ゴアも含めて退屈はしない。
悪役が体外離脱できる理由も、本当にそういう説もあるので、ギリギリセーフ。
まぁ、無線人間と化したケニスが、普通の人に殺人をさせる、というのは憑依された人が哀れでならない。
確かに復讐しても悪くない扱いではあったが、これだけ巻き込むと、やはり変態だったかと納得。
手段が手段なので、ヒロインがどれだけ頑張っても、このラスト以外には成りようが無い。
そういう意味では軸がブレていないが、最後に精神崩壊したヒロインだけでも良かった気がする。
ありがちなダメ押しだけど、別に鼻血を追加せんでも、精神異常の犯罪者扱いだけで充分に悲劇だし、それに寄り添うキムや先生の部分だけでオチは充分じゃないか?
ジャケ絵に期待すると血の量が物足りないが、正統派のホラーとしては悪くない出来。
ただ、少し正統派すぎて、観ている方との温度差や意外性は低い。
間違っても『ホステル』風味ではないので、タイトルは素直に『FREAK DOG』にしておけば良いモノを・・・。
「全然、ホステルじゃないじゃん」と言われるぐらいなら、直球勝負でいっても観て損したとは言われない出来だけに残念。
*FREAK DOG・・・直訳すると「イカレた犬」。犬は侮蔑の意味もあるので、「イカレた犬畜生」→「変人」「変態野郎」のような意訳になるようだ。
最初は、一気飲みの掛け声かと思ったが、「chug chug chug ・・・:チャッチャッチャッ」がスラングでの一気飲みの掛け声。chugは「ゴクゴクと飲む」の意味。
*角回・・・脳の頭頂葉外側面に位置する部分。脳の研究が飛躍的に進歩した現在では、言語認識や存在認知に影響していると言われる。(リンク先はwiki)
ここを刺激されると、体外離脱体験が起こると言われているが、実際の位置と脳の認識がずれることによる錯覚の一種と思われる。脳って、不思議。
*ホスピス・・・アルバトロスの社員が、ホステルと植物人間=余命幾ばくも無い人を何となく足して邦題にしたと思う。実際のホスピスの役割は、全く違うと言ってよいし、いらん誤解を招きそうなので、こういうネーミングは不謹慎な気さえする。
施設を題材にした映画もあり、生と死を描く感動作品に・・・なるはずなんですが、これは全く逆。
邦題は、例によって配給のアルバトロスが何となくイメージで付けただけで、海外版のジャケットが比較的まともなホラーなのに対して、国内版は『ブレイン・デッド』ばりの血塗れドロドロ映画風に仕上がってます。
まぁ、ジャケ絵詐欺とか、衣商法は、販売会社の常套手段なので、ひとまず気持ちを静めます。
ざっとキャストを見ると、呪怨ハリウッド版2作目『THE GRUDGE2:アリソン役』に出てたアリエル・ケベルの名もあります。→
監督は、『デス・トリップ:SHROOMS』・・・、微妙な線ですね。
それでは、私も初見なので、予備知識なしで観てみます。
物語は・・・
遺体安置所で、女性の遺体を取り出す男。
同時進行で、男の少年時代が入ります。
男の名はケニス。
女性の遺体を携帯で撮影し、メスで自分の腹を傷つけています。
少年時代に、売春婦の母親が客とのトラブルで殺されるのを鍵穴から見てしまったので、複雑な精神構造に育ったようです。
一言で「変態」と切り捨てるには、少し可哀想な生い立ちですね・・・。
フォートヘブン総合病院(Forthaven)
研修生のキャサリン・トーマスは、教授仲間から”神童”と呼ばれるほどの優等生。実習で検体の救命を諦めきれないほど、医師としての情熱と勉強熱心さを持っていた。
そんな彼女に想いを寄せるのは、どもり症で陰気なケニス・・・。
その晩、パーティーでジェイクが医学研究大学への進学のため、あと一ヶ月で病院を離れると聞かされる。
皆で楽しくやっている中で、キャサリンの姿を携帯で追い続けるケニス。
勇気を出してキャサリンを送っていく、と誘いを口にするものの、他の仲間からは「死人」と呼ばれ変態扱いされる。
酷い罵倒を浴びせられたケニスは、皆が持ち出し禁止のドラッグを所持している姿を録画した、と告げると店を出て行く。
慌てた仲間は、唯一好意を持たれているキャサリンに、ケニスを引き止める役を頼み、ドラック入りの酒で酔い潰す作戦に出る。
「FREAK DOG!」の掛け声で一気飲みをさせられ、悪乗りしたショーンがズボンを下ろすと、そこには無数の傷痕が・・・。
震える声で「・・・君たち・・・全員・・・ろくでなしだ」と叫ぶと、ミラーボールの照明でてんかんを起こし、直立姿勢から倒れ頭部を強打する。
呼吸不全も起こしたので、キャサリンらは救命処置を取ろうとするが、ショーンはドラッグがばれるのを恐れ、このまま見殺しにしろ、と皆に強要する。
気道は吐いたお陰で保たれたが、皆は自分の身の保全のために、意識不明のケニスを車に乗せ、携帯の画像を消去して病院前の路上に放り出す・・・。
さすがに心が痛んだキャサリンは、電話でケニスの容態を訊ねる。
翌日、キャサリンからケニスが酸素不足とアルコール・薬物の多量摂取で、植物人間になった事を聞かされた皆は事の深刻さを痛感する。
だが、担当のステグマン先生に告白すると口にしたキャサリンには賛同せず、このまま協力して秘密を守り、何もなかったことにする、と押し切られる・・・。
医師を目指す自分の良心の呵責に揺れ動くキャサリンは、ケニスの病床で謝罪する言葉をDr.ハリスに聞かれてしまう。
昏睡治療に興味があると誤魔化したキャサリンに、身よりも無く保険が切れているケニスは、脳死の判断が下れば生命維持装置を停止されると聞かされる。
ケニスを助けたい、と思うキャサリンは、彼の死を喜ぶような仲間に苛立ちを感じる。
優等生のジェイクまでもが、自分の将来のために、キャサリンを説得してくる・・・。
運動をしても振り払えない思いを、昏睡治療の資料を読み漁ることで燃焼させていたキャサリンは、禁止された新薬の記事から、特効薬に成り得る部分を発見する。
早速、担任のDr.ステグマンに相談するが、脳という複雑な臓器に新薬は危険だと説得される。
それでも諦めきれないキャサリンは、Dr.ハリスのサインを偽造して薬を入手し、宿直のシェルビーがショーンと楽しんでいる間に自分で調合した薬を投与する。
だが、すぐに心配停止状態に陥り、一度は死亡したが、キャサリンの必死な胸骨圧迫とAEDでケニスは再び蘇生した。
キャサリンが病室を去ると、昏睡状態のケニスの眼球が激しく動き、防犯カメラに異常が起こっていた・・・。
病院の前で、追いかけてきたヨシミと合流したキャサリンは、彼女から謝罪を受ける。
二人は和解し、そのまま別れたが、ふいに警備員のウォルトが現れ、ヨシミに襲い掛かってきた。
止めようとしたキャサリンは突き飛ばされて意識を失い、ヨシミは車から引きずり出されて、自動車のドアに何度も挟まれて死んだ・・・。
激しい怒りに突き動かされていたウォルトは、そのまま脱力し呆然と座り込む。
同じ頃、病床のケニスも激しく動いていたが、同じく脱力したように静かになっていた・・・。
カーター刑事に事情聴取されたキャサリンは、ジェイクに見送られて帰宅した。
別れ際に「一緒に暮らして、この事を忘れよう」と言われたが、キャサリンはそれを断ってドアを閉める。
翌朝、ケニスの病室を覗いたキャサリンに、Dr.ハリスはケニスの脳活動が確認されたので、誤作動の可能性も含めて後一日様子を看ることにした、と聞かされる。
その後にショーンとエレベーターで鉢合わせしたキャサリンは、ヨシミの死さえ意に介さない彼の自己中心さに腹を立てる。
その夜も、昨夜と同じ薬を投与するキャサリン。
心肺計は激しい動きを示したが、すぐに落ち着き、脳波形にパターンが現れた。
喜んだキャサリンは、宿直のシェルビーに知らせに行くが、机に血の跡を残して、彼女の姿は消えていた。
その頃、シェルビーはショーンを訪れていた。
鼻血に気づきながらも、また今夜もお楽しみ、と物置に連れ込んだショーンだったが、口にダクトテープを貼られ、後頭部を床にぶつけられ気絶してしまう。
意識を取り戻すと、体を拘束され、口には三角漏斗が差し込まれていた。
事態の異常さに気づいたショーンだったが、酒を流し込まれ、続いて硫酸(acid)を流し込まれて、大量の血を噴出して死んだ。
それを見届けたシェルビーは・・・「FREAK DOG」
エレベーターを降りたシェルビーは、自分の衣服の乱れと鼻血に気づくが、何も憶えていなかった。
立て続けに関係のある人間が2人も死んだことで、仲間には動揺が起こっていた。
誰かが事件を知っていて報復しているのか、ケニスの呪いなのか・・・。
一応は、関連は無いはずだ、と納得せざるを得なかった。
ケニスの脈は上がり、脳の角回が活発になっていた。
この部位は電気刺激で体外離脱体験を起こすという説もあり、何らかの体感情報が伝達されたのは確かだ、とDr.ハリスは分析する。
特に活発になったのは、午前1:05~1:30・・・、この時間にショーンは殺害されたと気づいたキャサリンは、角回による体外離脱説に不安になる。
警察で警備員のウォルトと面会したキャサリンは、彼が事件の記憶を失っていると知り、別れ際に「FREAK DOG」の言葉を聞き愕然とする・・・。
一方、Dr.ハリスは昨夜キャサリンが忘れていった薬のカンフルを踏み、ラベルから薬品を知る。
病室に戻ったキャサリンは、トレイの薬品に気づき、ふいにDr.ハリスから声を掛けられる。
Dr.ハリスはキャサリンの違法行為を自分がしたことにして、この新しい治療が有効であると認めていた。
キャサリンは自分の行為が恐ろしい事態を引き起こしている、と叫ぶが、すでに新薬に目が眩んでいるハリスは、自分が治療を続けると言い放ち、キャサリンを病室から追い出してしまう・・・。
切羽詰ったキャサリンは、ジェイクを尋ね、自分の治療がケニスを体外離脱させ、憑依された人が殺していると告白する。
こんな話をすぐに信じろという方が無理な話で、これ以上は話をしても無駄と感じたキャサリンは「部屋に誰も入れないで」と忠告して部屋を後にする。
階段を下りていたキャサリンは、途中ですれ違った男が鼻血を出しているのを見つけ、急いでハリエットの部屋に向かう。
ドアを叩いてもハリエットの返事は無かったが、ドアの前に血痕を見つけたキャサリンの耳に絶叫が聞こえる。
人を掻き分けてバスルームを覗くと、そこにはバスタブに入れられ、両手から献血用針で血を抜かれたハリエットの死体が・・・。
そして、壁には血文字で「FREAK DOG」
悲鳴を聞いて駆けつけたジェイクも惨状を見て、キャサリンの話を信じた。
キャサリンは、ジェイクにスティーブとキムを呼び遠くに逃げるように言うと、自分はケニスを止めるために病院に向かった。
病室では、脳波計が活発になり、体を振るわせるケニスの姿が・・・。
助けたい、と思っていたのに、こんな事になった責任感から、キャサリンは生命維持装置のハヴに手を伸ばしていく。
だが、いつのまにかキャサリンの鼻からは血が流れ始めていた・・・。
ケニスの叫びから、今までの殺人がヴィジョンになって流れ込み、キャサリンの意識は闇の中に・・・、そして気が付くと死体袋に入っていた。
下着だけの姿で袋から這い出すと、何処とも知れない森の中をさ迷い始める。
やがて、木に掛けられた衣服を見つけ、靴に入れられていた携帯電話が鳴り始めた。
着信した動画メールを観て、堪らずに悲鳴をあげるキャサリン・・・。
一方、魔手はスティーブに向けられていた。
『FREAK DOG』の声に目覚めたスティーブは、子供部屋に赤ん坊がいないのに気づき、階段の前で子供を抱いた妻のバネッサを見つけて声を掛ける。
だが、振り向いた妻の顔には邪悪な笑みが浮かび、手に持っていたナイフはスティーブの喉元深くに刺しこまれていく。
愛する者に刺されて、スティーブは階段を転げ落ちて絶命した・・・。
森を抜け車を走らせながら、キャサリンはバーに居たキムに必死で忠告する。
だが、他人ではなくキムに憑依したケニスは、洗面台の鏡に頭突きをさせ、落ちた破片で、自分と同じように体に無数の斬り傷を付けた。
駆けつけたキャサリンが応急処置をしようとするが、キムの口からは「FREAK DOG」の言葉が繰り返される。
怯えたキャサリンの目の前で、キムは破片を腹に刺し切り開こうとするが、ミラーライトが鏡の破片に反射し、瞬く光の明滅にケニスの意識はてんかんを起こしてしまう・・・。
憑依が解けたキムは、痛みに絶叫し、重症の体を救急隊員に移送される。
だが、バーに駆けつけた警察は、キャサリンを逮捕してしまう。
警察の取調べで、キャサリンはパーティーの夜のことから、自分達がしたこと、ケニスに特効薬を注射して起きたことまで、全てをカーター刑事に語った。
だが、意識不明のケニスが他人に憑依して人を殺していた、と簡単に信じて貰えるわけが無い。
「私に、どうしろっていうんだ?」とカーター刑事は言う。
「病院に行って、あの変態の頭を撃ち抜くの・・・私がやってもいい」
その言葉を聞くと、カーター刑事は、一枚のディスクを再生し始めた。
防犯カメラの映像には、柱を背に立つ男・・・ジェイクの姿が。
そこに歩み寄った女は、鈍器を振り下ろし続け、ジェイクを殺害すると、カメラの方に歩いてきた・・・。
「戯言は終わりだ、お前が殺したんだ!」
ジェイクを殺したのは自分、ケニスに操られたキャサリン・・・、警察が信じる訳が無い。
雄叫びをあげてコーヒーを浴びせたキャサリンは、そのままカーター刑事に飛び掛り、気絶させるとドアと車の鍵を盗んで病院に向かう・・・。
ケニスの病室に入ると、脳波計が動き出すのも構わずに、途中で持ってきたフラッシュライトを浴びせ、生命維持装置のコードを引き抜いた。
てんかんが起こり、激しく乱れる脳波計。
キャサリンは口の吸入器も毟り取り、ケニスの首に両手を掛けると、一気に締め上げ始める。
明滅する光の中で、吐血するケニスの目が見開かれ、計器はピーという単調な音でケニスの死を告げた・・・。
複雑な気分だが、これで終ったと歩き始めたキャサリンを、勢いよく開かれたドアが弾き飛ばした。
現れたDr.ハリスの目が、白く変わっていく・・・。
ケニスは、死の間際にハリスの体に飛んでいたのだ。
首を絞められ、上に持ち上げられていくキャサリン・・・。
だが、キャサリンの手にはAEDパットが握られ、充電を完了した電流がケニス=ハリスの頭を貫いた・・・。
糸が切れたようにハリスの体はゆっくりと倒れ、力尽きたキャサリンの周りに警官が集まってきた・・・。
隔離された病室で、キムが優しく話しかける。
キャサリンの乾いた唇からは、「バイタルは?」と言葉が漏れる。
「正常だ」と、ステグマン先生が言い、キャサリンは「もう一度・・・」と呟き涙を零す。
「今日は、ゆっくり休んで・・・」と、二人が病室を後にすると、キャサリンの鼻から一筋の血が流れ・・・・・・・
END
あれ?アルバトロスなのに面白かったぞ。
陰気な植物人間の角回を刺激したら、自由に憑依する存在になって、復讐されまくり、という。
どことなく雰囲気が『THE GRUDGE(呪怨)』と『パルス(回路)』っぽいのは、こういうのが流行ってるからだと思うけど、意外と良い絵を作れる監督だったんだな。
脚本も設定はともかく軸にブレが無くて、最後まで憑依ネタを貫いたのは好印象。
ヒロインのアリエル・ケベルは今ひとつ迫力に掛けるけど、ある意味難しい役を無難にこなしてる。
最後まで生き残ったキム役のサラ・カーターは、嫌な女で、かなり痛い目に遭うが、ラストを観たら何か許せてしまう魅力の持ち主。
最初は少し同情したけど、観ていく内に「この、変態、ド変態」と呼びたくなる悪役ケニス。
アンドリュー・リー・ポッツは嫌いじゃないけど、大半はベッドでブルブルしてるだけ、という。
その分、序盤の気持ち悪さが際立つ・・・、かな。
全編を通して、順調に人が死んでいくので、ゴアも含めて退屈はしない。
悪役が体外離脱できる理由も、本当にそういう説もあるので、ギリギリセーフ。
まぁ、無線人間と化したケニスが、普通の人に殺人をさせる、というのは憑依された人が哀れでならない。
確かに復讐しても悪くない扱いではあったが、これだけ巻き込むと、やはり変態だったかと納得。
手段が手段なので、ヒロインがどれだけ頑張っても、このラスト以外には成りようが無い。
そういう意味では軸がブレていないが、最後に精神崩壊したヒロインだけでも良かった気がする。
ありがちなダメ押しだけど、別に鼻血を追加せんでも、精神異常の犯罪者扱いだけで充分に悲劇だし、それに寄り添うキムや先生の部分だけでオチは充分じゃないか?
ジャケ絵に期待すると血の量が物足りないが、正統派のホラーとしては悪くない出来。
ただ、少し正統派すぎて、観ている方との温度差や意外性は低い。
間違っても『ホステル』風味ではないので、タイトルは素直に『FREAK DOG』にしておけば良いモノを・・・。
「全然、ホステルじゃないじゃん」と言われるぐらいなら、直球勝負でいっても観て損したとは言われない出来だけに残念。
*FREAK DOG・・・直訳すると「イカレた犬」。犬は侮蔑の意味もあるので、「イカレた犬畜生」→「変人」「変態野郎」のような意訳になるようだ。
最初は、一気飲みの掛け声かと思ったが、「chug chug chug ・・・:チャッチャッチャッ」がスラングでの一気飲みの掛け声。chugは「ゴクゴクと飲む」の意味。
*角回・・・脳の頭頂葉外側面に位置する部分。脳の研究が飛躍的に進歩した現在では、言語認識や存在認知に影響していると言われる。(リンク先はwiki)
ここを刺激されると、体外離脱体験が起こると言われているが、実際の位置と脳の認識がずれることによる錯覚の一種と思われる。脳って、不思議。
*ホスピス・・・アルバトロスの社員が、ホステルと植物人間=余命幾ばくも無い人を何となく足して邦題にしたと思う。実際のホスピスの役割は、全く違うと言ってよいし、いらん誤解を招きそうなので、こういうネーミングは不謹慎な気さえする。
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